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徹底討論を避けた外務省、経産省、財務省――ベトナムへの原発輸出に異議続出

2011年12月12日10:13AM

第2原発建設予定地近くで、魚を干す女性たち。(ニントゥアン省、提供/FoE Japan)

 一一月二一日、衆議院第二議員会館で「徹底討論!『原発輸出』」と題した市民集会が開かれ、参加した市民と議員により、ベトナム、ヨルダンへの原発輸出の問題点が討論された(主催はFoE Japanなど三団体)。原発計画が進む現地の具体的な情報を踏まえ、政府と徹底討論を行なうために企画されたもの。事前に詳細な公開質問状を外務省、経済産業省、財務省の三省に提出していたが、政府との討論は実現しなかった。メディア取材が入らないことを条件としてきたからだ。

 原発輸出は、二国間の原子力協定の締結が前提となるが、ベトナム、ヨルダンともすでに協定の署名手続きを終えており、このままいけば今国会で批准される見込みだ。批准承認の前に、市民団体がしかけた論戦は、政府の不在で肩透かしをくらった格好となった。

 東京電力福島第一原発事故を経験してもなお、原発輸出は政府内で着々と進められている。とりわけベトナムへの輸出の方針が変わらないことは、一〇月三一日の日越首脳会合でも再確認された。

 二〇億円という、実施可能性調査としては破格の予算により、現在、ベトナム中南部のニントゥアン省で日本原子力発電が調査を実施している。一部のプラント・メーカーの利益にしかならない事業に日本の税金がつぎ込まれているが、その内容について公開される見込みはない。

 筆者は一一月一〇日から一二日まで、建設予定地を訪れた。

 ニントゥアン省の省都ファンラン市から北東に二〇キロメートル。ウミガメが生息する美しい海岸線と国立公園に囲まれたヴィンハイ地区のタイアン村。人口約二〇〇〇人のこの村は、ニンニク、ネギ、ブドウなどの農業と漁業、家畜の飼育の組み合わせで暮らしをたてている。現金収入は決して多くないが、気候が穏やかで海の幸も豊富なため、暮らしは安定している。しかし原発建設に伴い、住民は北に一キロほど離れた土地に移転を余儀なくされる。

「今の生活は安定している。本音では移転したくないが、国家事業だから仕方がない」と語ってくれたのは、二〇年前からこの地に移り住んで農業を営んでいる四〇代の男性だ。

 また、別の男性は「福島原発事故は、もう収束しているときいている。最近は報道もみない」「原発事故は正直怖いよ。原発事故が起こったら漁ができなくなって乞食になるしかないかもね」と、半ば冗談めかして答えた。漁業を営む彼は船の修理に余念がない。「移転後も、できれば漁業を続けたいが、どうなるかはわからないね」。

 住民の関心は、原発事業そのものというよりも、移転の際の補償や移転先の土地に集中している。

 日本政府の招聘で日本に来たことがあるという村のリーダー格の男性。福島原発事故については、「あれは神様のせいであり、技術のせいではない」と断言する。住民に原発のPRをするための研修も受けたという。住民に原発のリスクについては知らされず、「夢のエネルギー」といったバラ色の側面だけが強調されている。

 冒頭の市民集会では、ベトナムへの原発輸出に対する多くの疑問が提起された。

 ベトナムでは、土木事業での手抜き工事や水力発電所の放水などで、事故が多発する。原発でこのような事故が生じたらどうなるのか。日本でも解決していない放射性廃棄物の処理はどうするのか。温排水により、ウミガメに象徴される海洋生態系や漁業にどのような影響が及ぶのか。

 そもそも、先進諸国においては斜陽産業となっている原発を途上国に持ち込むのか。むしろエネルギー多消費型の社会構造を生むことになるのではないか。

 公的資金の注入でしか成り立たない原発輸出で、得をするのは誰なのか。

 何より、福島原発事故後、多くの人々が苦しんでおり、これからもこの苦しみが続く状況で、日本政府は原発輸出をするのか。

 これらの疑問に日本政府が答えることなく、国会で批准手続きが進められようとしている。

(満田夏花・FoE Japan、12月2日号)

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