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国境の島へ、自衛隊配備への布石か――「教科書問題」で揺れる沖縄

2011年9月21日6:27PM

 国境の島々が今、教科書問題で揺れている。教科用図書八重山採択地区協議会(会長=玉津博克石垣市教育長)は八月二三日、中学校公民教科書として「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社版を選定した。その答申を受けて石垣市および与那国町教委は育鵬社、竹富町教委は東京書籍を採択。県教育委員会が打開策を検討するよう求める異例の事態となっている。

 七月半ば、玉津会長の独断で、教科書調査員の選定、順位付けの廃止が行なわれたことを知った住民らは、即座に「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」を結成し、全県・全国からの注目と支援の中で、不採択を求める活動を精力的に展開している。

 九月二日、石垣市で急遽開催された「やっぱり育鵬社の公民教科書は子どもたちに渡せない!」市民集会には、「愛国心」を強制し、憲法改悪に道を開く教科書の採択に危機感を持った住民ら約四五〇人が参加した。

 四日には那覇市の教育福祉会館で「八重山教科書採択問題」報告緊急集会(主催:沖縄戦の歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会)が行なわれた。資料が足りず立ち見も出る熱気の中で、八重山から駆けつけた住民の会の大浜敏夫さん、沖教組八重山支部長の上原邦夫さんらが、この間の経過と現場の生々しい実態を報告。「この教科書は絶対に使いたくない」(上原さん)と力を込めた。

 すすめる会共同代表の高嶋伸欣さんは「これは八重山だけでなく、全国的な動きの集大成。沖縄から発信する意味は大きい」と述べた。前宜野湾市長の伊波洋一さんは「米軍基地に関する記述がまったくない教科書を採択することは沖縄の将来にとってマイナス。領土問題、『中国の脅威』などを含めた全体の問題として八重山が狙われている」と指摘した(育鵬社版は尖閣、竹島など領土問題をことさらに強調しているのが特徴)。

 普天間移設問題の停滞を危惧する勢力が、宮古・八重山への自衛隊配備、米軍艦船の寄港などを含め、先島から包囲網を作ろうとしているように思われる。

(浦島悦子・フリーライター、9月9日号)

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