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在日米海兵隊改編で極東条項違反の可能性も――素知らぬ野田政権、進む日米一体化

2011年11月17日4:28PM

 それは目を疑う光景だった。一〇月二四日、初めて日本を訪れたパネッタ米国防長官が在日米軍司令部のある横田基地(東京都)で演説したときのことだ。招待された陸海空の自衛官九五人が、米兵に混じって点々と立っていたからだ。

 その姿は、まるで日米混成軍である。米軍と自衛隊は別々の指揮命令系統だから、米軍と自衛隊に分かれて整列するのが筋だ。米側の演出に自衛隊からの反対はなかったのだろうか。

 パネッタ氏は「日米同盟は五〇年間、この地域の平和と安定の礎になってきた。米国は同盟関係をさらに強化していきたい」と述べた。心配はいらない。翌日、パネッタ氏と会った野田佳彦首相、玄葉光一郎外相、一川保夫防衛相の三人は「米軍普天間基地の名護市辺野古への移設実現へ向け、年内に沖縄に環境影響評価書を提出する」と異口同音に伝え、対米追従の姿勢を鮮明にした。

 県内移設に反対する沖縄の人々を踏みにじってでも米国に寄り添う、というのだから米側に日米安全保障体制を維持するための努力など不要である。前のめりで検討を進める環太平洋戦略経済連携協定(TPP)交渉参加問題も含め、民主党政権はもはや米国の言いなりだ。その証拠に在日米海兵隊の組織改編に知らん顔を決め込んでいる。

 沖縄に駐留する第三海兵遠征軍は九月三〇日、「在日米海兵隊基地(MCBJ)」司令部を廃止し、「米海兵隊太平洋基地(MCIPAC)」司令部を設立した。MCIPACは、MCBJが管理する沖縄の各基地、キャンプ富士、岩国基地など日本の海兵隊基地に加え、ハワイにあるハワイ基地、カネオヘ基地、韓国のムジュク基地を新たに管理下に置いた。

 沖縄、韓国、ハワイの各地に分散していた基地司令部の機能を統合し、第三海兵遠征軍から独立してワシントンの米海兵隊基地司令部直轄となった。米本土やハワイは極東ではあり得ず、日米安保条約第六条「日本と極東の安全のため、米軍は日本の基地使用を許される」との極東条項を踏み越える疑いが強い。

 米側もそのことを理解しているから、日本の海兵隊基地を束ねるMCBJにとどめていたのではなかったか。世界中の海に出撃する第七艦隊が在日米軍に含まれていないのも同じ理由からである。

 二〇〇六年に合意した米軍再編の日米論議で、米側が太平洋からアフリカ東岸までを責任範囲とする米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転を打診したのに対し、日本側は極東条項を超えることを理由に受け入れを拒否した。

 ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン攻撃、イラク戦争に日本から出撃する米軍を、見て見ぬふりをしてきた日本政府も正面切って示された極東条項違反の提案を受け入れるわけにはいかなかった。出撃する際は、現地に司令部を置き、キャンプ座間で指揮をとることはないこと、そのための改編した新司令部を置くことを条件に移転に合意した。

 だが、政府は今回の組織改編にまったく関心を示していない。ハワイの基地機能をコントロールするワシントン直轄の司令部を日本に置くことを認めるなら、第一軍団の日本移転に反対する必要はなかったことになる。日本にいて海外基地を管理するMCIPACにも在日米軍駐留経費、いわゆる「思いやり予算」が支払われるのだから、日本は「米軍の楽園」である。

 今年六月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、基地の共同使用が打ち出された。米軍再編で決まったキャンプ座間への陸自中央即応集団の移転、横田基地への空自航空総隊移転にとどまらず、幅広く在日米軍基地を自衛隊が、自衛隊基地を米軍が使用するというのである。

「日米一体化」へ向けて加速する未来像が冒頭の横田基地での日米混成軍かもしれない。主従関係を想像すれば、憲法九条の縛りがある自衛隊は当面、米軍の後方支援を担うのだろう。「米国の手下」に成り果てる新たな日米安保体制の実現は、目前まできている。

(半田滋・『東京新聞』解説委員兼編集委員、11月4日号)

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