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布川事件の桜井・杉山両氏らが訴え――「冤罪を許さない!」集会開催

2011年6月9日6:21PM

 茨城県利根町で一九六七年、大工の男性が殺害された布川事件の再審において、仮釈放中だった桜井昌司さん(六四歳)と杉山卓男さん(六四歳)に対し、水戸地裁土浦支部(神田大助裁判長)は五月二四日、無罪を言い渡した。

 判決が出る前の一八日、本誌編集部と元参院議員の村上正邦氏が共同主宰する「日本の司法を正す会」は、東京・永田町の衆議院第一議員会館の大会議室で、「冤罪を許さない!」と題した院内集会を開催した。

 布川事件の冤罪被害者・杉山氏と桜井氏が参加したほか、狭山事件の石川一雄氏、袴田事件の袴田巌氏の姉・秀子氏や、談合容疑で大阪地検特捜部に逮捕・起訴された大阪の元枚方市長・中司宏氏らも顔を揃え、(1)なぜ無実の人が虚偽の自白に追い込まれてしまうのか、(2)警察・検察が押収証拠を独占し、無実を示す重要証拠が長期間隠されてしまうことの問題点――などについて、それぞれの立場から生々しい訴えがあった。

 特に桜井氏は「検察・警察は、個々はまじめな人々であっても、組織になると平気で嘘をつく。私たちの事件も、証拠改竄によってでっち上げられた」と指摘。杉山氏は「(杉山氏が収監された)東京拘置所にも、千葉刑務所にも、無実を訴えている人がいた。我々以外にも、冤罪に苦しみながら声すら上げられない人々はたくさんいるはずだ」と述べた。

 集会には、参院議員で社民党党首の福島瑞穂氏、自民党参院議員で弁護士の丸山和也氏、新党大地代表代行で衆院議員の浅野貴博氏らも参加し、以下の要請をまとめた決議文を採択。集会後にはこれを江田五月法務相と衆参両院の法務委員長に提出した。

一、取り調べ全過程の「可視化」を直ちに導入せよ。

一、すべての証拠を、公判前の早い段階で被告・弁護側にも全面開示する制度を導入せよ。

一、「特捜検察」の在り方について、廃止を含めた抜本的な見直しを行え。(編集部にて簡略化)

(青木理・ジャーナリスト、5月27日号)

編集部注)
「要請書」全文は下記の通り。
/////////////
 我々「日本の司法を正す会」は、二〇〇六年以来、検察や警察による歪みきった捜査、あるいは極めて恣意的な捜査のターゲットとされた人々の訴えに耳を傾け、その捜査の内実を検証し続けてきた。結果、まったく身に覚えのない嫌疑をかけられて塗炭の苦しみを強いらた「冤罪被害者」が、とてつもない数で存在することが明確となった。それは、法が支配する民主主義国家としては決して許されぬ大罪である。

 昨年来、大阪地検特捜部を舞台として発覚した押収証拠改竄事件を契機として、検察捜査の問題点を指摘する声がようやく、わずかではあるものの出始めている。ただ、その問題点は、押収証拠改竄に手を染めた主任検事や、その監督責任を持つ大阪地検特捜部幹部などにのみ矮小化され、検察内でも一部部署で起きた不祥事案として処理されてしまいがちとなっている。

 だが、我々は、はっきりと断言する。問題を孕んでいるのは当該の検事のみでもなければ、大阪地検特捜部のみでもない。法務・検察組織全体が根本的な歪みをきたしているからこそ、押収証拠改竄などという信じ難き不祥事が発生したのだ。いや、もっと正確に言うのなら、裁判を含む、この国の刑事司法全体が信じ難き腐食を起こしてしまっている。大阪地検特捜部で発覚した押収証拠改竄事件は、その腐食がほんの一部、組織の末端で噴き出した現象に過ぎない。

 刑事司法全体の腐食は、既に手の施しようのないレベルにまで達している。公訴権を基本的に独占している検察が起訴に踏み切った際の有罪率が九九%を超えるというのは、その象徴的な例である。また、容疑を否認すれば起訴後も延々と保釈を受けられぬ「人質司法」、法廷で真実を訴えても検察官作成の調書に重きが置かれてしまう「調書主義」、検察・警察が請求した各種令状を裁判所が却下する率がゼロコンマ数%以下となっていること等々、日本の刑事司法の現状はまさに「暗黒状態」に陥っているといっても過言ではない。

 いま、この瞬間も、冤罪の汚名を着せられたまま、塗炭の苦しみに喘いでいる人がいる。本日、この舞台に上がって必死の声を上げた冤罪被害者ばかりでなく、声すらもあげられずに泣き寝入りを強いられている冤罪被害者も数多いるはずだ。

 繰り返すが、それは法が支配する民主主義国家として、決して許されぬ大罪である。我々は、こうした現状を正すため、以下を直ちに実施することを求める。

一、検察・警察捜査におけるすべての取り調べについて、参考人に対するものもふくめ、取り調べ全過程の録音・録画=いわゆる「可視化」を直ちに導入せよ。

一、検察・警察が捜査の過程で押収したすべての証拠を、公判前のできるだけ早い段階で被告・弁護側にも全面開示する制度を導入せよ。

一、東京地検特捜部をはじめとする、いわゆる「特捜検察」の在り方について、廃止を含めた抜本的な見直しを行え。

一、大阪地検特捜部の元主任検事・前田恒彦氏が手がけた事件と、笠間治雄検事総長が特捜部時代にかかわった事件について全面的に検証せよ。

一、冤罪被害者である袴田巌さんへの死刑執行を停止し、袴田さんに適切な医療措置をとれ。

 なお、近年五〇%を超える再犯率を抑えるため出所者に対する就職支援などの社会復帰政策を充実させること、最高裁裁判官の役割の重要性に鑑み国民審査のあり方を検討することの必要性をあわせて指摘しておく。
                                                                                          以上
二〇一一(平成二三)年五月一八日
院内集会「冤罪を許さない!」参加者一同
                                                                      日本の司法を正す会
                                                                           村上正邦
                                                                                   月刊日本
                                                                                  週刊金曜日

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