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世田谷国公法弾圧事件控訴棄却  表現の自由解釈分かれ最高裁へ

2010年5月24日6:02PM

 二〇〇五年の衆議院議員選挙期間中に共産党の機関誌を配ったとして、国家公務員法違反に問われた元厚生労働省職員の宇治橋眞一さんの控訴審判決が一三日、東京高裁(出田孝一裁判長)であった。
 公判開始前から傍聴券を求め、裁判所に並ぶ支援者ら。午前一〇時一〇分、法廷内に入りきれなかった支援者らが裁判所前で待つなか、裁判長の主文読み上げ直後、弁護団の一人が「不当判決」を告げに地裁前に出てくると、集まった支援者からは落胆ともつかない声が漏れた。

 判決は、国家公務員の政治活動を全面禁止にした猿払最高裁判決(一九七四年)を踏襲。被告人の宇治橋眞一さんに罰金一〇万円とした東京地裁判決を支持し、被告人の控訴を棄却した。

「これは裁判ではない。裁判長は全く聞く耳を持たなかった。公務員労働者への偏見と思い込みでもって判決を出した。必ず最高裁で表現の自由を勝ち取る」。裁判後、支援者らを前に弁護団団長の菊池紘弁護士は語気を強めた。また、宇治橋さんは、「判決は猿払最高裁判決をなぞっただけか、それより悪い。裁判長を始め三人の裁判官の頭の中は三六年前でとまっているのではないか。これは、裁判官の質の問題。最高裁にはそれなりの裁判官がいると思う」と述べ「必ず逆転無罪を勝ち取る」と語った。

 今年三月には、同様に国家公務員法違反に問われていた堀越事件の東京高裁判決で、国家公務員の勤務外の政治活動を規制するのは、憲法二一条違反との判決が下されたばかり。国家公務員法違反に問われた二つの高裁判決は、猿払最高裁判決後の社会をどう見たか、という点で見解が分かれた。

 堀越判決では、公務員の政治活動を禁じる国家公務員法(国公法)一〇二条及び人事院規則(規則)一四の七を憲法違反とはしなかったものの、「国民の法意識」の変化を上げ、国家公務員の職務外の政治活動を規制することについては憲法二一条違反としていた。また、国家公務員の政治活動の自由について、世界標準という視点から立法機関へ見直しの必要がある、との付言をつけた。一方、この日の判決では、国公法、規則による公務員の政治的行為の規制が「行政の中立的運営(行政の中立)と国民の信頼」の点から、たとえ職務・勤務時間外で、内密に行なわれたとしても、規制を受けることは合憲とした。また、社会の変化については、「諸外国の例が日本と政治的な関係や諸条件が異なる」として参考にできないとしている。

 堀越事件の弁護団の一人である鈴木亜英弁護士は、堀越事件についてまずは、検察の上告棄却で勝利判決を確定させることが優先としながらも、「東京高裁で二つに意見が分かれたということは、この問題についての認識が裁判所でも一つになっていないということ。今は国家公務員の市民的自由をめぐって二つの潮流がぶつかり、いわば葛藤の状態にあると思う。猿仏最高裁判決を認めるのか否かです。世田谷国公法弾圧事件に限れば最高裁は事件を大法廷に回付し、弁論を開き、正面から、国家公務員の政治活動の自由、また言論・表現の自由を認めるべき」と語った。

 最高裁で審理されることになる二つの事件だが、元最高裁裁判官である園部逸夫弁護士は、「世田谷国公法判決は従来の正統的な考え方に基づいている。一方、堀越事件のような判決は、おそらく一〇年前だったら出なかっただろう。今の時代に、同様の事件が同時期に出てきたことは象徴的。もし、二つの事件が審理された場合には、最高裁でも意見が分かれると思う。裁判官の出身などの構成、猿払最高裁判決への考え方、また堀越判決への臨み方などがさらけだされる。その時代の中庸の考え方を出すのが裁判所。二つの高裁判決は猿払最高裁判決の適用で見解が分かれたわけだが、今の時代の国民の法意識をふまえながら、猿払最高裁判決を考えたらどうなるのか。これは時代の試金石になるだろう」と話した。

 今の時代をどうみるのか。最高裁の判断が注目される。

(ゆげたりえ・編集部)

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