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名ばかり新党の実態が明らかになる“選挙後”への不安感

 天気予報が以前より当たる。技術の進歩か民間企業に負けまいと気象庁が頑張っているのか理由はわからない。一方、外れまくりなのが「政局予報」だ。かつては私も自信があった。議員秘書などの”予報士”から情報を集め分析すれば高確率で当たった。ところが今は、予報士の見通し自体が狂ってしまうのだ。

 次々と生まれる新党についても「想定外」が多かった。与謝野馨氏や舛添要一氏は自民党にとどまるはずだった、平沼赳夫氏は別のメンバーで立ち上げるはずだった、みんなの党の支持率はそれほど上がらないだろう、などなど。予測が外れる理由として、シナリオの書ける、力のある政治家がいなくなったため、とよく言われる。

 確かに、田中角栄氏や中曽根康弘氏が権勢をふるっていたころは、彼らの意向さえ把握できれば、大きく見通しを間違えることはなかった。竹下登氏にもそうした力があった。だが最近は、良きにつけ悪しきにつけ、絶対権力を握る政治家がいない。船頭が何人もいるため、船がどちらに進むのか、だれ一人確固とした見通しを立てられない。

 そのことは事実としても、別の要因もある。議員が、市民・国民の意識を読めなくなっているのだ。「小泉郵政選挙大勝」も「鳩山民主党大勝」も永田町では驚きをもってむかえられた。従来の常識的な票読みからは出てこない数字だったからだ。私の分析は「有権者の1割が既得権破壊に走った」である。
 
 いわゆるロストゼネレーション世代を中心に、「自分たちが貧困で、それを脱却する機会すら奪われているのは、既得権益を手放さない連中がいるからだ」という怨念が高まっている。小泉氏の「自民党をぶっ壊す」や鳩山氏の「政権交代」に投じられた1票には、その怨念がこもっていた。
 
 そうした流れは続いており、今回の参院選では、鳩山政権も同じ穴の狢と見切った票が一定程度、新党に流れるだろう。だが新党は、みんなの党も含めいずれも既得権者の集まりにすぎない。とても「1割」の受け皿になりようはないのだ。“名ばかり新党”の実態に気づいたとき、「1割」の勢力はどこに向かうのか。
 
 どんな結果になるにせよ、選挙後、永田町は政界再編の大きな渦にのまれていくだろう。そして、それは市民の意識はそっちのけにした、「既得権の分配」という枠内で進むはずだ。そのとき、「1割」がどんな「破壊」を目指すのか、ここに大きな不安を感じる(北村肇)