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今度は菅政権が追い込まれているが、もううんざりだ。

編集長後記

 今度は菅政権が追い込まれているが、もううんざりだ。

 メディア各社は、数百人程度に電話で聞いた「世論」調査によって支持率が二〇%を切って民主党政権発足後最低だと、煽り始めた。安倍政権以降、繰り返されている政権潰しのパターンである。

 民主党内でも一六人の造反議員が出るし、鳩山新党の噂も飛び交っている。小沢一郎氏も地域政党との連携の動きが取り沙汰されている。小沢氏の大義は見えない。小沢チルドレンと言われている一年生議員の中には民主党内の政争に辟易している人たちもいる。しかし、この権力争いは容易にはおさまらないだろう。小鳩時代に小沢氏に徹底的に干され、憎しみを抱いている反小沢の議員たちがいる。

 さらに解散総選挙を密かに望んでいる民主党の現役もいる。たとえば選挙に強い中堅議員だ。当選回数を重ねないと目前に置かれている閣僚の椅子に座れないからだ。すさまじい足の引っ張り合いだ。

 公約を守る気がない菅は嫌だ。だが、民主党下ろしにはその先がない。 (平井康嗣)

民主党代表選で小沢惨敗をもたらしたマスメディアは絶滅危惧種

 新聞がここまで落ち込んだ要因の一つに、空疎な「客観」「公正・中立」を掲げ、「主張」を失ったことがある。だが、最近はさらに腐敗の度を深め、マッチポンプ役を平然とした態度でこなしている。典型は世論調査だ。特定の方向に世論を引きずるため「多数決原理」を利用しつつ悪辣な宣伝活動をしているのだ。
 
 最も影響力の強い『朝日新聞』の「主張」は日米同盟の堅持であり、そこに反旗を翻す小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏は批判対象となる。だが、事実に基づかない主張はプロパガンダにすぎない。たとえば、辺野古沖への米軍基地移転推進が「国益」にかなう事実をどれだけわかりやすく読者に提示したのか。これまでも何度か指摘してきたが、米国に都合のいい報道が目立つばかりだ。
 
 政治とカネの問題に関しても、「小沢氏はカネに汚い」という印象を植え付けるような報道が中心で、法に抵触した事実を独自に抉り出したわけではない。むしろ、本来の同紙なら、東京地検の行き過ぎた捜査を批判すべきなのに、事実と無関係の「小沢つぶし」は目に余る。
 
 そして民主党代表選。『朝日新聞』を始めとした大手紙は、何度も世論調査を実施し、そのたびに「小沢氏とカネ」を強調した。紙面であおり、世論調査を行ない、その結果でまたあおる。代表選当日の『朝日』社説には言葉を失った。「小沢氏の立候補は理解しにくい。……最高指導者たろうとするにしては、けじめがなさすぎるのではないか」。同紙はこれも「主張」と言うのだろうが、アジテーション以外の何物でもない。客観的に見て、多くの新聞は小沢氏の足を引っ張り続けた。これはもはやマスコミファッショだ。
 
 小選挙区制になり、国会議員はますます世論動向を気にするようになった。国会議員票が思ったより小沢氏に流れなかったのは、マスコミ報道を見て寝返った議員が多かったからだろう。地方議員やサポーターが菅氏を圧倒的に支持したのも、新聞やテレビの影響が大きかったことは間違いない。菅直人氏の勝利はマスメディアがもたらしたと言っても過言ではない。

 インターネット上では、むしろ小沢氏支持の世論が多数派だった。ネット情報を重視する人々からは、新聞やテレビという大マスコミは既得権者として見られている。そうしたメディアの報道が胡散臭く感じられたことによる小沢支持とも考えられる。とするならば、大マスコミが絶滅危惧種になるのは時間の問題ではないか。(北村肇)

マスコミが平然と続けるマッチポンプのような世論調査の罪

 民主主義とは何か、学生時代から考えてきた。解答はまだ思いつかない。ただ、多数決主義がそれではないことは確かだ。多数派の意思が通るということは、少数派の意思が無視されることでもある。マイノリティーの声に耳を傾けることこそ民主主義なら、多数決によってことが進むのは横暴ともなりかねない。

 しかし、権力を持った少数の人間が勝手にふるまうのは、民主主義から最も遠い地点のことだ。やはり、多数の人間の意思が尊重されねばならない――と、かように思考は堂々巡りをしていき、終着点がない。結局、「絶対的存在者に判断を委ねるしかない」という安易な方向に走った先に、最も忌むべきファシズムがあるのだろう。

 すべての個が自立し、しかも他者の存在に想像力を働かせることのできる社会なら、多数決が横暴になることはあるまい。だが、その理想ははるかだ。となれば、メディアの役割が重要となるのに、現状は薄ら寒い。残念ながら、マッチポンプのような世論調査を平然と続ける新聞・テレビには、ほとんど期待できない。
 
『東京新聞』6月10日朝刊の「全国世論調査」をみて愕然とした。「菅首相は米軍普天間飛行場移設問題で、移設先を沖縄県名護市辺野古崎とした日米合意を踏まえて今後対応する考えです。この方針を評価しますか」との問いに、半数を超える52.2%が「評価する」と答えた。「評価しない」は34.5%、「分からない・無回答」が13.3%だった。

 この数字は何を意味するのか。普天間問題が鳩山由起夫氏の致命傷になったのは、「移設先が沖縄県外あるいは国外にならなかった」からではなく、「ふらついていた」からであることを示している。このままでは、移設先が普天間に落ち着いても菅政権の支持率が大きく下がることはないだろう。沖縄はまたしても見捨てられるのだ。
 
 こうした「民意」が生じたかなりの責任はマスコミにある。『朝日』も『読売』も、「鳩山首相の腰が定まらないから、日米同盟が揺らいでいる」というトーンの報道をし続けた。“被害者”沖縄への想像力は欠如し、米国との関係が壊れたら日本の安全が守れないという、古色蒼然たる主張を振りまき続けたのだ。そして世論調査で鳩山政権の支持率が下がるたびに「それみたことか」とあおった。
 
 民主主義とは何か、メディアの役割とは何か、マスコミがこのことを真摯に考え、日々の報道に生かさない限り、この国に未来はない。(北村肇)