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基地全面撤去か「県内移設は反対」止まりか――宜野湾市長選は「現代史の分岐点」

2012年2月20日6:40PM

 前市長の病気辞任に伴う沖縄県宜野湾市の市長選挙が、二月五日に告示された。日米両政府によって米軍再編では「セット」とされた海兵隊のグアム移転と同市内の普天間基地移設が四日に「分離」になると発表され、同基地がそのまま固定化される恐れも出てくる中、元市長の伊波洋一候補(社民党、共産党、社会大衆党推薦)は「世界一危険な普天間基地の全面撤去」を掲げ、一二日の投開票に向けた選挙戦に突入した。

 普天間基地「県内移設」に固執する日米両政府に対し、沖縄県民の憤りは収まらない。昨年一一月に沖縄防衛局の田中聡前局長による「レイプ発言」があった後も、引き継いだ真部朗局長の指揮で一二月末、普天間基地の辺野古移設に向けた環境影響評価書が、市民の抗議をよそに午前四時という常識外れの時間に運び込まれた。

 さらに防衛局は一月二六日、米軍が辺野古基地と一体運用を狙っている東村高江のヘリパット基地建設に向け、自然破壊が懸念される中、工事の強行を試みた。

 現場に座り込んだ住民らの抗議行動で阻止されたが、ここで訓練予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、米国でも「飛行中にエンジンが停止した場合の緊急着陸装置が欠如している」と指摘された欠陥機。しかも配備先は普天間基地である。周辺住民の命に関係するにもかかわらず局は、環境影響評価書の準備書段階まで、配備予定を知りながらオスプレイについて記載しなかった。

 そして、今回の真部局長による宜野湾市長選挙への介入だ。局が持ち込んだ評価書を休み明けの県庁が開封した一月四日当日の午後三時、真部局長は総務部を通じ同市在住の職員と市内に選挙権のある親族のリスト作成をメールで指示している。すでに一二月三〇日の段階で伊波候補と、佐喜真淳候補(自民党、公明党、新党改革推薦)の擁立が決定しており、仕事始めからただちに介入を開始していたことになる。露骨な地位利用だが、政府は真部局長の更迭を拒否している。

 こうした防衛局の一連の動きが示しているのは、いかに県民が反対しようが、米国の意向のみに従ってあくまで基地を押し付けようとする政府の姿勢だ。

 提出された環境影響評価書自体、ジュゴンやサンゴ、潮流などの調査の不備などが表面化。このため、県の環境影響評価審査会では「内容に不明点が多すぎて審査できない」「差し戻すべきだ」といった意見が出ているという。

 ところが防衛省の田中直紀大臣は、第一回目の審査会すら始まっていない一月一五日の段階で、「辺野古新基地の年内建設着工」を示唆。形式手続きすら無視するかのような意図をうかがわせた。

 一方、伊波候補と対決する佐喜真候補は、自民党すら賛成した一昨年の「普天間基地県外移設」を求める県議会決議に、県議として最後まで反対した人物。自身のブログでは普天間基地「県外移設」を求めているが、「県内移設は反対」と言い切らないのが問題なのだ。 五日の第一声では、沖縄の世論が沸騰している真部局長の選挙介入問題について一言も触れていない。

 今回の「分離」発表によっても、依然辺野古における新基地計画は正式に断念されていない。同時に米国側は普天間基地の固定化を見据え、基地の修理費などを新たに日本側に求める構えだ。しかも沖縄では、本島の陸自増強や与那国島での自衛隊基地建設など、米軍の対中国海軍封じ込め戦略と連結したキナ臭い動きが目白押しとなっている。宜野湾市の選挙結果次第では、一挙にこうした動きが加速化しかねない。

 外国の軍隊の言うがままになって基地を押し付けられ、生命が危険にさらされるような現実が復帰から四〇年経ってもさらに続くのかどうか。その四〇年の節目に初めての県内選挙となった宜野湾市長選は、「現代史の分岐点」(照屋寛徳衆議院議員)となるだろう。

(成澤宗男・編集部、2月10日号)

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