週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

池田香代子さん、竹下景子さんら連名――大阪・教育基本条例案に反対声明

 松井一郎大阪府知事と橋下徹大阪市長が府市両議会に提出している、教育への政治関与を強める条例案の審議入りを目前にした二月二八日、佐藤学東京大学教授と翻訳家の池田香代子氏が東京都内で、反対声明を発表する記者会見を開いた。

 条例当初案の「知事が教育目標を設定」を、教育行政基本条例案第四条で「知事は委員会と協議し基本計画の案を作成する」とした修正について、佐藤氏は「表現をやわらげても内容は同じ。知事が独善的に教育目標を教育基本計画に入れれば、教育基本法が禁じる権力の介入と同じことになる」と指摘。また、「地方教育行政法第一三条等は『教育委員会は教育委員による合議制の執行機関』という旨を規定しているのに、条例案第七条二項が『知事が教育委員個々人を業績いかんで罷免する』としたのは違法だ」と批判した。

 大阪府の二〇一二年度公立学校教員合格者中、一二・四%もが採用を辞退している事態(過去五年で最悪)に、佐藤氏は「橋下氏は教員の質向上を唱えるが、条例案が通れば辞退者はさらに増える。質の低下は必至」と指摘した。

 政治講演会の参加者等の密告を全大阪市職員に命じた橋下市長の思想調査について、池田氏は「ファシズムというよりマッカーシズム」と批判。また、橋下市長が「君が代」不起立三回で教員を免職にする、とした職員基本条例案の規定を「スリーアウト制」と野球にたとえている点について、「橋下氏は『こう言えば拍手喝采を浴びられる』というテレビコメンテーターの感覚だ」と、呆れた様子で語った。

 池田さんはまた、ある実話を紹介。杉並区の首長だった山田宏氏肝いりの教師養成塾・師範館の塾生は、「グランドピアノを動かそうとしている人に『手伝って』と言われたらあなたはどうするか、との問いに『手伝いましょうか』は誤答。『上司(校長)の指示を仰ぐ』が正解」と指導され、教師になるのをやめたという。

 今回の反対声明は、呼びかけ人が藤田英典・共栄大学教授(政府・教育改革国民会議の元委員)ら一〇人、賛同者には俳優の杉良太郎さん、竹下景子さんら一三〇人以上が名を連ね、会見は同日、大阪でも行なわれた。

(永野厚男・教育ライター、3月9日号)

橋下市長下で始まる職務命令体制――「君が代」条例案が大阪市議会で可決

 大阪市議会で二月二九日、橋下徹市長提案の「君が代」起立斉唱条例案が、大阪維新の会・公明・自民の賛成多数で可決した。

 同条例は、第三条で「本市の施設においては、その執務時間において、その利用者の見やすい場所に国旗を掲げるものとする」とし、第四条では「市立学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては、教職員は起立により斉唱を行うものとする」と定めている。教職員への起立だけでなく斉唱も義務づける内容となっているのだ。

 維新の会が過半数の議席を得ていない大阪市議会において、橋下市長はまず、衆議院選挙での選挙協力を持ち出して公明を抱き込んだ。自民との間でも修正協議が進み、三会派での合意が成立。維新の会市議は条例案可決について、三月二七日に市議会採決を目論んでいる「大阪市教育行政基本条例」「大阪市立学校活性化条例」「大阪市職員基本条例」成立に向けた、「新たな連携への一歩」と評価した。

 条例が即日施行されると、大阪市教育長は全学校長に対し「国歌斉唱の際に起立しないことは、市条例に反する」「(校長は教職員に対して)まずは自ら起立するよう粘り強く指導を行うこと」「指導に従わない場合においては、条例に反する状態とならないように、職務命令を行うこと」といった「通知」を再度発した。大阪市でも職務命令体制が始まったのだ。

 橋下市長が就任して二カ月も経っていないが、市長と市教委による相次ぐ通知や指示によって、大阪市の学校現場は大きく変貌しつつある。

 組合活動そのものが違法であるかのように見なされ、同僚同士の密告が奨励され、職場内では疑心暗鬼も広がっている。橋下市長トップダウンの実態調査(教職員の子どもの進学先調査など)が現場におろされ、管理職は書類作りに忙殺されている。

 今年の卒業式に向けては、「君が代」のピアノ伴奏を実施していない学校に対して在特会(在日特権を許さない市民の会)が押しかけるという事件も起きている。

 今回の条例がますます学校を萎縮させていることに、ある教員は、「条例まで作って、橋下市長は何がしたいのか。これでは学校現場が窒息状態となる。最も犠牲を被るのは子どもたちだ」と危惧した。

(伊加雅弘・ライター、3月9日号)