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安倍内閣の閣僚参拝、首相の言動に批判集中――「日本の右傾化」欧米も懸念

2013年5月28日5:02PM

「参議院選までは経済中心。低姿勢」とネコをかぶっていた安倍政権がどうやら本性を現し、「安倍カラー」が全開し始めた。閣僚は靖国参拝、首相は「強い国」を前面に出し、かつての戦争を正当化する右翼改憲路線。韓国、中国だけでなく、欧米各国のメディアも緊張の拡大に眉をひそめる。首相は「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」と意気軒昂。だが、もともと安倍晋三首相は、欧米の感覚では「超右翼」。その姿勢は、今後一層問われることになるだろう。

【閣僚4人、議員172人】

 四月二三日、春の例大祭の靖国神社に、黒の式服に身を包んだ国会議員一六八人が訪れ、参拝した。「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(尾辻秀久会長)のメンバーで、前日までに参拝した麻生太郎副総理・財務相、古屋圭司拉致問題担当相、新藤義孝総務相の三閣僚、翌日の稲田朋美行革担当相を加え参拝議員は一七二人に上った。「(前回の)首相在任中に参拝できなかったのは痛恨の極み」と表明した安倍首相は、参拝はしなかったが、真榊を供えた。

 これに対して、中国、韓国は当然反発。韓国は予定していた尹炳世外相の訪日を取りやめ、中国外務省の華春瑩副報道局長は、四月二二日の定例会見で「厳正な申し入れを行なった」と述べ、「侵略の歴史を反省しない限り未来は開けない」と批判した。中国関係では日中友好議員連盟(会長・高村正彦自民党副総裁)が五月に予定していた訪中も中止になった。

 中国共産党機関紙『人民日報』は「私人での参拝だとしても、その意図は明らかだ」と批判。訪中した民主党・江田五月元参院議長らと四月二八日会談した蔡武文化相も、「右翼的な政治家の言動はいかがなものか」と苦言を呈した。

 韓国の反応はさらに厳しい。韓国国会は二九日、閣僚の靖国神社参拝や、安倍首相の歴史発言を非難する決議を、出席議員二三九人のうち、棄権一人を除く圧倒的な賛成多数で採択。決議は「非理性的な妄動や妄言は、未来志向の韓日関係構築や北東アジアの平和定着に深刻な悪影響を及ぼす外交的な挑発行為だ」と述べ、靖国参拝や過去の侵略を否定する発言をやめ、多くの人に苦痛を与えた過去を反省し、謝罪を表明するよう求めた。同時に、韓国政府に「日本の軍国主義回帰の動きについて、あらゆる外交的手段を動員して強力な措置を取ることを求める」と強調。アジア諸国などにも共同して対処するよう呼びかけている。

【批判は中韓だけではない】

 こうした反応は、中韓だけではない。四月二三日付『ニューヨーク・タイムズ』社説は、「無用な日本の軍国主義」と題して、「安倍氏には第二次大戦中の日本の行為を擁護した前歴がある」「北朝鮮の核開発問題解決に協力して取り組む必要がある時に、日本が中国と韓国の敵意を煽るのは特に無謀なこと」と批判した。また、安倍首相が「侵略の定義は国際的に定まっていない」と述べたことに、『ワシントン・ポスト』も「日本が韓国や中国を侵略したのは疑いのない事実だ。中韓の反日感情は安倍氏の歴史修正主義を正当化する理由にはならない」と批判した。

 英国の『フィナンシャル・タイムズ』は二九日付社説で、経済政策を評価しながら「日本の侵略に疑問を提起する本心をのぞかせた」とし「よく見ても乱心、悪く言えば物騒なこと」と指摘した。

 米国務省のベントレル報道部長も二六日、「公式な抗議」はしていないとした上で、「中国や韓国同様、他国も懸念を表明している」と述べ、安倍政権に中韓を刺激しないよう自制を促した。オバマ政権は、日本政府へ外交ルートで非公式に懸念を伝えているという。

 しかし、右翼政権と改憲グループの暴走は止まらない。閣僚や議員の靖国神社参拝、政府主催の四月二八日の「主権回復の日式典」に続いて、三〇日には「新憲法制定議員同盟」(中曽根康弘会長)、五月三日には「新しい憲法をつくる国民会議」(清原淳平会長)が集会を開き、改憲実現を訴えた。

(丸山重威・ジャーナリスト、5月10日号)

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