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国交省が「公用車談合事件」の損害賠償を請求――天下り先とのもたれ合いか!?

 二〇〇八年七月頃、国土交通省の「公用車談合疑惑」が世間を騒がせていた。この談合疑惑は国交省職員が予定価格を業者に事前に教えた「官製談合」であり、落札業者に国交省OBが多数再就職している「天下り問題」でも話題をさらった。〇九年六月二三日付の公正取引委員会が行なった「国土交通省が発注する車両管理業務の入札参加業者らに対する排除措置命令、課徴金納付命令等について」をもって、ひとまず事態は収束した。

 公正取引委員会の排除措置命令等から三年以内に、国交省は談合企業に損害賠償請求をしなければ、時効消滅してしまう(独占禁止法第二六条第二項)。その時期が間もなく(六月)やってくる中、四月一三日に次のような発表があった。

「本年三月一六日には、事業者九社に対して、受注業務のほか、入札に参加した業務に関して損害賠償請求しました(損害が発生した契約件数一三六六件、損害額約七九億八二〇〇万円)」

 しかし、その請求額が天下り談合企業に手心を加えているとの指摘がなされている。国交省インサイダーのA氏は「損害額を単純試算すると、五年超は時効で消滅したとしても、国交省の計算よりはるかに多い損害額になります。平均年間契約額である一八〇億円に未時効五年分を乗じ、そこに想定落札率(ただし非公表なので推定値)をかけ合わせていくと、私の試算では概算で三七一億円になるはずです」と指摘する。つまり、元本の約八〇億円どころか、遅延利息をあわせると、総額約三六〇億円も請求し損なっていることになる。

「実際は、公用車の台数を削減した部分、無論、談合がなかった契約等も含んだ単純試算であり、多めの計算ということになりますが、それでも数百億円程度になると思われます。やはり約八〇億円(元本)の請求では談合“天下り”企業に対して、不当に手加減しすぎですよ」(A氏)

 にもかかわらず、疑惑の国土交通省では損害賠償額の算定方法・算定基準について一切開示をしていないため、損害賠償額が正しいのかそうでないのか、正確に検証すらできない状況にある。これでは、談合企業側に故意に甘くしていると疑われても仕方ない状況だ。

(小谷洋之・ジャーナリスト、5月25日号)

「警戒区域」を解除された南相馬市小高区――水道・ガス使えず困惑する住民

昨年3月11日のまま、車両が道路脇に乗り上げている。小高区の中心街。(撮影/瀬川牧子)

地盤沈下し、民家や田んぼは湖となった。水のくみ上げが当面の課題だ。(撮影/瀬川牧子)

 福島第一原発から二〇キロ圏内に設定されていた「警戒区域」指定が、四月一六日に解除となった福島県・南相馬市小高区と原町区の一部(約一〇〇平方キロメートル)。今も水道、ガスなどインフラが機能していないばかりか、除染作業も完全には施行されていない。

 原子力災害対策本部は昨年一二月の区域見直し決定をうけ、四月に入り田村市、川内村、「広域で人口が多い」南相馬市の「警戒区域」を少し遅れて解除した。 

 五月八日、現地に入ると、パトロールにあたる多くの警察車両が目に入った。南相馬市だけでなく全国から派遣されている。「空き巣が多発し始めた」と近所の住民は話す。

 地震や津波による地盤沈下で、海岸付近の田畑や住宅地は水の底に沈み、湖になってしまった。水処理ポンプ施設は破壊されており、今後この大量の水をどうするか、解決策は見つかっていない。

 また、至るところで瓦礫の山が目に付いた。南相馬市小高区役所の職員によると、瓦礫が放射性廃棄物となっていることが仮置き場の確保に困難をもたらし、復興を妨げる要因になっているという。

 地区内のゴミは原則として外に持ち出すことができず、住民らは燃やすことも許されていないため、田畑や空き地、自宅駐車場、庭先などに放置している状態だ。

 庭先に、古くなった醤油や油を捨てる行為も見た。

「私たちは解除と聞いた時、それは元通りの生活ができるものだと思いました。でも、解除した後、市から『解除しないと復興できない。復興のための解除』だと聞かされて動揺しています」と南相馬市原町区の仮設住宅で、夫と二人の小学生の子どもと避難生活を送っている、越田美佐子さん(三七歳)は打ち明ける。

 何のための解除だったのだろうか。「解除」の解釈をめぐる行政との大きな隔たりに、困惑する住民は少なくない。

 解除だと聞き、夫の幸活さん(六五歳)と避難先の札幌市から喜んで引き揚げてきた佐藤美千代さん(六四歳)。地元商店街で骨董品店を営む佐藤さんは「復興したってこの商店街には二〇%の住民しか戻ってこないと聞いています。私らの息子も孫もここには戻ってきません」と話す。

 南相馬市小高区の除染を担当している環境省・福島環境再生事務所に聞くと「解除しないとインフラ整備ができません。皆さんの家の片付けにも支障が出てきますし」との返答だった。経済産業省のホームページにアップされている年間放射線量推計によると、解除された同市小高区と原町区の一部は、線量にしたがい三つの地区に分類される(URL http://www.meti.go.jp/

earthquake/nuclear/pdf/120423a.pdf)。住民が自由に出入りできるようになったのは、「健康に影響がないとみられる放射線量が低い地域」で、具体的には年間一~二〇ミリシーベルトの地域に加え、二〇~五〇ミリシーベルト以下の地域も含まれる。

 この地域への立ち入りに時間制限はないが、寝泊りは禁止されている。住民が寝泊りできるまでの完全な解除について環境省・福島環境再生事務所は、「年間一ミリシーベルト以下に抑えるのが理想的」と言う。

 南相馬市役所によると、今年度は公共施設を中心に除染を進めるという。インフラ整備は今年中を目標とし、小中学校など公共施設の解除は、来年八月末を希望している。国の交付金と一部の市税で賄われる予定だ。

(瀬川牧子・ジャーナリスト、5月25日号)