編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ニッポン、がんばれっ! という人たちの善意や好意は、人としての無意識の反射神経ってそんなものだろうと受け止めている。

編集長後記 

 ニッポン、がんばれっ! という人たちの善意や好意は、人としての無意識の反射神経ってそんなものだろうと受け止めている。しかし、それを受けての日本復活だとかいう煽りには違和感を感じる。しつこいようですが。みなさんはどんな日本を復活したいのですか。戻りたいのですか。

 以前取材した新潟県中越地震の旧山古志村のひとびとを思い出す。地震で大きく抉れた山に人々は土を盛り、人工的に山を再生し家を建てて住んだ。これが {復興}。農村部は土地への想いが強い。墓もある。自分の代で土地を捨てる罪の意識は重い。人はともかくどこかへ帰らなければという気持ちがあるようだ。東京の三月一一日。家に帰ろうと黙々と、何時間も歩く会社員たちの何十キロメートルも続く群れ。私には帰るという本能をむきだした動物に見えた。今週号では秋葉原殺傷事件を特集している。私たちが日常生活と呼んでいた時代に加藤被告は秋葉原に向かった。彼はどこに帰ろうとしたのか。彼にとっての「被災」と帰り場所を、ふと思う。
(平井康嗣)