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東京都の積み立て基金は約4000億円――五輪開催よりも雇用や福祉を

「プレゼンテーションの質が高かった。強い政府のサポートや経済界の支持があることも分かった」――IOC(国際オリンピック委員会)評価委員会のクレイグ・リーディー委員長は三月七日、二〇二〇年オリンピック招致を目指す東京の現地調査を終え、会見の場でそう語った上で、「オリンピックは数十億ドル(数千億円)規模のビジネス……。われわれが来日したことでIOCも東京もメリットを享受し、オリンピック運動に役立った」と悪びれず応えた。

 ちなみにNPO法人・東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、三月四~七日のIOC評価委来日の「おもてなし」で約六億円かかったと公表した。

 その後、猪瀬直樹東京都知事が会見。「オールジャパンで一丸となって臨んだ結果、良い印象を与えたと思う」と自信を見せたが、一方で評価委は福島第一原発事故の影響について詳細なデータの提出を招致委に要求した。

 猪瀬知事は昨年一二月の都知事就任直後からオリンピック招致のために動いている。一月にはロンドンに出向き「豊かな財源とおもてなし」をアピール。巨額の招致活動費(都などで七五億円。今年度予算でさらに三一億円加算)をかたわらにPRマンに徹する様子は、オリンピック招致のために都知事になったのではないかと錯覚するほどだ。

 東京オリンピックに「ノー」を唱える市民団体「反五輪の会」は巨額の税金を「被災地支援と貧困対策に」と訴えている。「異議あり!二〇二〇オリンピック東京招致集会」は四日夜、都内で集会を開き「オリンピック招致は大型開発計画を進めるため」であり「開発による貴重な自然破壊は許されない」。そして「被災地復旧・復興が最優先」と反対をアピールした。都と日本政府が続ける朝鮮学校差別も招致にはそぐわないと指摘する声もある。

 そもそもなぜ今、東京でオリンピックなのか。都スポーツ振興局招致推進部の担当者は「ああ、予算は三八億円(実際は三七億円)、詳しい企画意図とデータ? そんなのありませんよ。取材には口頭でお答えしています」。あげく「詳しいことはNPO法人へ」と。

 そこで、同推進部と同じ都庁四一階にある前述のNPO法人・東京オリンピック招致委員会へ。プロモーション活動を一手に引き受けているのが同委員会で、オフィシャルスポンサーは現在、ANA(全日空)、JAL(日本航空)など一六社。イベントポスターからパンフレットまですべてを制作しており、「電通の受注?」と問うと、「お答えできません!」。「なぜ東京で?」と問うと、一冊の冊子を渡された。「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ!」とある。これも意味不明。開催意義は「巨大マーケットの創出」で、経済効果三兆円に一五万人以上の雇用創出、とある。新卒の人たちの働き口さえままならないこの時代にたった一五万人? 東京都の完全失業者だけでも三十数万人もいるというのに。

 気になるのはイベントに登場する澤穂希選手など何人ものメダリストたち。「招致アンバサダー(大使)」と称して八人が任命されている。「一部報道で『謝礼は一〇〇〇万円くらい』とありましたが?」と問うと、「そのようなことはお答えできません!」。選手たちへの謝礼金の額については口を閉ざす。

「特定非営利活動法人のため、一般への収支報告の開示義務はありません。四月以降、都には報告しますので開示請求を」(同招致委員会戦略広報部)というから、NPO法人を隠れ蓑にして情報開示を制限しているように見える。

 オリンピック実現に向けて都はすでに都民税を原資に約四〇〇〇億円の基金をプールしている。雇用や貧困、医療や福祉の分野でこれだけのおカネが使われたら多くの人が救われるはずだ。

 猪瀬知事は著書『解決する力』で「強者が弱者を扶け、金持ちが貧乏な人を……」と記している。当たり前の生存と尊厳が脅かされている中、派手な招致運動で一体誰が救済されるのか。

(これひさかつこ・ジャーナリスト、3月15日号)