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【フランス】各地で反原発デモ――原発継続是か非か大激論始まる

2011年4月20日12:48PM

 五八の原子炉で電力の八割を供給する世界第二の原発大国フランスでも、一三日から各地で反原発デモが噴出。原発継続の是非を問う国民投票も提案され、大激論が始まった。

 反原発デモは、近隣に原子炉を抱えるボルドーやストラスブール、首都パリなどに続出。二〇日にはフェセナイムで一万人規模の反原発集会が行なわれた。六〇年来、独自核政策を国是としてきたフランスでは、画期的現象である。

 また「ヨーロッパ・エコロジー・緑」のダニエル・コン=ベンディット氏らも、すかさず国民投票を呼びかけ。だが「今は日本への連帯が先」「ここぞとばかりに恐怖を政治利用すべきではない」との批判が左右両翼から上がり、「すぐにろうそく生活には戻れない」と感じる国民も、拙速な対応には慎重姿勢を示した。

 一方、ジャン=リュック・メランション氏率いる左翼の党や共産党は、原発モラトリアムを提起。これに対し社会党はモラトリアムでは歯切れが悪く、(1)透明性(2)安全性(3)徹底検証(4)核キャパシティ増進のモラトリアム(5)国民的議論の五つを要求した。

 こうしたなか一五日の国民議会では、フランソワ・フィヨン首相が、「福島の教訓に照らし全原子炉の検査を行ない、結果を完全公表する」と約束。日本から詳細な経験がもたらされるのを待ち、原発検証に生かす方針を打ち出した。

 ただ、大激論の火ぶたが切って落とされたのは明らか。国民も、チェルノブイリ原発事故の際に政府が本土汚染の情報を隠蔽した事実を忘れておらず、危機感を隠していない。とくに第一号原発として一九七七年に始動したフェセナイム原発は、老朽化に加え、ドイツ国境の地震地帯にあり、運河の水面すれすれ。このため市民団体「核からの脱出」は、「いつ事故があってもおかしくない」と警鐘を鳴らす。他にも四二の原子炉が一九八〇年代の産物で、いずれ老朽化問題に遭遇する。

 このため科学者らを中心に、真剣に脱原発を模索する試みも開始されており、研究団体「ネガワット」は、広告など無駄な電力消費の削減、産業放熱リサイクル、風力、太陽熱など再生可能エネルギーへの転換を通じ、三〇年がかりで原発から脱する道を提起。注目されている。

 原発問題は来年の大統領選挙でも争点に浮上するとみられ、「安全神話」は神通力を失いつつある。フランスでも確実に、「アプレ・フクシマ(福島後)」が始まった。
 
(山本三春・在仏ジャーナリスト、3月25日号)

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