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打ち砕かれた経産省の「原発再稼働シナリオ」 菅首相は「脱原発」を貫けるか

2011年7月29日5:57PM

ストレステスト実施の発端となった九州電力・玄海原発。しかし依然、先行きは不透明だ。(撮影/筆者)

突然、菅直人首相が打ち出した「原発のストレステスト(耐性試験)」について、政府は七月一一日に統一見解を発表した。「玄海原発」(佐賀県玄海町)など運転停止中の原発に対し、再稼働の可否を判断するために暫定的な「一次評価」を実施する一方、稼働中を含む全原発については本格的な「二次評価」によって運転継続か否かを判断することとした。

一次評価を短期間で行なうと言っても一定期間が必要となり、しかも菅首相が安全審査に慎重な姿勢を崩していないため、早期の再稼働は困難な見通しとなった。今夏の電力需要逼迫を”脅し”にして、なし崩し的な原発再稼働を進めようとした経済産業省の目論見は打ち砕かれることになったのだ。

一一日の統一見解発表に至るまでの政府の迷走に対し、「閣内不一致」「玄海原発の地元自治体は混乱」といった批判が与党内からも噴出したが、諸悪の根源は「経産官僚の”操り人形”になっている」(民主党関係者)と揶揄される海江田万里経産相だろう。

五月に浜岡原発停止を要請。六月一五日にも「再生可能エネルギー促進法案(固定価格全量買取制度法案)」の成立に政治生命をかけると発言するなど、菅首相は脱原発の姿勢を打ち出していた。ところが、こうした動きとは対照的に海江田氏は、原発の再稼働について「安全性に問題がない」との主張を繰り返し、六月二九日には玄海原発の地元・佐賀県を訪問して古川康知事や岸本英雄玄海町長と面談。原発を抱える地元自治体を説得する役を買って出ていた。

こうした原発再稼働方針の経産官僚のシナリオ通りに動く海江田氏に対し、菅首相はいったんは「大臣と同じ立場」と表明したものの、経産官僚主導から脱却する機会をうかがっていたとみられる。

そして六月二七日の首相記者会見で、「今回の事故を受けて、原子力発電所の安全性ということが極めて重要だということは国民の共通した理解」「定期点検中の原発についてもしっかりと安全性を確認をすることは当然行なわなければならない」と強調。その上で、自然エネルギーが十分に普及するまでの間、化石燃料の使用が必要になることや、”埋蔵電力”と言われる自家発電所の調査を指示したことについて説明をしていった。

経産官僚は「原発再稼働をしないと夏の電力需要を乗り切るのは難しい」という「電力ないない神話」(川内博史衆院議員・科学技術イノベーション委員長)で海江田氏を”洗脳”し、その一方で『産経新聞』などのメディアを使って原発再稼働キャンペーンを展開していた。「この動きに対して菅首相は反転攻勢に出たのです」と民主党関係者は解説する。

「記者会見やエネルギー・環境会議(国家戦略室)で菅首相は、安全性が最優先と強調しつつ、自家発電所の活用を口にした。資源エネルギー庁が約六〇〇〇万キロワット(後に約五三〇〇万キロワットに下方修正)と公表した『自家発電』を使うことで、『原発再稼働しないと電力需要が逼迫する』という経産官僚の嘘を打ち破ろうとしたのです。その上で、海江田氏にストレステストの検討を指示してハードルを高くして、夏前の再稼働を事実上、不可能とした。菅首相の作戦勝ちといえます」(民主党関係者)

菅首相に梯子を外された形となった海江田氏は怒り、辞任をにおわす発言をしたが、非は官僚の手のひらで踊ってきたことにある。ただし海江田氏に会った川内氏はこう話す。

「七日に海江田大臣に会って元気づけましたが、原発再稼働なしでも夏の電力需要のピークを乗り切れる『電力ないない神話』について説明したところ、頷いて聞いていました」

内閣支持率が一五%に低下したものの、再稼働の先送りで脱原発解散に不可欠なエネルギーシフトを目指す政策の一貫性は整いつつある。残る問題は、海江田氏。経産官僚の”洗脳”(情報操作)から目覚めて、多くの国民が望む原発の安全性最優先に方針転換をするのかが注目される。
(横田一・フリーリポーター、7月15日号)

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