編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

北星学園大学が、元『朝日新聞』記者の非常勤講師を雇い止めにする方針だ

編集長後記

 北星学園大学が、元『朝日新聞』記者の非常勤講師を雇い止めにする方針だ。理由として嫌がらせに対応する費用や経営上の問題が挙げられている。かつて取材した和光大学の「オウム真理教」関係者の入学拒否事件を思い出した。

 今回の件を「大学の自治」や学問の自由への侵害などと憲法上の視点から議論をされたりもする。裁判で闘い勝つには国が用意した標準やルールで闘う必要があるが、私たちは根っからそれにつきあう必要はない。まずは素直に手ぶらで考えたい。嫌がらせや脅迫を受けたのは所属先と「私」だ。しかし所属先は被害者の私が職を失うことを当然視する。私にとってはきわめて理不尽な話なのである。

 確かに日本特有の少子化の中で生徒数は減少の一途だ。大学経営は理想だけではやっていけない。しかし大学は職業専門学校ではない。時流に惑わされず長期的な視野で哲学を築く場であると私は思っている。自らが当事者となった社会の病について研究者たちが考えることは恰好の機会ではないのか。 (平井康嗣)