編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

辺野古と祭り

 今国会で成立した共謀罪は、たとえ法務大臣が施行日を答えられなくとも今後我々を縛る。その悪法が先取りされているかのような事態が続く沖縄を、本号では特集した。

 先日、沖縄・辺野古ハーレーに行ってきた。爬竜船(はりゅうせん)を漕ぎ、速さを競う伝統行事だ。悪天候で一度流れ、迎えた今月4日、風は強かったものの、「これがハーレー日和」とのこと。

 地元の人たちと共にキャンプ・シュワブの米軍、沖縄防衛局も参加した。いかにも屈強そうな米軍チームが常勝するのかと思ったらそうでもない。子どもや女性たちが鍋を叩き地元優勝チームを迎える。この浜辺は計画案では作業用バックヤードになる。地元の人に聞くときっぱりと「ハーレーはなくなりません」。

 反対運動のテント村に変わりはないが、基地との境のフェンスにNO BASEなどと書かれたバナーがない。地元の人に配慮し、63枚すべてを取り外して保管、翌日また掲げるのだという。祭りができるのもこの美しい浜辺あってこそ。海の神様は、その守り人をきっと見ている。

騙しのテクニック

 これを書いている13日午後の時点では、共謀罪の審議について、大きな動きがない。今週号の共謀罪をめぐる足立昌勝氏と板橋功氏による討論でも、審議が尽くされていないという点では一致している。権力批判を厭わない『週刊金曜日』に関わる人たちすべてを脅かすこの法案に、最後まで反対する。

 種子法廃止、介護保険法改定、労働基準法改定など、“悪法国会極まれり”の感のある今国会。だが、毎年この時期に発表される「骨太方針」にも驚いた。私は元参議院議員の峰崎直樹氏のメールマガジンで知ったが、今週号で、「経済私考」の鷲尾香一氏が鋭い指摘をしている。“目くらまし”がほどこされていることだ。財政健全化が厳格化されたようにみえて、実は安易な達成目標が格上げされただけという次第だ。専門家による分析がなければ「なるほど」とやり過ごしてしまう。

 安倍政権の一つの特徴がこの騙しのテクニックではないか。それが当たり前のようになっていることがおそろしい。

男の呪いと安倍首相

「もりかけ」問題や、共謀罪など重要な政治課題が審議されているなか、どうして今週号の本誌は“男”の呪いを取り上げるの? と思われる読者の方もいらっしゃるかもしれない。私には、いまの国会の状況が、まさにこの“男”の呪いが災いしているように思えてならない。

 すべての権力を持っているように見えて、実は“裸の王様”の安倍晋三首相に、「おかしいよ」ともの申す人が、どうして現れないのか。安冨歩さんが使う“立場主義”の概念が、私にはわかりやすい。もちろんこれは、自分の感情や考えを抑圧する“女性”にもあてはまるのだろう。

 それにしても安倍さんの空虚な答弁は凄いとしかいいようがない。参院法務委員会の共謀罪の審議中、答弁しようと挙手をする金田勝年法相の肩を安倍さんがつかんで阻止したときは驚愕した。左のお隣さんからも止めが入り、金田法相が気の毒に思えた。

 自分たちが作り出した呪いは、自分たちで解くしかない。こたえはシンプルだ。

朝鮮半島有事

 どうして最近、物事は安倍政権に都合がいい展開になってしまうのだろう、と言ってみる。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がまた弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域に落下したというニュースが入った。政府は、これを口実に、最大の危険である原発の再稼働は進める一方で、“朝鮮半島有事”を煽る。

 いや、と思い直す。これまでの政権も“朝鮮半島有事”を巧みに利用してきた。結局、大手メディアが加担して、政権にとって都合の悪い部分を落とし、都合のいい部分を強調しているだけだろう。冷静に考える余地を市民に与えないことも、戦略の一つだ。

 専門家と称する人が、現地に精通していたら決して口にするはずがないことを、事実であるかのように語る。テレビは言った者勝ち、雑誌は書いた者勝ち。反論が出ないことを知っているからだ――最近話をした在日の研究者が嘆いていた。そして、肩身の狭い思いをしている在日の人たちをさらに追い込む政策を、安倍政権は打つ。悪質だ。

未来への責任

 最近、衝撃を受けたニュース。愛知県の女子高校生が、自分の産んだ娘の遺体をバッグに入れ、警察署に出頭したというものだ。警察は彼女を「保護」ではなく「逮捕」した。

 出頭という行動に出る前に、彼女の頭の中にはいろんな考えが浮かんだことと思う。だが、16歳の少女は、(おそらくその迷いを振り払い)決断し、行動した。たとえ少女に何があったにせよ、そのことに心を揺さぶられる。

 共謀罪法案はいま、衆院を通過し、参院に送られた。19日、衆院法務委員会で強行採決が行なわれた直後、国会前を通りかかったが、たくさんの人たちが詰めかけ、怒りの声を上げていた。なかには読者会のTさんも。「連日国会に来ている」という。市民や野党議員らによる抗議のスピーチは、政府のしどろもどろの答弁に比べ、なんと理路整然として力強いことか。

 詐術に近いやり方で無理筋を通そうとする政府に、改めてノーを突きつけたい。どんな状況下でも、自分の、自分たちの未来への責任を果たしたい。

憂いなく歌いたい

 原民喜・林光作詞、林光作曲の「新 原爆小景」。その楽譜を最初見たときは、「難しすぎる」と感じた。声に出してはみたが、やはり音がとれない。だが、飯村孝夫先生による“魔法の指導”で全体を通すと、曲の素晴らしさに圧倒されて涙が出て困った。

「新 原爆小景」の楽譜は未出版だが、林光事務所のご好意で歌うことができるという。だが、今年はいつにはなくピリピリ。著作権法違反も対象とされている共謀罪法案が国会で審議されているからだ。成立すれば、一般市民といえども警察の判断一つ、ささいなミスで適用されかねない。

 私たちが歌うのは「君が代」処分をめぐる裁判を支援する「コンサート・自由な風の歌12」。都内・セシオン杉並で7月23日(日)の予定だ。その日までに法案を廃案にして、憂いなく「日本国憲法・前文」「九条」など歌いたい。

辺野古を訪れた

 護岸工事が強行されている沖縄・辺野古を訪れた。当日5月4日は連休中とあって、工事がストップしていたものの、テント村では4764日目の座り込みが続いていた。

 鈍い音が時折ズドーンとあたりに響く。米軍基地内の廃弾処理か?「日本の休みは関係ないので、朝から実弾演習をしています」とテント村の方が教えてくれた。警戒船が出ていたものの海はのどか。太陽に灼かれながら美しい砂浜でしばらく遊んだ。

 前日は那覇ハーリーで、おめあてのチームの応援で声を張り上げた。昔ながらの爬龍船を漕いで速さを競う行事だ。この時期、各地で開かれる。辺野古は先月28日だった。『琉球新報』によると「米軍や沖縄防衛局も出場して和やかな雰囲気」だったようだが、「今年が最後のハーリーになるかもしれない」とある。ハーリー会場がブロックの製作および仮置きをする作業ヤードにあたるからだ。そうはさせまいとする闘いがつづく。

 なお、投書欄は投稿が少なめなので、当分の間2頁とします。

憲法21条を体現

 少し汗ばむ季節になった。肌寒いころからの私の日課は湯船で内山宙さんの『未来ダイアリー』を眺めること。別に仕事先に義理立てしているわけでなく、末尾の現行憲法と自民党憲法改正草案の対照表が使い勝手がいいのだ。

 21条の「集会・結社・表現の自由」に目がとまる。私なんぞ小賢しく「表現の自由」ばかりがついつい口をついて出るが、集会・結社の自由と並び立つと立体感というか奥行きが出てくる。「集会・結社の自由」は、共謀罪の新設が審議されている今だからこそ、その意味をかみしめる。

 最近感動した集会は東京都内で開かれた「2・19総がかり行動――格差・貧困にノー!! みんなが尊重される社会を!」だ。(参加できなかったので後でユーチューブで見たのだが)教育学者の本田由紀さんが腹の底からわき起こる怒りを全身で表し、文字通り、吠えていた。ちょっと涙が出るくらい、真剣で、まっとうで、堂々としていた。21条をかっこよく体現している。その場にいなかったのが実に残念だった。

アジアの一員として

 通勤途中、近くにある保育園の子どもたちのお散歩にでくわした。天気の良い日はあちこちで子どもたちの姿をみかける。そういえば4月になってからは初めてだ。手をつなぎ、なんだか楽しそう。新しいクラスのお友達や先生にようやく馴れてきたのかな。

 ほんわか気分で会社にくると、米国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係が緊迫しているということで緊張が走る。外部のライターさんと逢っても話題はきな臭い話ばかり。在日米軍基地の近隣に住んでいる人から「湾岸戦争の時を思い出した」とか、国内の××が危ないとか。

 今週号、ジャーナリストの田岡俊次氏は、米国による「先制攻撃は困難」「威嚇の域を出ない」とみている。ひとまずほっとする。が、日本はなぜ狙われる? 日米安全保障条約に由来するわけだ。たとえば日本がアジアの一員としてできることはないのだろうかと考える。周りを振り回すことがお好きのトランプ大統領に追随して、自らを危険に晒す。今後もそれでいいのだろうか。

国鉄民営化30年

 打ち合わせから戻ると、シリアのアサド政権軍の基地を米国が攻撃したというニュースが飛び込んできた。米国・共和党のなかにも異論はあるようだ。“オルタナ・ファクト”を唱えるトランプ大統領だが、今回はどんな事実にもとづき行動を起こしたのだろう。

 日本では、先のイラク戦争の検証もすんでいない。情報公開訴訟が一昨年に提起され、次の弁論が6月13日、東京地裁で予定されている。

 今週の特集は国鉄の分割民営化からの30年を検証した。

 国労といえば、昨年末に東京南部読者会で講演された福田玲三さんを思い出さずにはいられない。1949年から国労に在籍され、メーデー事件、松川事件、三鷹事件などの裁判にも関わられた。戦後労働運動の生き字引のような方だ。

 いずれも権力によるでっちあげだが、松川事件を共に闘った友人が晩年口にしたという「日米帝国主義と闘って勝ったんだからなあ」という言葉が印象的だった。それにしても、労働者はどうしていつも理不尽な闘いを強いられるのだろう。