編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

危ない、危ない

 6月18日、大阪北部を震源とする地震で被災された皆様にお見舞い申し上げます。まだ余震も続いているとのこと。1日も早く元の生活に戻れることを祈念しています。

 梅雨の合間の強い日差しを浴びながら、自転車で会社に向かう。散歩する保育園の子どもたちが、横を通り過ぎていく。がやがや楽しそう。あれ、白い小さな靴がポツンと落ちている。振り返って集団を見ると、先生に手をひかれ最後を行く子どもの片足が……。慌てて靴を拾い「せんせ~い」と呼び止める。

 梅雨時は道路が滑る。後ろを自転車で走っていた女性が「きゃっ」と声を上げて自転車ごと転倒。前籠に入っていた上着だの本だのが道路に散らばる。前を走っていた男性と一緒に拾い上げる。擦り傷くらいで大事には至らなかったようだ。「危ない、危ない」

 信号の加減で川沿いの自転車歩行者道路を珍しく走行。緑が生い茂って久々に心が弾む。向かいからは誰も来ない。気持ちよく走っていると、うわっ。道の真ん中にうねうね動く蛇!

闘うメディア

 注目の米朝首脳会談。一連の流れの中で日本外交の問題点も浮き彫りになった。だが、大手メディアはなかなか報道しない。政府と大手メディアのリードする方向にとかく世論は流れて行きがち。では本誌の役割は? そんなふうに思い悩んでいると、時にガツンとされる出来事にあう。

 この週末、韓国ドキュメンタリー映画『共犯者たち』の自主上映会とシンポが連日行なわれた(本誌6月1日号で監督インタビューを掲載)。東京・なかのZEROホールでの上映会では507人の定員に、それを越える大勢の観客が詰めかけた。

 場内は騒然。結局、立ち見は許されず、払い戻しを主催者が丁重にお願いした。文句も聞かれたが、「これは画期的なことですよ、この映画にこれだけの人が集まるというのは」との一言が耳にとまった。

 映画はまさに韓国の権力とメディアとの闘いを描くもの。その闘うメディアを韓国市民が支援する。そして、そのドキュメンタリー東京上映会にこれだけの人が集まる――その事実に勇気づけられた。

安倍首相の辞め時

「アベノミクスに頑張ってもらわんと困るさ」。なんて一時は言っていた私の母。自分におこぼれがこないとわかったからか(?)昭恵さんと仲良く頻繁に外遊を重ねる安倍首相の姿に激しく怒りをぶつけるようになった。

 いまはそのウソつきぶりに「テレビで顔を見るのもイヤ」。トホホ。でも、いまも安倍さんの支持者は確実におられるようだ。

 財務省が4日に発表した森友学園関連の調査報告書で、記録廃棄が国会での首相答弁「私や妻が関係していたなら国会議員も辞める」の後だったことが明らかになった。とすれば、安倍首相の辞め時だ。周囲が身を挺して首相を守ろうとしたことに責任を感じて辞任を決意したとすれば筋が通る。

 ただ首相自身、自分がこれほどに守られている理由もわかっている。最高の権力を持つ身だからだ。その権力を手放したときに何が起こるのか。安倍首相が続投を求めるのは、本当に悲願の“自主憲法”制定にあるのか。改憲・降板後も安倍首相が自らを安泰と考えているとすれば、それは怖すぎる。

三つの映像

 国会、アメフト以外で驚いた三つの映像。

「北朝鮮が愚かで向こう見ずな行動をとるなら、韓国と日本は準備ができているだけでなく、不幸な状況が強いられた時に、作戦中、米国に関わる負担や財政的負担のかなりの部分を喜んで引き受けるだろう」(5月25日、トランプ大統領)。

 いつどこでそんなことが決まったのか、首をかしげるばかり。

「今上陛下は、憲法第9条を改正しようとは思ってらっしゃらないというふうに認識いたしております。今上陛下が危惧されていることにつきましては、されない方がよろしかろうと、そういうふうに思っております」(5月25日、長期勾留を解かれた籠池泰典氏)。

 重要な点ですが、安倍首相と意見がわかれるのですか。ひょっとして以前から?

「今度は17番ワグネリアンが先頭だ。ワグネリアン、福永祐一ゴール! 遂にダービー制覇です」(5月26日、日本ダービーで)。

 馬券は買いませんが、かっこよかった。クールな福永騎手が涙。彼をよく知る私の仕事上の大先輩Iさんも涙、涙。

「働き方改革」と犠牲者

「うそあべあそう、うそあべあそう」。秘伝の回文(!)を思わず口にする。

 愛媛県が参院予算委員会に出してきた記録で、安倍晋三首相の衆院予算委員会での答弁に虚偽の疑いが出てきた。嘘で嘘を塗り固めても、いつかボロが出てくる。といっても麻生太郎財務大臣の「セクハラ罪はない」に象徴されるように違法行為と認定されなければ責任回避をする方々だ。過去の成功体験から、印象操作で逃げ切れると踏んでいるのだろう。

 愛媛県の中村時広知事、よくは存じませんが、ふつうの良心と公正な感覚をもっていれば、ここは争うところだろう。野党には国会の場で安倍首相を詰めてもらいたい。

 今週号の政治コラムでは、佐藤甲一さんが野党にエールをこめて批判を展開。的確だ。

 政府は姑息に「働き方改革」を進めてる場合じゃない。自民と公明、維新、希望が修正で大筋合意という。データの嘘がボロボロ出ているにもかかわらず。こちらはいのちと安全に関わる話だ。これ以上犠牲者を出してどうする?

安倍外交の結末

 地球30・21周にあたる「地球儀を俯瞰する」安倍外交が世界の平和と繁栄に貢献したかどうか、いよいよ結果があらわになりつつある。ついでに“国益”の追求が実現しているかどうかも。

 首相官邸HPの「訪問先マップ」の勇ましさといったら、驚くばかりだ。ときどき地球を取り巻く宇宙の星がキラリと瞬いたり。ここにはないが、GW中にイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相と靴の形をした容器に入ったチョコレートデザートをいただく安倍夫妻の姿に唖然。靴のデザートもさることながら、よりによってこの時期に、イスラエル? 米国のイラン核合意離脱は南北緊張緩和への努力に水を差した。

 おまけに米国は、「日本を含めたアジア、欧州、中東の同盟国など」に対イラン制裁強化への同調を呼びかけたというではないか。「こんどこそ日本は米国・イスラエルとイランの戦争に巻き込まれる」と元外交官の天木直人氏は心配する。「××な大将、敵より怖い」。このフレーズを頻発してしまう。

問われているのは

 今週号が出るころには、中韓日の首脳会談も終わっている。事態は刻々と変化しているうえに、黄金週間の休みもあって、正直、誌面を組むのが難しい時期だった。だが、物事の本質は変わらない。

 安倍首相が圧力一辺倒で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係改善のため、ほとんどなんの方策も講じてこなかったということ。そして何よりも、近隣アジア諸国との関係を軽んじ、対米関係を最優先してきたこと。安倍外交失敗のツケを払う時期が来たということだ。

 李克強首相の来日前に習近平国家主席と安倍首相は初の電話会談を行なった。「まさに日中関係の改善が進んでいるということ」という首相官邸HPのコメントを見てのけぞった。中国や北朝鮮に対する国内感情をとことん悪化させ、それを自らの政策の追い風としてきた安倍首相、関係改善を志向しているわけがない。成り行きでしょうが。もちろん結果がよければそれでいい。だが、問われているのは戦争回避への意思、その一点ではないか。

今がチャンス

 福田財務事務次官のセクハラ発言をめぐる政府の対応は、さすがに驚いた。

 次から次へトンデモ発言が湧いて出てくるではないか。最近では、女性記者が録音し、『週刊新潮』に持ち込んだことを、「ある意味犯罪」と下村博文元文部科学相が発言した(後に撤回)。正論を吐いたつもりだろうが、日常的に女性記者がどういう状況下で仕事をしているかを、想像したことがあるだろうか。

 レイプ事件をもみ消した現政権だから、何を言っても無駄、と悲観的になってしまうが、声を上げた人を孤立させてはいけないし、今が世論に訴えるチャンスだ。

 米軍による性暴力が絶えない沖縄の現状についても、この政権がどれほど痛みを共有しているか、19日に開かれた本誌主催のシンポジウム「沖縄は孤立していない」を聞きながら、情けなくなった。

“安倍応援団”の一人、百田尚樹氏に名指しで攻撃をうけた阿部岳『沖縄タイムス』記者が、今週号から政治コラムの執筆陣に加わってくれた。健筆を揮ってくれると思う。

本質を突く

 米英仏によるシリア攻撃のニュースが入る。国会前のデモでは大勢の人たちの怒りが炸裂というニュースも入る。

 本当はこの日、国際メディア・女性文化研究所設立記念シンポジウムに出かけ、あわよくば、デモに参加し、最後はSさんからお誘いがあった読者会に、と考えていた。が、どれも実現せず。

 子どもが高熱でうなされ、おたふくの疑いが濃厚ということだったからだ。複数回罹患した私に感染する心配はない。本人が熱性痙攣を心配していたので、ベッドのそばに椅子をおいて、一晩中様子を見る。

 月曜日には医者に行って治癒証明書をもらい、子どもは登校するはずだったが、なんとおたふくの検査は陰性。そうこうしているうちに自分の体が燃えるように熱くなってくる。こんな展開ってあり?

 熱にうなされていても、イラク日報の隠蔽をめぐる川口創弁護士の記事は明快で、頭にスッと入った。本質を突いている。ああ、でももう限界、ふらふらしながら会社を退散した。

どこを向いているのか

 政府はどこを向いて仕事をしているのか。辺野古新基地の完成後、周辺にある沖縄工業高等専門学校や沖縄電力の送電鉄塔が、航空機の安全離着陸のための高さ制限を越えていることがわかったという。沖電には移設の要請をしているが、「学生と職員計921人が過ごす高専には説明していない」(4月10日付『沖縄タイムス』1面)。

 姑息な対応の違いが意味するところを改めて考える。もっとも大きな危険にさらされるのは誰か? 住民だ。その住民には知らされない。確かなのは、最優先すべきものが住民ではないということだ。

 今週号では、朝鮮半島有事の平和的解決に向けて、関係諸国が動き出しているにもかかわらず、安倍政権が軍事大国化を一辺倒に進めている実態を報告する。

 昨年の4月21日号で後田多敦さんが指摘してくれた「東アジア秩序や社会の破壊者としての日本の誕生」の歴史を思わず重ねてしまう。東京の為政者からは想像もつかない光景がそこからは見えてくる。