編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「排除」ではありません

 11月10日号特集「アベ政権に野党はどう挑むか」について、たくさんの方から問合せをいただきました。どうして日本共産党が入っていないのか、という一点です。

 選挙後の慌ただしく難しい時期でしたが、アベ一強にどう立ち向かうのか、野党にお話を伺いたいと思いました。もちろん共産党にもインタビューの依頼をしました。しかし、調整がつきませんでした。

 立憲民主、希望、社会民主の3党が揃うことがわかっていれば別のプッシュの仕方もあったのですが、ぎりぎりのところで調整がついたのでそれもできませんでした。記事掲載にあたっては、そのむね一言でも説明をすべきだったと反省する次第です。お詫び申し上げます。

 共産党には改めて要請をしています。また別途、長期的な方針を含めじっくりお話が聞ける企画も予定しているのでご期待ください。

 加計学園は安倍首相らが説明責任を果たさぬうちに認可の見通しとなりました。しかしまだ、やるべきことは残っています。

「読んでますよ」

「読んでますよ」。11月3日、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」の集会で本誌のチラシを配っていると、声をかけてくださる方が何人もいた。なかには「創刊からずっと購読している」とおっしゃる方も。社員だけでなく、読者会のTさんも神奈川から駆けつけてチラシ配りにご協力くださったという。帰りには国会議事堂前駅のホームで本誌「くらし」欄を読んでくださっている方をみかけた。みなさま、ありがとうございます。

 ただ、11月3日の「文化の日」を明治維新150周年にあたる来年、「明治の日」に改称したいと右派国会議員がいうのが気になる。日本国憲法が公布された、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」その日を、明治天皇の誕生を祝う日に戻してしまっていいのだろうか。憲法をめぐる象徴的な闘いになりそうだ。より多くの人に理解を求めたい。

 なお、「『10月革命』はロシアの人々に幸福をもたらさなかった」の2回目は次週の掲載になります。

ここにいたっても

 安倍政権には、ここにいたっても驚くことばかりだ。国会での与野党質問時間の配分比を検討するという話だ。野党の質問時間を減らして、政権にとって都合が悪い質問をさせまいということか。

 これには立憲民主党の長妻昭議員がツイッターでも猛反発。「自民党が野党時代、強力に要請をして今の配分比となった。野党の質疑時間を減らす姑息な試みは止めて総理の言う丁寧な説明に努めてもらいたい」と批判している。

 特別国会も当初は首相指名や議席の指定という型通りのものだけに収める予定だったが、さすがにそれでは批判がかわせないということで与党側は検討をしているという。

開票センターでの首相の憮然とした表情の意味がようやく理解できた気がする。第一野党が立憲民主党であることが、気に入らないのだろう。国会の場で突き上げをくらうのが怖いということか。

 しかし、そういう安倍首相をいまもかつぐ人たちの打算こそ、私は怖い。最新調査で、安倍首相の不支持率が支持率を上回っている。

悔しい

 予想通りではあったが、悔しい。

 総選挙の投開票のあった22日、私が行った自民党開票センターは、通常30人くらいの記者が使う自民党本部内の記者クラブで、150人から200人の報道陣が詰めかけていた。テレビカメラが15台、スチールカメラが10台で3列……。

 実はN放送の記者がそのようにレポートしていたのだ。この記者、自民党の公約を「奇策をてらわないまっとうな公約」と持ち上げていて気になる。ひな壇の中央正面のゾーンには、ピンクリボンをつけた(記者クラブ所属の?)映像担当記者以外は立ち入る権利がない。

「尻の肉がもげそう」。途中、正面ゾーンで脚立に座っていたカメラマンが、苦痛に顔を歪めながら立ち上がる。他のカメラマンも一斉に立ち上がり身体を伸ばす。「立ちレポ」ゾーンで身動きできないこちらは、何時間も立ちんぼだ。おまけに頭上でカメラを構える人がいて、よくぶつかる。

 とにかく“狂騒の1日”は終わった。今後は「憲法改正」発議に、リベラル勢力がどう対抗するかだ。

チャンスはある

 今週号が出るころは選挙戦も大詰めだ。経済を立て直した安倍政権という自己評価がいかにおかしいか、今週号の佐々木実さんによる「経済私考」をお読みいただければわかるだろう。「史上最高のGDP(国内総生産)」をめぐるかさ上げ疑惑だ。

 小池百合子希望の党代表から「排除」発言を引き出したのは、今週号に記事を執筆されている横田一さんだ。キャリアが豊富な上に地道な取材をされる謙虚な方だ。都知事の非公式会見で横田さんが「(小池氏が前原氏と)共謀して『リベラル派大量虐殺、公認拒否』とも言われているのですが」と質問を向けると、小池都知事は思わず「(リベラル派を)排除いたします」と答えてしまったのだ。

 安倍政権の復興相を質問攻めにして「出ていけ」と言わしめた西中誠一郎さんも、こまめに集会を取材されていて、行く先々で見かけることが多い(復興相は別件も重なり後に辞任)。政治家の嘘を暴くのはジャーナリストの使命だ。投票日まで、まだチャンスはある。

新しいステージ

 今回の総選挙、289小選挙区中、249区で野党候補の一本化が成立したという。公示日直前、市民連合の集会に野党の3党首がやってくるというので、私も参加した。吉田忠智社民党党首がいうように、今回の総選挙は、安倍政権打倒と憲法改悪阻止が目標だ。枝野幸男立憲民主党代表のスピーチ、「いいな」と思った。「この選挙の主役」のところで、「安倍政権に、ヘンだぞ、おかしいぞと声をあげてきた皆さん」だけでなく、「声をあげられなかった皆さん」にも言及したのだ。

 この選挙で投票権を持つMさんは、今年1月に会った時、都立高生でありながら1日16時間働いていた。卒業後の専門学校の学費を貯めるために。だが、この夏、高校を辞めてしまった。理由はわからない。今回の選挙に立候補した方々は、ぜひ、彼・彼女らの声を聞き、その声を政策に活かしてほしいと思う。この総選挙が広い意味で、志位和夫・日本共産党委員長のいうように「市民と野党の共闘の、新しいステージ」になることを願っている。

選挙報道

 10日の公示を前に、情報が日々入り乱れ、状況が刻々と変わっていく。週刊誌というメディア特性をどう生かして選挙の誌面を作っていくか、本誌編集部もいま汗を流し、頭を悩ませている。

 1日は東京・新宿で行なわれたデモに参加した。市民も政治に声をあげようと企画された。参加者は1500人。枝野幸男議員と山添拓議員も駆けつけた。枝野議員は「社会の軸となるべき基本は守る。もう少しお待ちください」とスピーチ。その言葉通り翌日「立憲民主党」結党を表明。

 デモの途中、右翼の街宣車と鉢合わせし、罵声の連呼を浴びた。すごい騒音なのだ。私の前に1歳のお子さんが抱っこされていたので怖がらないか心配したが、スヤスヤ眠り続けている。「この時間、おやすみタイムだから」と母親は笑っている。大物だ。

 一つ嬉しかったのは、「resist」と大書されたプラカード。そこに添えられていたのが、ドクロではなく、笑っている人の顔だったのだ。

 しばらく選挙報道が続く。

解散・総選挙へ

 解散・総選挙へ。予想通り”エセ改革新党”に有象無象が結集(失礼!)。壊憲阻止へ、本誌も力を注ぎます!

「メディア一撃」は今週号で連載を終了する。2010年からの人気コラムだった。なかでも髙嶋伸欣さんは06年からの「メディアウオッチング」を、浅野健一さん、中嶋啓明さん、山口正紀さんは、1997年からの「人権とメディア」を引き継いだので、本当に長丁場だった。

 たくさんの人が亡くなる事件が起きた時、いたたまれず追悼する会に私は駆けつけた。会は非公開で取材はお断りだったが、本誌関係者が5人その場にいた。「草の根www.」の岩本太郎さんもその1人。会の後、みんなでビールを1杯だけ飲み、話をした。書く、書かないに関係なくフットワークよく動き、議論をする。岩本さんの取材活動の一端をかいまみた気がした。

 砂川浩慶さん、田島泰彦さんにも毎回シャープな批評をいただいた。執筆陣には引き続き協力いただけることと思う。目下、新しいメディア欄を準備中だ。

歴史に向き合う

 アイヌ民族の遺骨問題は度々本誌で取り上げてきたが、今回大きな返還の動きがあったので特集を組んだ。実は沖縄でも研究目的のために琉球民族の遺骨が墓から持ち去られる事態が起きていたことを、平野次郎さんが6月23日号で報じていた。今週号の特集作成が佳境に入った頃、沖縄戦で集団自決の場となったチビチリガマが荒らされたというニュースが入ってきた。

 大田昌秀元沖縄県知事の遺稿『沖縄鉄血勤皇隊』(高文研)を思い起こした。戦場に散った鉄血勤皇隊の遺骨を、戦後学校に戻った大田らが収集しようとしたところ、「不必要に米軍を刺激する」として学校が拒否したのだ。

 当時、住民の自由な移動を米軍が禁じていたこともあるが、食糧の提供を米軍に止められることを学校側は恐れたのだという。だが、生徒は、そこで諦めたら、自分たちは「人間として腐ってい」るとして折れなかったという。今回の事態、歴史の風化として片づけていいのだろうか。チビチリガマは渡瀬夏彦さんが今週号で記事にしてくれた。

総がかり

〈自民党としては秋の臨時国会で憲法改正について案を提示し、来年の通常国会で発議をめざす〉むね高村正彦同党副総裁が発言。そのニュースが流れた翌日の8日、都内で「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9・8キック・オフ集会が開かれた。

 今週号で小石勝朗さんのレポートがあるのでお読みいただきたい。私は開始時間ぎりぎりに駆け付けたが、席がない。同じように、ロビーのモニターで発言をきく参加者も多数いらした。いよいよ市民の側も「総がかり」を超える「総がかり」で運動を始めるときがきた。本誌の関連では編集委員、連載コラムニスト、常連執筆者の方々が登壇した。

 集会解散後、I部員は会場外で23日に予定している「添田唖蝉坊イベント」のチラシを配布していたが、「しゅうかんきんようびです!」と道端で本誌を手に声をあげている方がいた。ボランティアで本誌を販売してくれている読者だった。本誌も文字通り「総がかり」。これからさらに安倍改憲阻止に向かって企画を打って行きます。