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「里親家庭の虐待を考える」シンポ――現状は「国の育児放棄」

 三歳の里子女児を虐待死させたとして元声優の里親女性が昨夏に傷害致死容疑で逮捕された杉並事件を受け、シンポジウム「里親家庭の虐待を考える」が二月一九日、東京・中野区のこども教育宝仙大学で開かれ、約二三〇人が集った。主催は杉並事件を考える会(代表・前田信一同大学専任講師)。

 シンポではまず、本誌二月一〇日号で同事件の検証記事を執筆したフリージャーナリストの小宮純一さんが取材報告。「いろんなSOSサインが出ていたのに児童相談所に届かず、児童相談所もまた確認を怠った」とし、支援体制の不備を指摘。杉山登志郎・浜松医科大学特任教授は乳児院や児童養護施設への長期入所が愛着障害や発達障害を引き起こす現状を示し、「日本の社会的養護は破綻しており、国を挙げてのネグレクト(育児放棄)だ」と痛烈に批判した。また津崎哲雄・京都府立大学教授は、国が進める里親委託の推進については「施設を経ずに早期に里親に委託するという方向性はよい」と評価しながらも、「日本の社会的養護には理念がない。里親と連携を密にすべきソーシャルワーカーも社会的に認知されていない」などと問題点を指摘した。

 後半は里親を二六年間続けてきた坂本洋子さん(東京・八王子市)らを加え「虐待死を防ぐために」をテーマに討論。虐待が、社会的養護の貧弱さや機能しない児童相談所など構造的な問題から引き起こされる実態を浮き彫りにした。

(片岡伸行・編集部、2月24日号)

労働委員会に続き地裁も認定――ゼンショーの団交拒否は違法

 牛丼チェーン店「すき家」を経営するゼンショーが、労働組合「首都圏青年ユニオン」との団体交渉に応じるよう中央労働委員会から命じられ、その命令の取消しを求めていた裁判で、東京地裁は二月一六日、ゼンショーの請求を棄却する判決を下した。これによりゼンショーの団交拒否の違法性が東京都労働委員会、中央労働委員会に続き、三たび認定されたことになる。

 ゼンショーは、二〇〇六年までは青年ユニオンとの団体交渉に応じてきた。しかし、青年ユニオンがすき家における変形労働制の違法運用を厳しく追及、一万人以上いる全国のアルバイト従業員へゼンショーが時間外賃金を支払うようになって以降、青年ユニオンとの団体交渉を拒絶するようになった。

 ゼンショーは団体交渉拒絶の理由として、青年ユニオンが労働組合法上の労働組合ではないなどと主張したが、都労委でも中労委でもゼンショーの主張は退けられ、団交拒否は不当労働行為であると認定されてきた。

 これまでも、アルバイト従業員が時間外賃金の支払いを求めた別の裁判において、ゼンショーは「その従業員とは雇用契約はなく業務委託にあたるから時間外賃金の支払い義務はない」と、荒唐無稽な主張を繰り返して訴訟を遅延させた挙句、判決直前になって請求した全額の支払いを認めて敗訴判決を回避するなど、およそ外食産業トップとは思えない労務管理と組合敵視の姿勢を貫いてきた。

 今でも組合員であるアルバイト従業員に対する昇給差別や不当な監視などが続いており、団体交渉で扱うべき課題は山積している。

 ゼンショーは判決を真摯に受け止めて、青年ユニオンとの団体交渉にただちに応じるべきだ。

(大山勇一・弁護士、2月24日号)

「創造的復興」という美辞の残骸――神戸空港破綻に市民の怒り

強行建設された神戸空港が破綻したことで、行政に怒りの声をあげる市民ら。(撮影/たどころあきはる)

 二月一六日で開港六年を迎えた神戸空港の破綻ぶりが鮮明になってきた。二月一五日から空港が開港した一六日にかけて開催された抗議集会などでは、市民の声を無視して神戸市が強行した空港建設に対する怒りの告発が相次いだ。

 空港建設・運営そのものの破綻に加え、今度は埋立て造成地での地震・津波被害の危険性が急浮上。高速船「神戸―関空ベイ・シャトル」を運行する第三セクター「海上アクセス」(神戸市中央区)の民事再生法の適用申請、債務の株式化による事業継続に伴い、「市民のカネ一五八億円が海の藻屑と消え、さらに赤字の垂れ流しになる」といった声があがっている。

 神戸空港は、阪神・淡路大震災の復興事業の目玉として建設が強行され、二〇〇六年の二月一六日、鳴り物入りで開港した。当時、神戸市が宣伝した構想によると、「平成二二(二〇一〇)年度には、市内で約三六〇〇億円の所得増加、約二万七〇〇〇人の雇用増。同時に、市税の増収(年間約三〇〇億円)をもたらし、福祉・教育の充実に生かされる」はずだった。

「『ストップ! 神戸空港』の会」によると、雇用は空港建設中に二万人近くも減少。給与所得者の平均給与は五年間で一割以上も減り、市民総所得も四年間で約三七〇〇億円も減少した。福祉政策は後退し、値上げなどで一〇〇億円以上も市民に負担を押しつけている。

 決定的なのは、空港建設の借金二三〇三億円。造成地を売却して返済する計画だったが、売れたのは数%にしかすぎず、借金返済のために新たな借金をする“多重債務”状態に陥っている。

 また、このたび財政難を理由に、阪神・淡路大震災の被災者が暮らす借り上げ復興公営住宅からの退去を入居者に勧告しており、怒りの火に油を注ぐ形となっている。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、2月24日号)

瓦礫処理事業を受注する鹿島建設――役員に石原知事元秘書

 被災地の災害廃棄物処理をめぐって、東京都の石原慎太郎都知事と鹿島建設との不透明な関係が明らかになりつつある。

 瓦礫処理は、鹿島建設を中心とした大手ゼネコン九社が約二〇〇〇億円で受注しているが、その鹿島の常務執行役員に石原都知事の元公設第一秘書である栗原俊記氏がいることがこのほど分かった。

 瓦礫処理について、石原氏は会見で「反対する人には黙れ、と言えばいい」と豪語し、不思議なほど積極姿勢を示している。

 栗原氏は鹿島に入社後、まもなく石原氏の公設第一秘書に。その後、一五年にわたって石原氏に仕えることになるが、その間「黒シール事件」を起こしている。これは一九八三年、第三七回衆議院総選挙で、石原氏の対抗候補である故新井将敬氏の選挙ポスターに「元北朝鮮人」などと書いたシールが貼られた事件。シール貼りを主導した栗原氏は公職選挙法違反の容疑で書類送検された。石原氏はこの時「秘書が勝手にやった」と弁解していたが、栗原氏が石原氏の身がわりになった形だ。

 栗原氏は、一五年という空白期間があったにもかかわらず、復職後は営業本部副本部長を務め、現在は同社の常務執行役員にまで上りつめている。

 鹿島は、瓦礫受け入れを発注している宮城県女川町との関係が深い。東北電力女川原発の建設は一号機から三号機まで、いずれも鹿島が請け負っている。女川町は東北電力による電源交付金や固定資産税で豊かな税収が確保できており、総合運動場や野球場、庭球場、陸上競技場など市民向け施設が驚くほど充実している。そしてこれらハコモノ建築物を受注しているのが、いずれも鹿島なのだ。

 町長である須田善明氏は、昨年一一月に行なわれた町長選で無投票当選。原発の是非は争点にすらならず、須田氏は「全国一早いといわれる復興を成し遂げたい」(『朝日新聞』二〇一一年一一月四日付)と語った。須田氏の言う「全国一早い復興」とは、一体誰のためのものなのか。

(野中大樹・編集部、2月24日号)