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死刑確定でオウム裁判は終結――死刑では解明されない事件の真相

2011年12月14日7:51PM

 地下鉄サリン事件に使用されたサリンを製造したとして罪に問われていたオウム真理教元幹部の遠藤誠一被告に対し、最高裁は一一月二一日、一、二審判決と同様、死刑判決を言い渡し、一連のオウム裁判が終結した。

 坂本弁護士一家殺害事件から始まるオウム事件の重大さに鑑みれば、現行刑法での最高刑である死刑が一三人に適用されることの意味合いは分からなくはない。だが、「極刑による平安」という“見せかけ”の措置で、本当にこの事件の「闇」が解明されたと言えるのだろうか。

 先日の新聞報道で、坂本弁護士一家事件の被害者遺族が「以前は死刑制度に疑問を持っていたが、死刑制度反対と言わなくてよかった」(発言要旨)と語っている。被害者や被害者遺族にとっては、当然の心理かもしれない。

 しかし、死刑執行で事件終結とすることは、問題の本質から乖離していると言わざるを得ない。なぜ、オウム事件が起きてしまったのか、という問題は何も明らかになっていないのだ。いま求められているのは、国も私たち市民も、凶行に走った彼らがなぜそこまで追い詰められてしまったのか、それを考えることだ。そして被害者や家族の心情に寄り添うとともに、罪を犯したオウム真理教に本当の償いの道を示すべく、事件の真相を探ることだ。

 被害者弁護団が主張するように、死刑確定囚が生きて為すべき償いがあるはずである。

 今回のオウム裁判の死刑確定によって、死刑を求める声が高まる懸念がある。しかし、国家が人の命を奪う死刑制度に、われわれは反対する。死刑廃止はすでに世界の潮流となっている。

 ちなみに今年はまだ死刑執行が行なわれていない。このまま執行されなければ、一九九二年以来の死刑執行がない年となる。

 平岡秀夫法務相は議員時代から、また大臣就任後も死刑制度に対して懐疑的な発言をしてきた。平岡氏はその姿勢を貫き、死刑執行の停止を維持してもらいたい。その上で、人権の根本である「人の生命」を奪ってしまう死刑制度の是非について、国民的な議論を深めるべく、リーダーシップを発揮してもらいたい。

(アムネスティ・インターナショナル日本 死刑廃止ネットワーク東京、12月2日号)

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