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『花とハーブの里通信』最終号――核燃の今伝えて23年

 核燃サイクル基地がきた青森県六ヶ所村の今を発信してきたミニコミ誌『花とハーブの里通信』が五月一〇日付で最終号を迎えた。発行人の菊川慶子さん(六四歳)は「体力の衰えなどが大きな理由だが、今後はブログのおしゃべりコーナーを週一度ぐらい更新するほか、汚染地域の子どもたちの保養所をはじめたい」と話している。

 映画『六ヶ所村ラプソディー』(鎌仲ひとみ監督)でも取り上げられた菊川さんは同村から東京に集団就職したが、一九八六年のチェルノブイリ原発事故に衝撃を受け、使用済み核燃料の再処理工場が計画されている同村に九〇年三月帰郷。同年一二月から月刊『うつぎ』の発行、郵送をはじめた。

 同村に初めてウランが到着した九一年には「核燃いらない女たちのキャンプ」を約一カ月継続、約四〇〇人が非暴力直接行動を起こした。同誌は、このような現状報告に加え、村民の不安や揺れる心を聞き書きでつづった「ホンネで話そう我が村」、「季節の料理」紹介などが人気を集め、約五六〇部を全国に送り続けてきた。

 菊川さんは「核燃に頼らない村づくり」を目指して九三年に農場「花とハーブの里」を設立。『うつぎ』九九号を機に今の誌名に変更し、年四回から二回へと間隔を広げながら発行を継続した。

 最終号はA4判八ページ。〈震災と原発事故から二年過ぎましたが、東電も国も基本的な体質は変わらないようです。六ヶ所村では推進側がよりいっそう先鋭的になり、反対派と言われる私たちにも風当たりが強くなりました。救いは原発震災後に生まれた都市部での多様な動き。〉と書いている。

 同誌を愛読してきたルポライター、鎌田慧さんは「菊川さんは、核燃と向き合うなかで、生き方を作り上げてきた。きゃしゃなからだで、情報発信と反対行動の受け入れの両方をひとりで担ってきた、稀有な存在」と話している。

(伊田浩之・編集部、5月24日号)

「憲法を変えるのは、もっと悪くなることを選択すること」――「九条の会」が96条改憲に警鐘

「九条の会」の記者会見。左から小森陽一、大江健三郎、奥平康弘、澤地久枝の各氏。(撮影/赤岩友香)

「九条の会」の記者会見。左から小森陽一、大江健三郎、奥平康弘、澤地久枝の各氏。(撮影/赤岩友香)

 安倍政権が憲法九六条改憲を突破口に九条改憲を狙う中、「九条の会」が五月一七日、東京都内で会見を開いた。参加したのは同会呼びかけ人のうち、作家の大江健三郎さん、憲法研究者の奥平康弘さん、作家の澤地久枝さん、そして事務局で東京大学教授の小森陽一さん。

 九条の会は二〇〇四年六月に発足。全国各地、さまざまな分野で組織された九条の会は七五〇〇を超えている。一一月一六日には東京で「全国交流・討論集会」を開催する予定だという。

 大江さんは九条の会を作ってから「一番危機に陥ってしまっているのが現在」と述べた。また同会呼びかけ人の一人だった故・井上ひさしさん(劇作家)の「国が勝手気ままに暴走しないように縛るのが憲法」という言葉を紹介。九六条の改憲は立憲主義の破壊にほかならないなどと危機感を示した。

 澤地さんは「昨年末の総選挙では投票に行っていない人が四割以上いる。サイレントマジョリティを一番恐れているのは安倍内閣、自民党」「何としても(今夏の)参院選で安倍さんが負けるように」したいと語った。

 昨年末の総選挙は脱原発の世論が強かったにもかかわらず自民党が大勝。参院選で護憲の世論が強くなったとしても、護憲を掲げる共産党や社民党が脱原発を公約とした総選挙と同様、受け皿にならない可能性がある。その原因について筆者が質問すると、奥平さんは「党の垣根を越えて『護憲』で大同団結してほしい」旨を述べた。

 政治には期待できないという気持ちが選挙離れを呼んでいる。そして今、国民が「望んでいない方向に向かっている」と澤地さんは語る。「憲法を変えるのは、もっと悪くなることを選択すること」(澤地さん)。そのことをサイレントマジョリティに届けられるかどうかが今夏の参院選のカギとなるようだ。

(赤岩友香・編集部、5月24日号)

日本人の呼びかけで反対行動――ソウルで反韓に声上げ

 五月一九日、韓国・ソウルの光化門広場に「在特会の反韓デモに反対します」とのプラカードが掲げられた。特定の民族や人種を差別、侮辱するヘイトスピーチ(憎悪表現)を日本各地で繰り広げる「在日特権を許さない市民の会」(在特会)に対するものだ。日本人の呼びかけで、光化門、明洞などソウル市内の繁華街で行なわれた。

 呼びかけ人となったのは、南ソウル大学で助教授を務める櫻井信栄さん。日本で反対行動が盛り上がりを見せていることを知り、四月には東京・新大久保に赴いた。しかし、毎回日本に帰って反対行動をするわけにもいかず、韓国で行動を起こすことを思いついたという。「この問題をさらに多くの人に知ってもらい、反対する声があることを知らせ続けることが必要」と語った。

 在特会に関するニュースは韓国でも注視されている。大手放送局のKBSは「日本の極右団体デモは度を超えている」と指摘。『ソウル新聞』も「健全なナショナリズムの域を超え、極端な民族差別主義に変質したもの」とした。

 韓国国内での報道もあるためか、一九日の反対行動時には、「在特会のニュースは見たことがある。しかし、個々人の力は弱いのでは」と指摘する市民の姿も。「国家主義や民族主義が通用する時代ではない」と、冷静に事態を分析する声もあった。

 韓国では現在、二人以上のデモは許可制であることから、同日の反対行動は各自が散らばって繁華街の街頭でプラカードを持つという行動にとどまった。櫻井さんは、「警察や他の団体から干渉を受けるのを避けるため、運動体は作らずに今の自由なゲリラ的手法を続けていく」と意気込みを話した。当初は一人で始めた韓国での反対行動だが、ツイッターでの呼びかけにより、同日は数人が加わった。今後も、「在特会問題の解決と日韓友好に寄与」していく考えだ。

(渡部睦美・編集部、5月24日号)

TPP交渉参加表明するも進まぬ交渉――「コメにおいても例外はない」

四月下旬、訪米調査を行なった山田正彦元農林水産大臣。(撮影/横田一)

四月下旬、訪米調査を行なった山田正彦元農林水産大臣。(撮影/横田一)


 TPP(環太平洋戦略経済連携協定)の交渉会合が五月一五日からペルーのリマで始まった。日本は交渉参加表明をしたものの、米議会の承認手続き中で参加できず、七月に予定されている次回の会合に参加できるかも微妙な情勢だ。

 四月下旬に訪米調査を行なった山田正彦元農林水産大臣はこう話す。「日本のメディアは、米議会に通知すれば、九〇日後、自動的に日本の交渉参加が承認されると報道しているが、USTR(米国通商代表部)のカトラー代表補は『九〇日の間に交渉参加を議会に認めさせることができるのかは、私たちにも深刻な問題だ』と話していた。米国の自動車業界は反対、国会議員も一三四人が反対署名をするなど、米国内で反対論が強まっているためです」。

 また山田氏は、カトラー代表補から「コメにおいても例外は認められない。輸入を一定程度抑制するセーフガードや関税の長期間据え置き(段階的に廃止)はありうるが」という回答も引き出し、「コメなど重要五品目の聖域は認められうる」という安倍晋三首相の発言が不可能なことも明らかにした。

「コメすら除外にならないのだから牛肉など他の重要品目が聖域になるはずがない。『TPPのひな型』の米韓FTA(自由貿易協定)でも、コメの関税は段階的廃止にすぎなかった」(山田氏)

 一五日の参院予算委員会でも大河原雅子議員(民主党)が、米韓FTAで遺伝子組み換えに関する覚書が結ばれたことを指摘。「遺伝子組み換え食品の表示は撤廃されないのか。食の安全は守られるのか」などと安倍首相を追及した。

 三月一二日のJA主催の集会で自民党の石破茂幹事長は「重要五品目の関税維持・食の安全・ISD(投資家と国家間の紛争)条項などTPP六項目すべてが公約」と明言したが、四月末の参院山口補選ではこれに全く触れなかった。再び公約を反故にするのは時間の問題。JAや日本医師会などの参院選への対応が注目される。

(横田一・フリージャーナリスト、5月24日号)