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福島原発告訴団の思い(1) 武藤類子さん

2012年5月11日6:52PM

東京電力放射能汚染事件の責任を追及する福島地検への集団告訴が6月にも予定されている。参加する人々の思いを7回にわたって紹介する。

「責任の重さを感じつつ」 福島原発告訴団長・武藤類子さん(58歳)

 どうして東京電力の責任において除染は行なわれないのだろう。どうしてSPEEDIの情報を隠した人が何の責任も問われないのだろう。どうして原発の再稼働は、安全性を軽視してきた同じ役人が判断する立場にいるのだろう。どうして放射能「安全」キャンペーンにより人々に無用な被曝を負わせた人が、健康調査の責任者なのだろう――。

 震災から1年。どう考えても不思議で理不尽な話が福島県で起こり続けています。人々はそれに翻弄され、がっかりし、疲れ果て、「そんな話はもう聞きたくない」と、放射能への警戒心を手放していきます。癒やされず、解消もされない悲しみと怒りが、やるせないあきらめとなって県内に漂っているような気がします。「復興」という言葉が空しく県内をこだましています。

 私は、福島県田村市で飲食店を経営していました。手作りの野草茶や、家庭菜園で作った野菜、近くの山で採れる山菜や木の実を調理して、店のメニューにしていました。店では、山から切り出した木を薪ストーブで燃やし、暖房にしていました。東京電力が引き起こした原発事故で、そのすべてが安全ではなくなり、店は休業せざるを得ませんでした。

 このままでは前に進めない。この原発事故の原因はどこにあるのか、誰にあるのかをしっかりと調べ、明確にしてほしい。そして、その責任をきちんと追及してほしい。それを訴えていくことが、次世代に対する私たちの責任だ――そんな思いが、私たちに刑事告訴を決意させました。人の罪を訴えるということは、同時に自分たちの責任も問われるものでもあるような気がしています。告訴団長を引き受け、責任の重さを両肩にずっしりと感じつつも、事故でいったんバラバラにされた大勢の福島県民が新たにつながる機会にしたいと、前向きに考えていきます。

 それぞれの福島県民が原発事故で受けた被害をしたためた陳述書を書き、訴えていくこの刑事告訴が、事故の責任を明確にするだけでなく、県民一人ひとりの力を取り戻す大切な機会にもなると考えています。そして、市民の苦しみを直視せず、なお原発を推進し、利権をむさぼろうとしている巨大な力にくさびを打ち込み、新しい価値観の21世紀を築くことになると信じて、取り組んでいきます。

(まとめ・明石昇二郎(ルポライター)、4月20日号)

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