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もんじゅは再開できず、敦賀原発は廃炉か――規制委の判断に揺れる推進側

 原子力規制委員会が設けた有識者会合は五月一五日、日本原子力発電・敦賀原発2号機の建屋直下を走るDー1破砕帯を、耐震設計上考慮する活断層と認定した。

 同じ敷地内の浦底断層について、渡辺満久・東洋大学教授、中田高・広島大学名誉教授ら変動地形学者は、早い時期から原電による調査に疑問を呈していた。二〇〇八年に原子力安全委員会で問題となり、原子力安全・保安院は原電に試掘溝調査を指示。結果、しぶしぶ活断層と認めた経緯があった。

 浦底断層から派生するDー1破砕帯も、浦底断層の活動に伴い動くことを前提にすべきで、保安院も「クロに近い」などと言っていたことから、規制委による調査でも、早々に「クロ」の判定がなされると思われた。しかし原電は、Dー1破砕帯が新しく活動した痕跡はないと執拗に否定し、再調査結果を待つようにと抵抗。規制委の調査は昨年一二月に始まったが、なかなか結論が出せずにいた。

 今回規制委は、Dー1破砕帯が浦底断層に交差する付近で見つかったK断層について、活断層と認めた上で、K断層とDー1破砕帯が一連の構造である可能性が高く、活断層であるとしている。規制委は耐震設計審査指針に従い、活動性が否定できない限りは活断層とみなす、すなわち「疑わしきは活断層」の原則を貫いた。再調査結果を待つようにと泣きつく原電の要求を退けたことも注目に値する。

 原電は「議事運営が不公平」「結果ありきの個人的意見だ」と不満を述べ、再調査後の再審査を要求している。場外でも、経営危機を訴え、これに呼応して自民党が規制委を批判するなど圧力をかけている。耐震設計審査指針に従えば、原発の安全上、重要な施設は活断層上に立地してはならず、敦賀原発は廃炉にするしかない。

 大飯原発についても、規制委の調査が続けられているが、破砕帯が活断層であるという渡辺氏らの指摘に、どの有識者も否定できない状況だ。規制委は敦賀原発と同じ原則に立ち、関西電力の“だらだら調査”を待つことなく、早々に活断層の認定をすべきだ。

【もんじゅ見合わせ】

 一方、規制委がもう一つの重要な判断を下したのが、日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転再開準備に対する見合わせ措置(管理体制見直し)命令の決定だ(五月一五日)。約一万個の機器の点検漏れがあったためだが、これにより、もんじゅは運転再開のメドが立たず、核燃料サイクル計画自体の根本的な見直しにつながる可能性もある。

 そもそもこの原子力開発機構という独立行政法人(本部・茨城県東海村)は「原子力ムラ」を代表する天下り団体で、今回の点検漏れの責任を取る形で一七日付で理事長を辞任した鈴木篤之氏(一〇年八月就任)は原子力安全委員会の元委員長。いわゆる原発御用学者だ。同機構は環境省から除染事業の窓口を一手に引き受けており、除染モデル事業で多額の予算をピンハネしたとして批判されたこともある(一一年一一月)。除染事業者選定に絡み、訴訟も抱えている。

 もんじゅは一九九五年のナトリウム漏れ事故で運転停止になって以来、一八年も動かずに約一兆円の税金を垂れ流している。試験運転中の一〇年八月に核燃料交換装置が炉内に落下し、以後、停止状態に。一三年度内の運転再開を目指していたところ、昨年一一月に点検漏れが発覚。今回の措置命令の決定となった。

 もんじゅの点検については原子力開発機構の敦賀本部が実施することになっていたが、茨城県の本部と東京事務所にはこの点検内容を指導・管轄する安全統括部が存在する。それらのいずれもが機能不全に陥っていたことになる。規制委は原子力開発機構に対し、今月二三日までに文書による「弁明」を求めている。同機構広報部は「弁明するかどうか検討中」というが、これでは弁明のしようがないだろう。規制委は月内にも正式に措置命令を出す予定だ。

(阪上武・原子力規制を監視する市民の会+本誌編集部、5月24日号)

控訴取り下げ水俣病と認定されても……――補償協定を拒むチッソ

最高裁は原告を敗訴とした大阪高裁判決を破棄・差し戻した=4月16日。(撮影/奥田みのり)

最高裁は原告を敗訴とした大阪高裁判決を破棄・差し戻した=4月16日。(撮影/奥田みのり)


 認定をめぐり多くの被害者が苦しんでいる水俣病。行政が水俣病と認定しても、チッソが補償協定を結ばず、患者の補償が宙に浮くケースが出ている。

 熊本県水俣市出身で大阪府豊中市在住の女性(二〇一三年三月に八七歳で死去)の遺族が、熊本県に水俣病の患者認定を求めていた裁判で、女性は水俣病ではないという県の主張を支持した大阪高裁判決が先月、最高裁によって破棄、差し戻された。これを受け、蒲島郁夫・熊本県知事は五月七日、控訴を取り下げ、女性を水俣病と認めた大阪地裁判決が確定。知事は同日、女性を水俣病と認定した。

「生きているうちに認定してほしかった」と遺族が言うように、「認定は評価するが、遅きに失する」と田中泰雄弁護士は語る。

 裁判では国の認定基準の誤りが明らかになるなど課題は残されているものの、女性は〇四年に最高裁で勝訴した水俣病関西訴訟原告でもあり、司法と行政の両方から水俣病と認められたことになる。しかし、チッソが女性とスムーズに「補償協定」を締結することは期待できない。

 なぜなら、チッソは、関西訴訟の勝訴原告については「訴訟で補償は決着済み」とし、補償協定の締結を拒否しているからだ。

 同じく補償を拒否されている近畿在住の男性によるチッソを被告にした裁判は最高裁に上告中だ。男性の代理人でもある田中弁護士は、補償協定を交わすことは「協定上の地位の確認」でもあるという。

 協定書の前文には、水俣病に罹患した苦しみ、チッソの態度による苦痛などに対して、「チッソは心から陳謝する」とあり、認定患者で希望する者には協定が適用されると書かれている。

 補償協定を拒むチッソに、国も県も傍観するだけ。患者が長い歳月の末に獲得した「認定」が反故にされている。

(奥田みのり・フリーライター、5月17日号)