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小平市で初の住民投票に公開請求――5万人の民意は何か

 東京都で初の住民投票が五月二六日、小平市で行なわれた。投票率は三五・一七%。五万一〇一〇人が投票によって意思を示した。条例公布・施行後に付けられた成立要件五〇%には達せず、不成立となり開票は行なわれなかった。四月七日実施の同市長選の投票率は三七・二八%で今回の住民投票の投票率と大差ない。

 この住民投票は、ほぼ五〇年間放置されてきた東京都の都市計画道路について、「住民参加により計画案を見直す」か「見直しは必要ない」かを選択するものだった。「五〇年前の都市計画道路などどこにでもある話だ」という声も聞かれたが、だからこそ全国的に関心を集めたのだろう。投票日前には、全国規模の報道が連日続いた。

 五月一一日のシンポジウム(出演=中沢新一氏、いとうせいこう氏、國分功一郎氏)は四〇〇人の会場がほぼ満席。市内全域にチラシを二度全戸配布し、意見交換会や計画現地を歩く会を何度も開催した。毎日街頭でチラシを配布し、町の中をねり歩き、街宣車を走らせた。市外からの応援も多かった。

 投票者数が伸びなかった原因は明確ではないが、五〇%の成立要件が付いたことで「どうせ開票されないから投票に行かない」という人たちの声を、たびたび耳にした。市の事業である住民投票について、市長が二〇日の記者会見でボイコット運動を許容する発言をしたことも問題ではないか。

 市からは住民投票に関する情報提供は少なく、道路計画のメリットを示した資料が中心。市主催の説明会は一度も開かれなかった。

 今回の結果を受け「小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会」は、二七日に投票用紙の写しの公開を求める情報公開請求を行なった。住民投票条例や規則には、五〇%に満たない場合に「開票しない」とは明記されていない。五万人の民意を明らかにすべきだ。

(尾川直子・小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会、5月31日号)

立憲主義の破壊に警鐘――「96条の会」が発足

 憲法改正権を規定する九六条の先行改憲に反対する「96条の会」が五月二三日、東京・永田町で発足記者会見を行なった。憲法学者など三六人が同会の発起人に名を連ねた。与党自民党を中心に、憲法九六条が定める改憲発議要件を「衆参両院それぞれの三分の二以上の賛成」から「過半数」に変更しようとする動きがあり、これに危機感を強めた動きと言える。

 山口二郎・北海道大学教授(行政学・政治学)は、「九六条の先行改憲だけは立場を超えて阻止することが必要だ。そうでなければ立憲政治は破壊されてしまう、という危機感から幅広く結集した」と経緯を語った。そして「裏口から改憲を導入するこのやり方は、民主政治あるいは立憲主義を破壊することであり、この国の保守政治の劣化の表れだ」と批判した。

 同会代表で憲法学者の樋口陽一・東北大学名誉教授は、「権力を制限することが立憲主義の基本だ」とし、「九六条先行改憲は法理論的に無理な話だ」と批判した。さらに、諸外国で憲法改正条項を緩和した例は、「立憲主義を掲げた国では、私の知る限りはない」と語った。

 改憲派憲法学者の小林節・慶應義塾大学教授も、発起人に加わった。小林教授は、九六条改正派が「憲法を国民の手に取り戻す」と訴えていることを、「嘘八百だ。憲法に縛られるべき権力者たちが、国民を利用して憲法を国民から取り上げようとしている。私は、本当に驚き怒っている。これは憲法破壊だ」と批判した。そして、「憲法改正権(九六条)の上に憲法制定権がある」とし、「上位の権限に対して下位の権限が触れること自体が矛盾だ」と語った。

 憲法九六条先行改憲の動きは、近代立憲主義への挑戦ではないか。夏の参議院選では、国民の成熟度が試されることになる。

(星徹・ルポライター、5月31日号)