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今期国会では不成立に終わるマイナンバー法案――秋の臨時国会で成立か

2012年9月20日5:20PM

 八月二四日、衆議院内閣委員会が開かれず、マイナンバー法案こと「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」が審議入りしないまま、九月八日までの通常国会会期では“時間切れ”で成立しないことが確定した。

 政府がマイナンバーと呼ぶ共通番号制度(ないしは国民総背番号制度)はそもそも、消費税増税実施の際の逆進性(低所得者ほど負担増)対策として、民主党が検討している「給付付き税額控除」導入の前提として“所得を正確につかむ必要があるから”と検討が始められた。

 ところが、当初の目的とされていた「社会保障と税の一体改革」による新制度のための「税番号・社会保障番号」のみならず、労働関係、学校・教育関係、公衆衛生関係と公営住宅の管理などに拡大。政令で定める公益性があるなどとされ、これまでに拡大された行政事務は合計で九三に上る。個人情報の提供範囲も「刑事事件の捜査の法律に基づく犯則調査」「その他、政令で定める公益性があるとき」と定めており、極めて広範囲で情報が用いられることが想定されている。

 実態としては、ありとあらゆるプライバシー情報を名寄せすることが可能な国民監視ナンバー制度といえる。

 個人には二〇一四年にマイナンバーが印刷された個人番号カードが交付され、一五年には番号の利用を開始、一八年には利用範囲の拡大が検討される。

 政府肝いりのマイナンバー法案が、今国会では審議入りすらせず、法案不成立となった背景は次の三点に集約されよう。

(1)財務省は歳入庁創設に消極的

 財務省(国税庁)は社会保険料徴収(国民年金機構や市区町村)の下請けになることを嫌っているし、「国税庁」を財務省から切り離して歳入庁とすることはとんでもないことだと考えている。なぜなら国税庁は財務省の権力の源泉だからだ。いまのところ、財務省は与党の共通番号制度を歳入庁構想への布石と見て警戒している。

(2)閣内に共通番号制度に積極的な論者の不在

 共通番号法案の旗振り役だった、与謝野馨元一体改革相が既に閣外に去っており、閣内に積極的な共通番号制度のゴリ押し論者が不在となった。法案担当の古川元久国家戦略担当相は「歳入庁創設すべし」という民主党内きっての推進論者だが、同氏は元をただせば財務OBでもあり、今回は財務省にネジを巻かれた(足止めされた)可能性がある。

(3)消費税法案成立後の野田レームダック状態

 レームダックとは「役立たずの政治家」を指す政治用語。この会期末の政局で自民・公明両党は一転、問責決議案の提出に動くなど与党と対決姿勢へ向かっている。

 以上のように法案不成立は、これら三点におおいに助けられたと言っていいだろう。

 法案は会期末の閉会手続きで「継続審議」となる見込みだ。法案不成立となった三つの要因にしても、丁寧に利害関係を整理していけば、法案成立の障害とはならないだろう。

 (1)と(2)に関して言えば、「近いうち」のはずだった解散もなく、このまま秋の臨時国会が召集された場合、民主党の〇九年マニフェスト項目である「歳入庁創設」を取り下げたら、電撃的に法案が成立してしまう可能性がある。民主党には、いまさらマニフェスト違反への躊躇や罪悪感なんてものは残っていないはずだ。

 (3)に関して言えば、自民・公明両党も共通番号制度そのものには大賛成だ。かりに審議未了のまま解散となれば廃案だが、選挙後の新与党により、手直しされた新マイナンバー法案が提出されるだけの話である。

 なお、通常国会での不成立が確定したあとも、九月三日には、政策調査会「社保税調査会歳入庁WT(ワーキング・チーム)・番号検討WT合同会議」が開催されるなど、民主党内ではいまでも活発に議論・検討が進められている。

 今国会で不成立となったとはいえ、予断を許さない状況だ。

(小谷洋之・ジャーナリスト、9月7日号)

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