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代理ミュンヒハウゼン症候群――傷害致死で懲役10年

 幼いわが子の点滴剤に汚水やスポーツドリンクを混ぜて死なせたとされた岐阜県関市の高木香織被告(三七歳)に、京都地裁(増田耕兒裁判長)は二〇日、懲役一〇年の実刑を下した。二〇〇四年から〇八年にかけて同被告の二女、三女、四女は岐阜大学付属病院で次々と敗血症などで死亡。五女に手をかけた京大付属病院で事件は発覚した。

 京都府警の捜査では殺意までは認められず、二女と四女は傷害致死罪、三女は死亡との因果関係が立証できず傷害罪で起訴された。

 退院できそうになると異物混入して悪化させた行為を検察は「犯行は身勝手で悪質」と懲役一五年を求め、弁護側は「真っ先に疑われるから再犯は不可能。刑務所では改善されない」などと刑の猶予を求めていた。

 精神鑑定で高木被告は「代理ミュンヒハウゼン症候群」とされた。病気などのわが子を甲斐甲斐しく世話する姿をアピールして周囲の同情や関心を引きたいという症状。看病する母親を医師や看護師が疑いにくく、怪しまれると転院させてしまうから発見も難しい。

 この裁判は裁判員裁判で、評議に要する二日を含めて九日間かかるため辞退者が相次いだ。一〇〇ページ以上の鑑定書は証拠採用されず、たった三ページになった。証人となった鑑定人の岡江晃氏(京都府立洛南病院院長)はきわめてわかりやすく説明したが、裁判員からは質問も出なかった。今回、責任能力に争いはなかったが、今後、精神鑑定が運命を決めることも多い死刑が予想される事案で、こんなに簡略化された鑑定書をもとに裁くのなら恐ろしい。

(粟野仁雄・ジャーナリスト)