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安倍政権の民意無視の姿勢に危機感――「原発ゼロ見直し」は許されない

2013年1月30日6:16PM

安倍政権の原発政策を批判する大江健三郎氏(左から2人目)ら。(撮影/編集部)

 安倍政権になって脱原発・原発ゼロの民意がないがしろにされていくのではないかという危機感が広がっている。お先棒を担ぐのは原子力規制委員会なのか――。

 第二次安倍内閣発足の翌日(昨年一二月二七日)、原子力規制委員会(田中俊一委員長)の「原子力災害事前対策等に関する検討チーム」の会合で示された原発事故の「緊急時における判断及び防護措置実施の基準」。避難基準を「年間二〇ミリシーベルト」とし、防災範囲(緊急防護措置準備区域)を原発から「半径三〇キロメートル」とするものだが、市民団体や環境団体からは「年間二〇ミリシーベルトは高すぎる。緊急防護の範囲も三〇キロメートルでは狭すぎる」との批判が出ている。

 一月一一日夜、原子力規制委の入る東京・六本木の高層ビル前での抗議行動で「原子力規制委員会を監視する市民の会」の阪上武さん(四八歳)はこう指摘した。

「二〇ミリシーベルトにするなら最低六〇キロの距離が必要。計画的避難区域とされた飯舘村は福島第一原発から四〇~五〇キロ離れていましたが、避難が遅れた。六〇キロ離れた福島市でも毎時二四マイクロシーベルトを記録した地点も。この基準は原発事故の実態をまったく踏まえていない。拙速な議論はやめるべきなのです」

 これに対し原子力規制委の担当者は「事務局案として提示しただけ。決定したわけではない」(一月一一日)としているが、基準を決定する原子力規制委員会(毎週水曜日開催)に近く提起されるのは確実で、この基準をもとに各自治体が三月までに防災計画を決める流れだ。

 政権発足直後に「民主党の原発ゼロ政策の見直し」を表明した安倍晋三首相だが、第一党とはいえ全有権者の二〇%にも満たない得票(自民党)の政権が、約半年前の「国民的議論」を経て決められた「原発ゼロ」方針をいとも簡単に変更することが許されるのか。

 国際環境NGO「FoE Japan」の原発エネルギー担当の吉田明子さんはこう指摘する。

「二〇一二年七、八月に実施された『国民的議論』では、わずか四〇日間に八万九〇〇〇件以上の意見(パブリックコメント)が寄せられ、その八七%が『原発ゼロシナリオ』を支持しました。政権が代わったからといってこのプロセスを無視するのは許されません」

 一月一〇日には東京都内で「さようなら原発一千万人署名 市民の会」の呼びかけ人である作家の大江健三郎さんや澤地久枝さんらが会見。大江さんは「あの事故は何でもなかった、もう克服されたものとして」原発再稼働の姿勢を見せる安倍自民や経団連の姿勢に「それは違う、根本的に間違っている」と突きつけた。評論家の立花隆氏が『文藝春秋』(二月号)で原発維持を表明していることについて、澤地久枝さんは「立花さんのような言説がまかり通っている」と怒りを込めた。落合さんは「原発事故などなかったかのような日々の中に逆戻りしていってしまうのか。平和利用とか技術という言葉で、自分たちの人生と、誕生前の命すらも、再びまやかしの中に引き込んでしまうのか」と語った。ルポライターの鎌田慧さんは「安全、電力不足、安いという破綻した論理を用いる政治力に対して、政治的に闘っていく」と述べた。同会は三月九日に東京・明治公園で、原発からの撤退を求める市民集会を開く予定だ。

 そもそも第一次安倍内閣時の二〇〇六年一二月、共産党の吉井英勝議員(当時)の「巨大地震の発生に伴う原発の危険」を問うた質問主意書に対して安倍内閣は、そうした事故の評価はしていないと突っぱね、「非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」(同年一二月二二日付・答弁書)と答えていた。このときに巨大地震対策をしておけば、それから四年三カ月後の福島原発事故は防げたと指摘する声もある。安倍首相には自らが原発事故責任者の一人であるという自覚はまったくないようだ。

(本誌編集部、1月18日号)

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