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会議傍聴者の言動を記録――都教委が異常な監視

 

傍聴人の言動を監視した都教委の監視記録。情報公開請求で判明した。(提供/永野厚男)

傍聴人の言動を監視した都教委の監視記録。情報公開請求で判明した。(提供/永野厚男)

  東京都教育委員会が七月二五日の会議傍聴者の言動を、事務局職員に監視・記録させた用紙の内容が九月四日、情報公開請求した都民への取材で明らかになった。

 都教委の定例会等の傍聴者は開始前、番号を振った申込書に氏名・住所・年齢を書かされる。都教委は「七月一一日の定例会で、ある傍聴者が議事妨害した」とし、同月二五日の定例会から傍聴席に申込番号と同じ番号を付け、職員一〇人が定員二〇人の傍聴者を背面監視、一人一人の言動(○時○分)と性別、特徴(服の色、眼鏡、ネクタイ、髪型等)をA4判用紙に記録する態勢を敷いた。

 七月二五日の記録には、(1)審議時間外に「実教出版防(ママ)害はダメ」「都教委は不公正。自分たちの考えと合わないと……」「だから育朋(ママ、「鵬」の誤字)社をとったのね」と複数の男女が発言、(2)審議時女性が「報道規制」と言った、などの記述があり、傍聴席の番号付きの紙を入室直後「持ち帰っていい?」と質問した一言や、「首を横に振った。前かがみになって資料を見ている」といったしぐさまで監視・記録していた。

 同日は「君が代強制問題に触れた実教出版教科書の選定は不適切」とした全都立高校長宛通知撤回を求める請願を、教育委員会が審議なきまま実質不採択にした。(1)はそのことをめぐる発言。(2)は不採択決定直後、警察官僚出身の竹花豊委員が傍聴席横の報道陣に「権限なき者がモノ言うのが『介入』。都教委がその権限と責任で採択を行なうのに、一部メディアが通知を『都教委の介入』と報じたのは極めて不適切」などと“説教”したことに起因する。

 神奈川県教委や東京の区市教委にこういう監視態勢はなく、傍聴者有志が「都個人情報保護条例に基づき都教委自身が作成した『個人情報取扱事務届出事項』にない傍聴者の個人情報収集は違法だ」と抗議した。都教委教育政策課の神山直子担当課長は「客観的事実・状況を記録しただけ。会の円滑な運営上、必要だ」と回答した。

(永野厚男・教育ライター、9月13日号)

アマゾンの“値引き販売”に待った!__再販制度が崩壊すれば出版文化は危機に(高須次郎)

 大手インターネット通販サイトのアマゾン社(Amazon.com Int’l Sales, Inc.)が二〇一二年八月から学生を対象に書籍の定価の一〇%をポイントとして還元することは、出版社が決定した定価での販売を書店に義務づける再販売価格維持契約に違反する値引き行為にあたるとして、中小出版社九七社が加盟する日本出版者協議会(出版協)は昨年一〇月以来、三度にわたり同社に中止を求めてきた。

「(出版協は)契約当事者ではない」との理由で同社は回答を拒否。現在までサービスを継続しているため、出版協加盟社のうち五一社は同社に対し問題の「Amazon Studentプログラム」から自社商品を一カ月以内に除外するよう求める申入書を八月七日までに送付した。除外しない場合には再販契約に従い、取次店に対し自社出版物の同社への出荷停止を指示することもある旨の警告をしている。除外を求めた五一社の点数は四万一七四〇点、アマゾンデータベース約七〇万点の六%だ。

米アマゾン社CEOが『ワシントンポスト』買収へ。アマゾンによるメディア支配の始まりか。(提供/AP・AFLO)

 読者にとって、ポイント制による値引き販売は歓迎すべきことで、出版社がなぜ反対するのか理解に苦しむ向きも多いだろう。だが、学問芸術といった人間の知的創造物である著作物を書籍・雑誌などによって伝達する行為は、一国の学問芸術、文化の普及ないし水準の維持に欠かせないものだ。多種多様な著作物が普及し、国民に均等に享受されること。離島・山間・僻地などを含め全国どこでも同じ値段で購入できることが、社会の公正・公平な発展に役立つ。

 その意味で、書店による値引きを禁じた再販売価格維持制度(再販制度)は、著作物の普及という文化的、公共的、教育的役割を果たすのに適しているとされ、独占禁止法制定後も著作物については例外的に許されてきた。そして再販制度のもとに、出版社、取次店、書店は再販契約を結び、その遵守を約している。

 再販制度=定価販売によって、本の定価は物価の優等生といわれるほど安定し、返品可能な委託販売制度と相俟って、出版物の安定的な再生産を確保し、出版物の多様性と読者の知へのアクセスを保障、言論・表現の自由という私たちの社会のもっとも基本的な価値を守ってきた。

 また出版物は、生鮮食品などの商品と違い、同じテーマ(例・原発)を扱ったとしてもそれぞれで内容が異なる“非代替性”が強い商品で、一人の読者が同じ本を反復消費することが少ない。したがって多種多様な出版物が生産供給されることで読者は利益を得られる。

 著作者の収入となる印税は、本の定価と印刷部数で支払われているが、再販制度が崩壊し、寡占取次によって買い叩きが行なわれるようになれば、印税も不安定かつ減少することが予想される。結果、企画は売れ筋に集まり、“売れない”とされる硬い本は排除され、そういった出版物を多く出す中小出版社の経営は苦しくなるだろう。

「Amazon Studentポイント」は学生に限定されているが、一〇%という高率のポイント還元がすべての読者に拡大されることになれば書店への影響は決定的になる。すでに書店間のポイントサービス合戦を誘発しつつあり、その原資は結局、出版社に転嫁され、本のカバープライス(定価)が上がる。

 アマゾンが高率のポイント還元ができるのは、日本の法人税や消費税を払ってないからという指摘もある。書店の営業利益が〇・三%程度しかない現在、ポイント合戦に耐えられない書店は消えるしかない。長期の出版不況で書店数はピーク時の二万三七七六店(二〇〇〇年一二月)から約四割減少し、一三年五月には一万四二四一店になった。丸善、ジュンク堂書店、リブロ、ブックファーストなど有名な全国書店が経営危機に陥り印刷資本や取次店の傘下となり、アマゾンの独り勝ちが続いている。消費税値上げはアマゾンをさらに有利するだろう。

 回答期限の八月二〇日、アマゾン社は回答を拒否。今後、アマゾン社への卸元である取次店の回答次第では出荷停止に踏み切る予定だ。
(たかす じろう・一般社団法人日本出版者協議会会長。緑風出版代表。9月6日号)