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音楽家も委託契約も「労働者」――最高裁が個人事業者の団交権認める

2011年6月12日1:14PM

「音楽家も業務委託契約者も、労働組合法上の労働者に当たり、使用者側は団体交渉に応じるべき」

 契約を結んだ仕事をする個人が労働法上の労働者にあたるか否かが争われた訴訟二件の上告審で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)はこのほど、個人事業主にも団体交渉権を認める判決を出した。二件とも中央労働委員会まで組合側が勝利。これを不服として行政訴訟に持ち込んだ使用者側は、東京高裁で勝ったものの、最高裁での再逆転で決着がついた。

 新国立劇場で、合唱団員としての契約更新を二〇〇三年七月に拒否・解雇された八重樫節子さん(日本音楽家ユニオン)について判決は、運営財団の指揮監督下で歌唱の労務を提供し、報酬は労務提供それ自体の対価とみて、総合考慮すれば労働者に当たる、と明言。ただ、その上で八重樫さん本人への契約更新拒否が、組合活動を理由とした不利益扱い(不当労働行為)に当たるか否かについては判断せず、東京高裁へ差し戻した。そのため、今後は団交と高裁の ”二本立て” の運動に移る。

 八重樫さんは、「技量審査も不明朗で身分が不安定すぎる。今後は海外のように、オーディションに組合を立ち会わせるなど、民主的な新システムによる採用にしてほしい」と話している。

 一方、INAXメンテナンス(IMT、愛知県)との間で委託契約を結び、製品の修理などに当たってきたカスタマーエンジニア(CE)でつくる組合が二〇〇四年九月、労働条件変更の際には事前協議を、と申し入れた団交をIMTが拒否した事件については、CEを労働者と認めなかった二審の東京高裁判決を最高裁が就労実態を重視して破棄。組合側の勝訴が確定した。

 CEらが加盟する全日本建設交運一般労働組合(建交労)大阪府本部は、判決日の声明で、「委託、請負など偽装雇用の ”名ばかり自営業者” は一〇〇万人を超え、あらゆる産業に広がっている」と指摘。無権利状態に置かれてきた彼らが、「憲法二八条が保障する労働基本権の主体であることを明確にした」と、判決を高く評価した。

 IMTの関西圏のCEらは、個人加盟が特徴の建交労大阪府本部建設一般合同支部に駆け込み、全国支援で闘ってきた。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、4月22日号)

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