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東電福島第一原発地下水の海への放出――県漁連合意せず混乱続く

福島第一原発の敷地内からくみ上げた地下水を海に放出する計画に関して東電は五月一三日、福島県漁業協同組合連合会に説明したが最終的な合意が得られず、放出開始時期が不透明になった。県漁連は地下水放出について東電だけでなく国の関与を明確にすることを要望。資源エネルギー庁の高原一郎長官は一六日に福島県庁を訪れ説明会の実施を説明した。

 福島第一では、核燃料を冷やすために注入している水が原子炉から建物地下に流れ出ているほか、一日に約四〇〇トンの地下水が流入し高濃度の放射能を含む大量の汚染水が発生。現在までに約二六万トンの汚染水を貯蔵しているが、二年半後には満水になる。

 東電は汚染水低減対策の一環として、汚染されていない地下水をくみ上げて地下水位を下げ建物への流入量を減らす「地下水バイパス」を計画。くみ上げた地下水は放射能を測定後に海へ放出する。

 約一年前から東電は、月に一回程度開催されている県漁連の組合長支所長会議で計画を説明。県漁連の野崎哲会長は「汚染水を海に出さないためにはやむなしという苦渋の判断」とし、合意ができたと感じていたという。

 ところが一三日の会議では、参加していた組合長らが各組織の会員たちに地下水バイパスの説明を十分にしていなかったことがわかり、組合長の中には地下水と汚染水を混同している人もいた。加えて「地下貯水槽からの漏洩事故も組合員にはショックだった」(野崎氏)と、最終合意に至らなかった。

 一方、県漁連の混乱が大きく報道されたことで、海洋放出を東電まかせにしていた国の放任姿勢が明らかになった。福島第一敷地内の水を意図的に海洋に出すのは事故直後の海洋放出以来。汚染の度合いに関係なく世界の耳目を集めるだろう。国は責任の所在をどう考えていたのか。収束作業の混乱はさらに続きそうだ。

(木野龍逸・ジャーナリスト、5月24日号)

静岡県島田市長選で現職の桜井氏が落選――がれき受け入れ市長に不信任

五月一九日に投開票となった静岡県島田市の市長選で、全国に先駆け東北被災地のがれき受け入れを強行した現職の桜井勝郎候補が、新人で同市の前教育委員長の染谷絹代候補に敗れ、落選した。これまでがれき受け入れに反対してきた「安心して暮らせる島田を作る市民の会」などの市民団体は、「住民無視の前市長に対する民主主義の勝利だ」として、染谷候補の当選を歓迎している。

 桜井前市長は昨年二月、岩手県山田町のがれきを受け入れ、百数十人の市民が抗議のため市役所に押しかける中で試験焼却を実施。同年五月には本格受け入れに踏み切ったが、その後地権者の了解もなく同市が汚染されている疑いの濃い焼却灰を民有地に搬入したため、地権者がロープを張って阻止行動を展開する騒ぎに発展した。

 こうした反対運動に対して前市長は「左翼的ヤクザ」と非難する一方、環境省の広域がれき処理を推進する「絆キャンペーン」の先頭に立ち、「自治体のトップは……腹をくくって、がれきを受け入れるべきだ」(『産経新聞』同年二月一四日付)などと主張し、がれき受け入れに賛成する自治体首長の「顔」として、メディアにたびたび登場していた。

 だが、前市長は当初総計一万五〇〇〇トンものがれき受け入れを計画しながら、その後被災地でのがれき量が大幅に下方修正。結局、受け入れた実績は数百トンに留まり、計画が破綻した。

 一方、今回の市長選で染谷候補は事実無根の中傷を加えた数種類の怪文書がまかれるなどしたが、がれき受け入れ反対の市民団体とも対話を重ね「今後は市の決定に際しては住民との話し合いを重視する」と述べるなど「草の根選挙」を展開。市を二分したがれき受け入れの是非が選挙争点から消え、企業・業界団体を手堅くまとめながらも「強引」との批判が消えなかった前市長に不信任が突き付けられた形だ。

(成澤宗男・編集部、5月24日号)

今週の憲法審査会――安倍首相の言動に99条違反の疑い

五月一六日の衆議院憲法審査会は日本国憲法の第一〇章(最高法規)、一一章(補則)および前文について議論。

 第一〇章九九条の憲法尊重擁護義務との関係で、共産党の笠井亮委員が安倍晋三首相の度重なる改憲推進発言や、「九六条改憲議員連盟」の顧問職に就いていることを厳しく批判した。民主党の辻元清美委員も安倍首相が九六条改憲発言を繰り返していることは立憲主義の危機だと指摘。自民党の土屋正忠委員らが「政治家としての意見表明だ」と反論したが、民主党の武正公一幹事が「国会で党総裁としての意見を質してもしばしば逃げる。ご都合主義的使い分けは不当」と指摘した。

「前文」の議論では自民党の保岡興治委員が「ユートピア的発想」で書かれており、全面書き換えが必要とした。同じく日本維新の会の伊東信久委員も「他国に自国の生存をゆだねるもの」と書き換えを主張。改憲派の委員たちは前文に「基本的人権の擁護」が明記されていないのは問題だと口をそろえて主張(いつから改憲派は基本的人権の擁護に熱心になったのか=筆者)。笠井委員がそれは「わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し」という規定に明示されていると反論。奇妙なことに、維新の会の委員たちは代表発言では用意した原稿を読み上げるが、討論になると一言の発言もできなかった。政治的中身の欠如の故か。

(高田健・許すな!憲法改悪・市民連絡会、5月24日号)