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「不明を詫びる」と河野洋平前衆院議長――超党派議員「中選挙区制に見直しを」

2012年4月23日1:21PM

席を並べる河野洋平前衆院議長(中央)と加藤紘一衆院議員(右)。左は民主党の渡部恒三最高顧問。(撮影/編集部)

 

「不明を詫びる」

 現行の小選挙区比例代表並立制の導入時に自民党総裁として立役者となり、与野党の合意書に署名した河野洋平氏は四月五日、衆議院議員会館で行なわれた「衆議院選挙制度の抜本改革をめざす議員連盟」で、こう切り出した。

 政治劣化の大きな要因となっている小選挙区制度から、中選挙区制度に戻そうという河野氏の講義を聞きに、民主党、自民党、公明党、共産党、社民党など超党派の有志議員九四人が集まった。政治ジャーナリストの岩見隆夫氏や、本誌で「中選挙区ルネサンス運動」を担っている佐高信編集委員なども出席した。

 民主党の渡部恒三氏は開会挨拶で「戦後六五年、今ほど政治が混迷し、政治家が信頼されていない時代はない」と指摘し、政治劣化を食い止める必要性を訴えた。

 河野氏は「自民党と社会党が対立していた時期には政権交代はありえなかった。その中で気の緩み、腐敗、政策的矛盾が出てきた」と、小選挙区導入時の政治的背景を振り返った。

 当時はマスコミも改革派、守旧派とあおり、政権交代可能な制度の必要性を主張。しかし「交代すること自体が目的となり、その後どうするかについては考えが及んでいなかった」(河野氏)。

 小選挙区制度のふれこみは「腐敗がなくなる」「政策中心の選挙になる」「選挙でカネがかからなくなる」といったもの。しかし、そうした総花的なキャッチフレーズだけが前面に出てしまい、「政治改革とは小選挙区を導入すること、という議論にすり替わっていった」(同)という。

 実際はどうなったか。政策は政権党内で決まらず、小政党の意見が政策に反映されないことは、民主党の政権運営からも明らかだ。「(選挙時)カネは何倍もかかる」という意見もある(本誌二〇一〇年一一月一九日号、公明党・高木陽介衆院議員へのインタビュー)。

たちあがれ日本の園田博之幹事長(右から3番目)や公明党の富田茂之議員(左から3番目)らも出席した。(撮影/編集部)

 

 河野氏はまた、小政党とりわけ革新政党の重要性を説いた。「二つの保守政党だけで議論するより、革新政党の(保守政党とは)違った角度から社会を見る目がなければ、社会全体が間違いはしないだろうか」と指摘。「革新政党が政権を取ることは望んでいない」としながらも、「革新政党が必要だと思っている人は多い」と、同席していた共産党の穀田恵二衆院議員と社民党の阿部知子衆院議員にエールを送った形だ。

 森喜朗元首相は「いつまでも議論しててもしょうがない。今なら過半数とれるはず」と、出席していた民主党幹事長代行の樽床伸司氏と、自民党幹事長の石原伸晃氏に「決意」を促した。

 佐高氏は会合後、河野氏と加藤紘一氏が席を並べたことについて「同じハト派ながら、二人の関係はこれまでぎくしゃくしていた。ロッキード事件の後、自民党の腐敗ぶりに河野氏は党を飛び出した。しかし加藤氏は誘われながらも残った」と、二人の微妙な関係を指摘。河野氏の自民党復党後も、二人の距離は縮まらなかった。

 両氏は宮澤喜一内閣時代に、官房長官を前後して務め、「従軍慰安婦」問題や朝鮮民主主義人民共和国との外交政策に関してもハト派色を出してきた。佐高氏は「両氏がもっと早く手を握っていれば、自民党のみならず日本の右傾化を止めることができたと思う。今回、小選挙区制度の弊害を問う形で二人が同席した。画期的なことだ」と話している。

(野中大樹・編集部、4月13日号)

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