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与党の頭越しに進むTPP交渉への参加準備――開き直る外務省経済局長

2011年2月12日3:42PM

「TPP交渉参加になぜ米国議会の承認が必要なんだ。これでは外交権の放棄ではないか!」

 一月二七日朝、東京・永田町の衆議院第二議員会館において民主党の「APEC(アジア太平洋経済協力)・EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)対応検討プロジェクトチーム(PT)総会」が開かれた。PTの民主党議員に説明するため外務省、内閣官房、経済産業省、農林水産省の説明官が出席したが、民主党の国会議員の間では冒頭の発言を始めとする怒りが次々に噴出したという。

 菅直人政権が掲げる「平成の開国」。その中核政策になっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。四月に統一地方選を控え農村部を抱える地方の反発が強いこともあって、日本政府はいまだにその交渉会合に正式に参加していない。しかし、外務官僚らは米国を始めとする交渉参加国と情報収集と称する協議を水面下で実施しており、いつでもTPP交渉に参加できるようにエンジンを暖めている。昨年一二月一三日~一五日にはニュージーランド、豪州、シンガポール、今年一月一三日及び一四日には米国(日米貿易フォーラム)、一四日~一七日にはチリやペルーと協議している。

 TPPの交渉会合は直近では二月にチリで行なわれる第五回交渉会合を始め今後も毎月のように行なわれる予定だ。最終的に今年一一月のハワイAPEC首脳会議において交渉参加国の間で合意が目指される方向である。

 PT総会出席者への取材や民主党議員に配られた当日の議事メモによれば、冒頭の発言内容を始めとして外務省担当官から今回初めて説明されたことが多かったという。

 ちなみに冒頭の質問に対し外務省の八木毅経済局長は「米国議会の承認は日本に対してだけでなく、他の国についても同様」と答弁している。そもそもTPPは多国間協議だ。にもかかわらず交渉参加希望国に対しては米国議会の承認が必要なのである。まさにTPPが米国主導の多国間自由貿易協定だという実態が浮かび上がってくる。

 八木経済局長らは一月一三日にTPPの情報収集として日米貿易フォーラムに出席しているが、そこでは牛肉輸入問題、郵政関連問題、自動車の技術基準ガイドラインについて米国側から提案がなされたという。ここでいう「郵政関連」とは米国が年来要求している郵貯・簡保の、「自動車」は車検基準の規制緩和を意味する。いずれも日米交渉では実現してこなかった米国側の要望だが、TPPという多国間協定に一括して混ぜてしまえば日本で受け容れやすくなるからだとは、うがった見方か。

 さらにTPPの交渉会合において農業、金融、労働、紛争解決など二四の作業部会(左図表)が存在するが、規制緩和の具体的な議論が交渉参加国で進んでいることも当日は明らかになり、これにも批判が噴出した。

「ここまで分野が広がれば全省庁としての取り組みになるはず。外務省の経済局長ではなく、まずは前原誠司外相が説明をするのが筋だ。TPPは外務省経済局が振り回しているよ」(出席者)

 決定的に外務省が民主党国会議員たちを逆撫でしたのは、民主党PTへの説明会以前に八木経済局長らが自民党の部会に対して二四分野について詳しい説明を実施していたことだ。このことを問い質されると八木局長は開き直ったように「(自民党には)二四部会について具体的に説明した」と答弁。民主党は正面から面子を潰された格好になったという。

「今外務省とつながっているのは親米派の前原外相周辺ぐらい。外務省が政権与党の民主党ではなく野党である自民党にまず話をするとは、なめられたものだ」(出席者)。二月一日にあらためて民主党PTへの説明会は開かれたものの、質問がTPPの中身に及ぶと、外務省は「交渉に参加しなければ詳しいことはわからない」と繰り返し、突っぱねたという。かように民主党議員と外務省の関係は冷え切っているらしい。

(平井康嗣・編集部、2月4日号)

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