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選択肢に批判集中「エネルギー基本計画」――原発依存度15%に誘導か

2012年8月8日1:28PM

警視庁の規制が強まったため、金曜デモでは国会正門前に多くの人が集まる。(撮影/編集部)

 政府は現在、将来の「エネルギー基本計画」作成のため、八月一二日まで「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見募集(パブリックコメント)を受け付けている。六月に「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」がまとめた三つのシナリオについて意見を政府に伝えるやり方だが、問題だらけだ。

 シナリオは二〇三〇年までの原発依存度について、(1)ゼロ(2)一五%(3)二〇~二五%という三択。これだと、中間をとって(1)と(3)の両極の間に誘導される心理が働きかねない。しかも政府の「国家戦略室」が作成した意見募集用の資料だと、(1)では「より大きな再生可能エネルギー、省エネが必要」「省エネ性能が劣る製品の販売制限・禁止」等と大きな制約条件があるかのように記述。一方で大飯原発再稼働前は日本の全原発が停止していた事実が無視されている。

 また資料には、「原発依存度を可能な限り減らす」と政府の方針が明示されているが、(2)の選択は原発の一層の再稼働と稼働率上昇が前提となり、「四〇年運転制限制度」を適用すれば原発の新設すら排除できない。(3)はさらに多くの原発新設が必要になり、最初から政府方針と矛盾する不適格な選択肢だ。福島原発事故とそれに伴う莫大な賠償費用の説明もない。

 七月一九日に国会内で開かれたパブリックコメントに関する政府との意見交換会では、出席した環境団体のメンバーなどから批判が続出。「全原発が停止した状態でも支障がなかった以上、直ちにゼロにする選択肢を設けるべきだ」「シナリオをまとめた『委員会』の委員長が、なぜ原発建設と関係がある新日鉄の会長なのか」「原発事故で一六万人の人が避難している現実が何も反映されていない」といった厳しい意見が相次いだ。これに対し、国家戦略室の清水康弘審議官は「持ち帰って検討する」と回答したに留まった。

(成澤宗男・編集部、7月27日号)

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