編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

知恵を広める

「逃亡犯条例」改正案をめぐる、香港の立て続けのデモには目を奪われた。本誌今週号で報告している。人々の抗議は改正手続きの無期限延期を引き出したが、行政長官の退任を求めるステージに入った。

〈自由は自分たちで守っていく〉という気概、おおいに見倣いたい。東京・渋谷でも、香港の人々を支援する集会が行なわれ、道行く若者、外国人も参加して、これまでにない直接行動になったようだ。

 先週末には「年金2000万円不足問題」に関連したデモも東京・日比谷で行なわれた。こちらも誌面で取り上げたが、このデモ、ホリエモンがツイッターでくさしていた。批判の意味は不明だ。

 国会パブリックビューイング代表の上西充子さんの話題の書『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)を開く。「若者の思考の枠組みを縛」る呪いの言葉に、〈デモなんかで何が変わるの?〉がある。「デモにも行かずに何かが変えられると思うの?」と切り返せるよって言う。そういう知恵を広めること、日本では重要だと思う。

身が引き締まる

 厚生年金受給世帯で平均月5万5000円、30年間で2000万円収入が不足するという金融審議会市場WG報告書の数字が波紋をよんでいる。そんなに貯金できないよ、と個人的にはため息。

 6月10日、テレビ中継された参院決算委員会総括質疑でのやりとりだ。小池晃議員(共産)が問いただすと、背広のボタンをかけながら安倍晋三首相が答弁に立つ。首相:「……平均値を果たして出すことに意味があるのかどうかということも議論しなければいけないわけでございまして……」。苦し紛れに数字自体を陳腐化する。小池議員:「平均の数字を出してきたのは政府ですよ。……だからあなたたちの議論に基づいて私は指摘をしているんですよ」。呆れて問い返す小池議員。その姿を隣席から見上げ、同意するかのように小さく頷いているのは、あの西田昌司議員(自民)じゃないか。

 小池議員によると不足分は教養娯楽費と交際費。平均値で前者は月2万5000円。本誌の毎月の購読料は……。身が引き締まる。

学ぶことばかり

 今週号36頁で登場いただいた駿河敬次郎医師からお電話をいただいたのは連休明けの校了日だった。

「今日、×時から出かけなければいけないので、いらっしゃるのは×時にお願いしたい」。

 駿河先生には休み前、棒ゲラで先生の発言部分の確認をお願いしていた。10連休明けだったので編集部を留守にするのに躊躇した。筆者の村上朝子さんにお任せするつもりだったが、先生の優しいお声を直接聞くと、どうにも参上しないわけにはいかなくなった。

 村上さんと、先生を紹介してくださった永井元さんとドキドキしながら診療所にうかがうと、先生が一つずつ発言について確認をされていく。

〈この表現で、読者に正しく伝わるだろうか、こっちのほうが適切ではないだろうか〉

 丁寧に問うていく。私たちも意見を言う。作業が終わって追加で先生の写真を撮らせて貰う。〈携帯でとれますからね〉。見ると先生の携帯電話がガラケーからスマホに変わっていた。駿河医師は98歳。今回の取材、本当に学ぶことばかりだった。

トランプ米大統領の来日

「先程アメリカのトランプ大統領と電話で会談しました。私たちの思いは一致しました」。お笑い芸人・サンドウィッチマンの伊達さんのギャグではないけれど、トランプ米大統領の来日は、安倍晋三首相が参院選挙前に内閣支持率のアップを図るため、自身で企画した興行のようだった。

 NHKは2人の映像をたっぷりと流した。改元の政治利用がうまくいって気を良くしているのかもしれないが、トランプさんの友情出演料は高くつきそう。大相撲の特設席での観戦や炉端焼きのごちそうくらいではすむまい。米国が求める貿易交渉での譲歩など、われわれ自身がいずれたっぷりと支払うことになるのだろう。詳しくは参院選後?

 大統領が羽田空港に到着した日の午後、国会周辺に飾られた日の丸と星条旗が風に揺れるのを眺めながら、「示そう辺野古NO!の民意を」全国総行動に参加した。暑い、暑い日だった。NHKが公共放送というなら、安倍首相の取り巻きではない「一般の人」のこういう姿を、流してもらいたいものだ。

政治家と理想

 山本太郎議員の取材は4月26日14時スタート。ところが当日の午前中、時間を前倒しにしてほしいとの連絡があった。小沢一郎代表との面談日程が急遽入ったとのこと。「エエッ」と私は焦ったが、聞き手の藤田正さんはぜ~んぜんうろたえるそぶりなし。ベテランだから。そこら辺もちゃんと見越して準備をされているというわけ。

 小沢代表との面談は自由党に離党届を出すためだった。でも党自体「解党した」ので届の行き場がなくなったという。ともあれ新党「れいわ新選組」が始動して、山本さんは全国行脚中。テレビ番組のコメンテーターが〈できないことを公言してる〉と山本さんを罵っていた。政治家が理想を語って何が悪いんよ?

 最近発表された共同通信社による世論調査では、安倍内閣の支持率が依然50%を超えていた。絶望的な気分になる。一方、新党には5月20日時点で1億1215万円の寄附金が集まったことを知る。「いけるかも」と気を取り直す。私、ちょっと素直に反応しすぎかも。

さらに読みやすく

 先週号から目次を2頁にしました。詰め込みすぎとのご批判をいただくことが多いので、読みやすさ、見やすさを優先して写真も入れてゆったりと組んでみました。昨秋から本誌の特集は文字を大きくしましたが、一般記事はまだ変更をしておりません。一般記事も、文字の大きさや頁当たりの分量など変更をかけていく予定です。

 記事の中身についても「読みにくい」というご批判をいただきました。硬いテーマは、インタビュアーを立てるなどして話言葉で整理し直したり、グラフや表を入れるなどして理解を補えるよう工夫を心がけてはおります。しかし、まだまだ努力が足りないようです。読者の方からのご指摘は社内で共有しておりますので、具体的な解決案を誌面で示していくつもりです。

 今週号の表紙となっている弁護士の亀石倫子さんは、小誌とは人権課題について考え方が違う部分もありますが、これまでの活動に注目して登場いただきました。今後も、是々非々で議論していきたいと思います。

改元の政治利用

 今週号は合併号明けで10連休を挟み、しかも作業日が1日少ない。そんななかで迎えた今日の校了日。編集部はいつにもまして慌ただしい。独自の印刷所をもっているわけではなく、世界は動いているのにその動きをほとんど反映できないもどかしさを抱く。

 10連休が終わってみると、改元の政治利用ばかりが印象に残った。メディアはそれを批判するどころか、便乗するだけでうんざり。そんななか、『沖縄タイムス』が5月1日~3日付けで載せた批判的論考に目がとまった。目取真俊、新川明、川満信一各氏による「代替わりを問う 天皇制と沖縄」。掘り下げるべき論点が明快で、メディアに関わるものとして身が引き締まる思いがした。

 この夏の参院選挙は、衆参同時選挙も囁かれている。選挙に向けたこの間の自民党による雰囲気づくりは、一定程度成功したのかもしれない。後半国会の野党の論戦とメディアの政権チェックが重要になる。本誌もそのことを肝に銘じ、今日からの誌面作りにあたりたい。

17歳最後の贈り物

 衆院沖縄3区補選で屋良朝博さんが島尻安伊子さんを破り初当選を果たした。本誌でも執筆いただいたことがある屋良さん。その抜群の調査能力に期待したい。同じく大阪12区では、共産党を離れて宮本岳志さんが捨て身の出馬をしたが、及ばずだった。結果を受けて挨拶した宮本さんのすがすがしいこと。ボランティアが全国から1000人集まったというのも頷ける。これは終わりではなく、何かの始まりに違いない。宮本さんの1日も早い国政復帰を願う。

 投票日、外に出がけに手紙入れから入場券をとったら、17歳の子どもあてにも来ている。「えーっ、ホント?」。驚きつつも本人はまんざらでもない様子。予定がなかったはずなのに意中の人はすでにあって、迷いなく投票をした。

 子どもの誕生日は翌日。選管に確認したが、民法上は1日前に誕生日を迎えることになっているから、なのですね。「17歳最後の贈り物」となったが、本人は何と理解しているのだろう。学校でいい加減なことを言ってなきゃいいけど。

統一地方選

 週末、実家に戻った。統一地方選の真っ最中なのに選挙カーを見かけない。実家のある中心街は住んでいる人も少なく、効率が悪いせいか。周りにある建物は取り壊され、高齢の住人は次々といなくなってしまった。

 実家は父がこの春亡くなり母だけとなってしまった。これまでは期日前投票であれば近くの公民館が利用できるということで、杖をつきながら天気のいい日に2人で投票に出かけたものだった。

 だが、母に聞くと今回の選挙には行かなかったという。選挙公約がみあたらず、「だれにいれたらいいか、わからんさ」という。新聞を一紙に絞ったが、公約がないとは腑に落ちない。「チラシが入ってくるから見てね」と奨める。

 東京に戻ったら、知り合いの個人店主から〈妻が区議会議員に立つことになったのでよろしく〉との手紙が届いていた。消費税率引き上げについて意見を聞こうと思っていたが、忙しくてそれどころではないだろう。子育て支援や教育の充実? 政策はなかなかよさそうだ。

新しくスタート

 昨日の雨があがり、今朝は気持ちのよい青空が覗く。地域の学校の前に「入学式」の看板が立つ。通勤途上、すれ違う中学生の表情が眩しい。

 弊誌は4月から新編集委員を迎えたが、読者の方々から早速、激励や感想を戴いた。「崔善愛さんには詩作の内容も含め、全面的に賛同いたします」(埼玉県のUさん)、「想田さんのドキュメンタリー映画の大ファンです。……SNSでの過激な発言とは正反対の実像、ユーモラスで暖かい人間性、にも惹かれています」(大阪府Nさん)……。

 前編集委員の石坂啓さんの原画プレゼントに際しては、多数の感想やご意見も頂戴している。石坂さんはもちろんのこと、全社員で共有させていただく。弊誌変革のヒントが詰まっているように思う。

 社内では有休取得希望日を書き込む用紙が配られた。労働基準法改正に伴い、年10日以上の有休のある労働者に年5日時季指定で取得させることが、企業に義務づけられたからだ。まずは自分の足下から。やばっ、提出期限、過ぎてしまった。