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フィリピン人75人を強制送還――人権・人道上問題と抗議

2013年7月29日4:55PM

 法務省は七月八日、「不法」滞在のフィリピン人七五人を、チャーター機を使って六日に強制送還したと発表した。法務省は、一般の旅客機で一人ずつ送還する従来の方法と比べ、今回の送還方法は「費用」「安全」両面で利点があるとする。今年度予算ではマニラと北京にそれぞれ一〇〇人ずつ送還するための三〇〇〇万円が確保されており、この「数値目標」に沿って送還した形だ。非正規滞在外国人の当事者団体「仮放免者の会」(PRAJ)では、東京入国管理局や東日本入国管理センターなどへの抗議を呼びかけている。

 谷垣禎一法相は九日の記者会見で「すでに退去強制が決定されている帰国忌避者を送還した」と述べた。しかし仮放免者の会の調べでは、被送還者には退去強制令書取消訴訟の提訴期限となる六カ月を経ていない人、また提訴準備中の人も含まれていた。これは、裁判を受ける権利の侵害であり、司法を軽視した行政機関の暴走とも言うべき問題をはらんでいる。

 また、法務省は「夫婦や親子など家族がバラバラにならないよう配慮した」としているが、送還で引き裂かれてしまった事実婚の夫婦、婚姻手続き中の人も多数おり、人道上の問題も大きい。

 さらに、今回の被送還者の滞日歴は一〇年以上がほとんどで、三〇年近くに及ぶ人もいる。すでにフィリピンに生活基盤はないことが明らかな人々を同意なしに送還したことは人権上の問題がある。また、日本社会は建築現場や工場、飲食店等で「不法」と知りつつ彼らの労働力に依存してきた。いわば入管行政のさじ加減ひとつで、「不法」ゆえの低賃金でその労働力を利用することもできれば、「不法」を理由に強制送還もできる、という立場に非正規滞在者を置いてきた。モノを使い捨てるかのような一斉送還に道理があるのか。日本社会のあり方が問われている

(永井伸和・仮放免者の会、7月19日号)

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