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【谷村智康の経済私考】スマートフォンの正しい使い方キャンペーン  危険性を知らせたオートバイメーカーに学ぶ          

2013年9月6日5:30PM

 スマートフォンが普及したこともあって、いたる所でイヤフォンをしている人がいる。自転車だけでもとんでもない話なのに、スクーターやオートバイを運転している最中に、ヘルメットの中で聞いている人までいる。酒気帯び運転どころでないとても危険な行為だ。

 こうした状況は今回が初めてではない。かつてウォークマンが大ヒットした1980年代にも一度、流行りかけたことがある。私もヘッドフォンステレオを鳴らしながらバイクに乗ったことが一度だけある。大学の生協で買った直後に構内で乗ったのだが、音楽にかき消されて周囲の状況が良く分からない。:これは危険だ” と察してすぐに止めた。

 オートバイメーカーも偉かった。当時、ホンダが発行していた広報誌(確か、SAFETY『2&4』というタイトルだったように思う)に西川のりおが語るという形で「ヘルメットの下で音楽を鳴らすことがいかに危険か」を世に知らせ、ライダーたちを諫めていた。他社も同様の努力をしていたようで、あの猫も杓子もヘッドフォンステレオを買い求めた時代が空前のバイクブームであったにもかかわらず、ヘッドフォンステレオを装着しているライダーはいなかった。

 あれから30年。ウォークマン大流行の時代以上にスマートフォンは普及している。音楽再生機能付きの携帯端末を「誰もが持っている」と言っても過言ではないのが現代である。改めて、その正しい使い方を告知する必要があるのではないだろうか。

 音楽プレーヤーの両雄であるアップルとソニー、携帯電話キャリアのドコモとauとソフトバンク、そして、オートバイと自転車メーカー各社が協働して、スマートフォンの正しい使い方のキャンペーンを打つことを提案したい。

 広告代理店やメディア各社は、不況や広告の不振を嘆くばかりでなく、こうした「企画立案」や「提案」が疎かになっていることを自省するべきだろう。

 そんな沈んで淀んだ業界に、「広告が載らない」ことが売りの『週刊金曜日』が一石を投じるのはいかがだろう?

 こうした社会貢献型の広告の音頭を取ることは、読者からのお許しも得られるだろう。むしろ、歓迎されることではないだろうか。一読者として、批判記事ばかり載っているメディアを読むのはしんどく感じる。有意義な提案やユーモアがあってこそ、実業界と距離を置き、冷静な報道は活きてくると愚考するところである。
『電通の正体』が現代版「黄色い血」(売血)の告発であるならば、その先の「献血普及提案」があってこそのジャーナリズムであろう。

 このコラムを編集部から関係各所に「提案書」として送り、それぞれの企業の社会的責任(CSR)の姿勢を見たいと思う。次回の私のコラムを待たずとも、反応があった順に、誌面に反映させていってほしい。これをきっかけとして「金曜日vs電通」の本音対決などが実現したりしたら、真っ先にその特別勝負を読むことができる定期購読者にとってもその甲斐があるというものではなかろうか。編集部の善処を期待したい。

たにむら ともやす・マーケティング・プランナー。著書に『マーケティング・リテラシー』(リベルタ出版)など。近日、『「就活」は広告ビジネス、学生は商材』(仮)刊行予定。

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