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岸本玄海町町長が運転再開容認の意向表明――緊迫する玄海原発、再稼働問題

2011年7月27日6:27PM

 佐賀県玄海町の岸本英雄町長が七月四日、九州電力の眞部利應社長と会談し、定期点検中の玄海原発二、三号機の運転再開への同意を伝えた。東京電力・福島第一原発の事故後、原発が立地する自治体が定期点検中の原発再開への同意を正式に伝えたのは、全国初。

 佐賀県の古川康知事は福島第一原発事故直後の三月一五日には、国の原子力行政や原発自体の「信頼は大きく損なわれた」として国に耐震基準や防災計画の見直しを求める考えを示していた。しかし同時に、定期点検停止中の二号機、三号機の再稼働については延期要請は検討していないとも述べていた。実際には今日に至るまで両機とも停止したままだが、古川知事も再稼働に向けての本格的な地ならしに入っていた。

 六月二六日に県は経済産業省主催の「説明番組」(当初、説明会と称した)を誘致したが、住民やメディアから「密室」「不十分」と評され、これを再稼働への通過儀礼とする知事の目論見は崩れた。すると知事は間髪を入れず、新しい「説明会」を七月八日に県主催で実施すると発表。人数は五五〇人だが、市、町ごとに定員数を定め、超えた場合は抽選というもの。原発に近い玄海町と唐津市がそれぞれ五〇人で、それ以外は市が二〇人、町が一〇人となっている。同じ市でも最大の佐賀市と最も小さな多久市とでは人口に一〇倍の開きがあるので県都の住民は軽く見られている。

 また「説明番組」に対するメールを九電が関連会社の社員らに送るよう指示していた実態を『しんぶん赤旗』が暴露した。

 このイベントで説明が「終了」し、一一日に予定されている県議会の「原子力安全対策等特別委員会」でもストップがかからなければ、その後は急速に再稼働へと進むと思われる。

 海江田万里経産相は六月二九日、玄海町役場と佐賀県庁を訪問し、町長、知事とそれぞれに会談した。県庁での会談後、知事は「安全性の確認はクリアできた」と話し、残るのは玄海町と県議会の意向だけだとした。わずか三〇分の会談で原発という複雑極まりないシステムの安全性がどう確認できたのか全く不可解だが、知事の「再稼働の三条件」の中に「県民の意向」が入っていないことにも驚かされる。また、知事の「安全性クリア」発言についても「大臣がわざわざ来て安全性に国が責任を持つと言ったから」といういい加減さが、知事自身の口から表出した。

 一号機の老朽化問題では、知事は「脆性遷移温度に関するデータの提出を九電に要請する」と答弁。原子炉容器の危険性にかかわるこの重要データの詳細については地元の住民団体が以前から九電に公表を要求していたが、九電は九八度という結果の数字だけしか公表していない。知事の要請となれば簡単には断れないだろうから、この点は大きな前進と言える。

 一日の特別委員会での質疑でも問題になったが、玄海原発の耐震性は福島原発が津波の前に地震でも損傷を受けたかどうかということと関連する。知事の判断は県が調査を依頼した専門家の、津波到達前まで原発に重大な損傷はなかったとの意見に依っている。しかし依頼された九州大学の工藤和彦、出光一哉の両氏はいずれも原発推進派で、しかも工藤氏は九電から受託研究費を受け取っているため「第三者」としての資格に欠ける。

 このような国と県の動きに対し地元の市民団体は再稼働阻止のために意気高く活動している。筆者も原告の一員である「玄海原発プルサーマル裁判の会」の中心メンバーは日夜東奔西走の状態。裁判の会は、九電管内という広域性から従来別々に活動していた福岡と佐賀のグループが初めて一体化して結成された。さらに六月二六日の「説明番組」への抗議行動以後は団体の垣根を越えての行動も活発化している。またしても再稼働のための単なる舞台装置となる八日の県の「説明会」に対抗して佐賀駅近くのメートプラザでオープンな「市民がつくる玄海原発説明会」を同時刻に開催する予定だ。

(豊島耕一・佐賀大学教授、7月8日号)

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