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「徒手格闘」で死亡の元自衛官――遺族側が勝訴

2013年4月24日1:31PM

 陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)で二〇〇六年一一月二一日、「徒手格闘」の練習中に1等陸士・島袋英吉さん(享年二〇)が意識不明となり、翌日死亡した事件をめぐり、両親が起こした国家賠償請求訴訟(佐藤博文弁護団長)の判決が三月二九日、札幌地裁であった。石橋俊一裁判長は安全配慮義務違反を認め、六四九五万円の支払いを国に命じる遺族側勝訴を言い渡した。

 島袋さんは入隊歴一年半の新隊員で、運動競技の経験はなし。「徒手格闘」の訓練を始めたのは事故の一〇日ほど前で、一一月末の試合に出るためだったとされる。事故発生日まで練習は数回、突き技や蹴り技と初歩的な受け身をやっただけだった。事故のあった二一日、島袋さんは、教官F3曹の指導のもと、先輩A士長と二人で練習を行なった。島袋さんがA士長を足技で倒し、さらに拳で胴を突くという「約束練習」の途中、A士長が不意に投げ、島袋さんは背中から落ちた。「約束」にない行動だが、F3曹は「受け身がおおむね取れた」として続行。数回目に意識を失い、死亡した。

 国側は、頭に衝撃を受けたのは一度だけだと主張、判決もそう認定した。ところが投げた本人であるA士長は、島袋さんは最初から受け身が取れていなかったと法廷で証言。カルテにも頭部を四回ほど強打したとの記載があった。また訓練発令者の輸送隊長・黒田耕太郎2佐は試合時間やルールを明答できなかった。不自然さは残り、虐待の可能性は否定できない。

 徒手格闘は空手と柔道を合わせた格闘技で数年前に導入。殺傷力が高く事故が多発、海上自衛隊の隊員が死亡する事件も起きている。導入の中心人物は元陸上幕僚長の森勉氏だ。元陸自1佐・佐藤正久氏の参議院選出馬で全国の基地を巡回させたり著書を大量購入するなど防衛省ぐるみで応援、退官後は三菱電機顧問となり「佐藤正久後援会」代表を務めている。

(三宅勝久・ジャーナリスト、4月5日号)

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