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東京五輪開催決定と放射能汚染水問題――世界に嘘をついた安倍首相

 二〇二〇年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まったが(九月八日早朝)、翌九日の東京電力での会見では、ブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会での安倍晋三首相の発言に質問が集中。事実に反するプレゼンテーション(説明)だとの批判が噴出している。

 安倍首相は「(汚染水の)状況はコントロールされている」「健康問題については、今までも現在もそして将来もまったく問題ないということをお約束します」などと国際社会にアピールした。

 発言終了後、汚染水について質問された安倍首相は「結論から申し上げると、まったく問題ありません。どうか新聞のヘッドライン(見出し)ではなく、事実を見ていただきたいと思います。汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメートル範囲内の中で完全にブロックされています」と明言。

 しかし、事実誤認をしているのは安倍首相の方だ。八月二三日付『読売新聞』夕刊は「港湾外に汚染水強まる」とのヘッドラインで、タンクの汚染水が排水溝を通じて港湾外に漏れ出ている可能性を指摘。他紙も同じ内容の記事を出し、東電も会見で「漏れた汚染水が排水溝を通して海に出た可能性は否定できない」と認めていた。

 この「港湾外」への汚染水漏れの可能性を安倍首相は無視し、「港湾内」だけを取り上げる“視野狭窄的な説明”でIOC委員を騙したのと同じではないか。

 そこで東電に「(安倍首相は)嘘を言っているか、正確に説明しなかったのではないか」と聞くと、「コメントできない」と回答。「大問題になるのではないか」とも聞いたが、東電はノーコメントを繰り返し、安倍首相の明確な事実誤認を認めようとしなかった。

 また、「完全にブロックされている」と断言した根拠について、安倍首相は次のように説明した。

「福島の近海で私たちはモニタリングを行なっています。その結果、数値は最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの五〇〇分の一であります。これが事実です。そして、わが国の食品や水の安全基準は世界でも最も厳しい、厳しい基準であります。食品や飲料水からの被曝量は日本のどの地域においても、この基準の一〇〇分の一であります」

 海水を淡水化して飲む人などいないのだから、飲料水の基準を持ち出すこと自体がナンセンス極まりない。海洋への汚染水漏れの影響は、魚など海洋生物中の放射性物質濃度が増え、それを食べてしまうリスクが高まるという形で現れる。福島沖では基準値を超える魚が見つかり、汚染水漏れで試験操業が延期された事態も招いている。だが、安倍首相はまったく問題ないように印象づけた。

 そこで「福島沖の基準を超える魚が流通ルートに乗ったら健康被害を起こす可能性があるのではないか。とても安全基準の一〇〇分の一に収まらないのではないか」とも東電に聞いたが、これについてもノーコメントだった。

 一方、「安全」を強調された原発事故被災者たちは怒りが収まらない。双葉町出身で首都圏に避難している六〇代の女性は「なんで今、国を挙げてやらなきゃいけないの? 今やらなければならないのは被災地対策でしょう。二年半も経っているのに何もできていない。そんなに福島が“安全”なら福島でオリンピックをすればいい!」と怒る。また五〇代の女性も「東京は安全だ、日本は安全だと強調したが、私たちの街はもう住めないのです。私たちは日本人じゃないのでしょうか?」。同じく避難者で子育て中の三〇代の主婦は「健康への問題はない? すでに数十人の子どもに甲状腺がんが発生しているのに」と憤る。

 事故収束のコントロールはできず、汚染水は外海に流れ、候補会場には放射線量の高い競技場が複数ある(本誌九月六日号既報)というのが実態だ。いくら五輪を招致したいとはいえ、国際社会に嘘をつけば日本の信用が低下することは明らかではないか。

(横田一、これひさかつこ&本誌取材班、9月13日号)