編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

議論より救援

 台風15号の影響で被災された多くの皆様にお見舞いを申し上げます。東京電力の発表によるといまだ6万4800軒が停電しているという。自然災害の怖さをまたしても見せつけられた。エアコンが使えず熱中症で亡くなられた方もいた。

 守れる命を守ることに政府や自治体は全力を挙げてほしい。私どももメディアに関わる者として、被害の状況にもっと敏感であるべきだったと申し訳なく思う。

 この事態に及んでも豪雨災害への対策は迅速かつ適切だったと会見する菅義偉官房長官には唖然とするばかりだ。上西充子法政大学教授は、「豪雨」といいきっているところが、強風による被害が出た今回の台風をずらした「ご飯論法」ではないか、とツイッターで見立てを述べていらした。

 いずれにしても政府は組閣を延ばして対策にあたるべきだった。新聞の「首相動静」をみても危機感はない。安倍晋三首相が必要性を説く緊急事態条項に説得力がないことがまたしても実証されたわけだ。としてもまずは議論より救援だ。

日韓関係

「こういうズルいのがいちばん許せんさ」

 週末、実家に帰って87歳の母と会話をしていて驚いた。韓国の曺国法務大臣(その時は候補者)の子どもの有名大学への不正入学疑惑を罵る言葉を聞いたからだ。先週号の「金曜日から」で渡辺が言っていたのはこういうことだったのか、と納得。

 11時間に及ぶ記者との質疑などすっとんで、追及を逃れて逃げ回る日本の与党政治家と重ねているようにも思える。どうして韓国の一閣僚のことばかりテレビのワイドショーは騒ぎ立てるのか。消費税増税前の混乱や、日露首脳会談の“成果”を吟味することも大切だと思うのだけど。

 家に戻り、韓国のBTS、SEVENTEENらがお気に入りの高校3年の子どもに、その界隈で今回の日韓関係悪化がどう受け止められているかきいた。

「ここしばらくは韓国に行けないね、とか話が出たけど」。ふーん、静観か。ちょっと寂しいけど。あ、でも受験が待ってる君たちが行けるわけないよね、とイヤミが口をついて出そうになるのを私は抑えた。

まだまだ足りない

「竹島も本当に交渉で返ってくるんですかね?戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」。丸山穂高議員のツイッター(8月31日)は呆れるばかりだ。”戦争も辞さない”という同様の過去の発言は、議員辞職を促す「糾弾決議」が衆院全会一致で出されたはずだ。その主張をこのタイミングで繰り返す議員の目論見は想像さえしたくない。強い批判はなされているが、韓国ヘイトは過熱するばかり。『週刊ポスト』の特集記事はやはり一線を越えている。ただ、これまでの同誌の論調とどこが違うのか。

「徴用工」問題について本誌の解説がほしいと多数の読者から要望を戴いていた。今週号でそれに応える企画を組んだが、まだまだ足りない。次週も日韓問題に取り組む。本誌8月2日号のボーダーツーリズムの特集に「常に他者と接触する地域は、ナショナリズムに傾斜したときでさえ、他者を包摂する必要性を忘れない」とある。彼・彼女らの怒りと困惑を今回の騒動中に聞いたが、安倍政権はどう応えるのだろう。

本意ではない印象

 今週号でれいわ新選組の参議院議員、舩後靖彦さんの初登院について記事化した。この記事とは直接関係はないが、舩後さんについてひとつだけ確認したい。

 8月14日放送のTBSラジオ「荻上チキSession-22」で「この6年間の議員生活に向けての抱負や課題」を問われた際、不用意な発言をしてしまったと、ご自身のフェイスブック(8月20日)で説明をしていることだ。

《「重度障害者には生産性がない」という考えが生まれた原因について(中略)まず戦前から戦後まで行われてきた優生思想の問題やその名残を第一に要因としてあげるべきであったのに、自分が理解していない、「戦後教育の影響」について発言する事になってしまったことで、私の本意ではない印象を与えてしまうことになっ》たことを《心苦しく思って》いるとしている。

 放送を聞き、疑問を抱かれた方もいると思うが、私は納得した。もう一人の議員の木村英子さんは、ご本人に登場いただくため時間調整をしているところだ。

理不尽なカネ

 休み明けの校了日、編集部はざわついている。明日までに校了しなければいけない未入稿の原稿が20頁以上あるから、自ずと緊張する。

 夕方4時、やっと手が空き、大机でひとり昼食。弁当を広げて新聞に目を通す。沖縄振興一括交付金が3年連続で減額されたため、県内のインフラ整備など大幅な遅れが生じているという(『琉球新報』8月17日付)。その影響で、県が主体となる橋梁等老朽化対策の進捗率は58%と低迷。「えっ」と驚く。父の新盆のために帰った山梨で見た、中部横断自動車道に関する記事を思い出したからだ。

「県の強い働きかけで7月1日、総務省はそれまでの(県負担の)164億円を1億円へ減額すると発表した」(『山梨新報』8月16日付)。この2月に就任した長崎幸太郎知事(自民党)の選挙公約の一つだったようだ。トンネルと橋梁がたくさんあると交付税を割り増す制度も創設されたとある。

 8月は各省庁が予算を要求する時期だ。選挙もあったし、理不尽なカネの使われ方に目をこらしたい。

けっして忘れまい

 きょうは8月6日。広島に原爆が投下された74年前のこの朝を思い、静かに手を合わせる。ちりちりと太陽は照りつけ、気温はぐんぐんあがる。今日も東京は暑い1日になりそうだ。

 この1週間、敗戦特集の追い込みのなか、大きな動きがつづいた。8月1日、臨時国会が開会。2日、日韓関係が悪化する中で、韓国のホワイト国除外を閣議決定。3日、始まったばかりのあいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」が展示中止に。

「表現の~」については、今週号で経過を報告しているが、次号できちんとした検証を予定している。何よりも、テロ予告という卑劣な手段で美術展を中止させたその行為と、その呼び水になった河村たかし名古屋市長らの憲法21条を蔑ろにした発言に、強く抗議をしたい。

 展示室にあった「表現の不自由をめぐる年表」に《2019・8 あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」中止事件》の1行が加えられたことを、けっして忘れまい。

改めてほしい

 8月1日の臨時国会でお二人の新人議員を迎えるにあたっての、国会の改修が進む。大型車椅子を使用されている舩後靖彦さんと木村英子さんのことだ。

 この号が出るころは、二人が晴れて初登院されたというニュースが、メディアで流れていることを願う。ここにきて、就労中の重度障がい者にヘルパー派遣が認められないという問題で躓いているからだ。これまでも繰り返し指摘されてきた制度上の矛盾ではないか。これを契機に制度自体を改めてほしい。

 先週の本欄で舩後さんらの応援演説をした海老原宏美さんに言及したが、海老原さんはALSではなく、脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者さんだ。お詫びして訂正する。一昨年の本誌記念講演会で最後にスピーチされた、あの方だ。

 海老原さんは最近『わたしが障害者じゃなくなる日』(旬報社)を出された。なんといっても韓国での「サバイバルホームステイ」の話が(前作にも書かれていたが)、破天荒で凄い! ルビつきなので、小学生の姪にプレゼントしようと思う。

良識の府

 れいわ新選組の舩後靖彦さんが当選確実を決めた時、開票センターでは割れんばかりの拍手が起こった。私もその場に居合わせた。舩後さんは人工呼吸器を装着したALSの患者さん。立候補の決意の説明のなか、「命がけですから」という言葉が出た。

 その前日、応援演説を務めた同じALSの海老原宏美さんも「命がけ」という言葉を使っていた。海老原さんは〈日本はALSの患者が人工呼吸器を着けて生きていける世界でも恵まれた国。その状況を、自分たちは時に社会の批判を浴びながら、命がけで勝ち取ってきた〉と話された。

 参院では3年前の厚労委員会で、ALSの岡部宏生さんが参考人として口文字で発言された。「コミュニケーションに時間がかかり、議論が深まらない」(『朝日新聞』)と衆院では見送られたが、参院の提案で実現した経緯がある。

 今回当選した、やはり重度の障がいをもつ木村英子さんと舩後さんは、知れば知るほど「良識の府」に相応しい議員だ。その主張にじっくり耳を傾けたい。

あかりちゃん

 この週末、参院選の不在者投票に行ってきた。総務省の調べでは今回の期日前投票は3年前とほぼ同ペースという。これから終盤戦がどうなるか。

 最近は全国にいる各候補者の演説をツイッターで比較して見られるのがいい。私は応援演説に注目。大阪では岡野八代さん、香山リカさんの真摯な言葉に惹きつけられた。小林節さん、島田雅彦さんの熱い支持も驚きだった。

 一方、自民の杉田水脈議員が応援演説に立ったのは私のよく知るアノ議員だった。さらに三ツ矢憲生議員が三重選挙区の女性候補者の応援演説で「(候補者の)一番大きな功績は子どもをつくったこと」と語ったというのは報道の通り。もうこの手の発言には驚かない。ただ、こういう議員には政治の場から退場いただきたいと願うばかりだ。

 米国ではFIFA女子W杯で優勝した同国チームの凱旋パレードで、「多様性」を訴えるミーガン・ラピーノー選手のスピーチが話題になった。その映像を使った@oshieteakariの投票呼びかけは秀逸だ。

参院選

 今も多くの人が繰り返しその映像を見ている6月10日参院決算委員会での小池晃議員(共産党)と安倍晋三首相のやりとり。年金の財源をめぐり、小池議員から裏付けのある代替案が示されたにもかかわらず、安倍首相は切って捨てたばかりか、「ちなみに民主党政権下の3年間は(経済成長が)1回もプラスになっていない」とトンチンカンな付け足しをし、「民主党じゃないですから、私は」「無意味な反論をしないでくださいよ」と小池議員からいなされていた。

 自民党が下野した時代の「悪夢の民主党」が安倍首相はお気に入り。参院選のまっただ中、今度は立憲民主党の枝野幸男代表のことを「民主党の枝野さん」と故意に言い間違いをして聴衆から笑いをとっているという。党名が「ころころ変わっ」ていることを揶揄しているようだ。その幼児性、驚くばかりではないか。寒気がする。参院選は政権交代選挙ではないが、この政権にレッドカードを突きつけるのは私たちしかいないことを肝に銘じたい。