編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

心ある警察官のみなさん、「正義の味方」月光仮面になってください

 刑事物の漫画には、きまって二通りの警察官が登場する。腕力は強いが緻密な捜査は苦手の体力派、線は細いが知恵と推理で犯人を追いつめる理論派。お互い敵対しつつも、どこかで認めあっている。自分にないものを持っているからだけではない。「正義感」という共通の思いでつながっているからだ。

 正義感とは何か。「強きをくじき弱きを助ける」「悪漢をこらしめる」。いつの時代もこれは変わらない。子どもにとって、お巡りさんは「悪者をやっつけてくれる」正義の味方だった。いたずらをすると、母親に「お巡りさんに言いつけちゃうよ」と叱られた。「大きくなったら何になりたい?」と聞かれ、「お巡りさん」と答える子どもは、今でもたくさんいることだろう。

 だが、警察のほうは大きく変わってしまった。目の前で暴行され助けを求めた市民を救わない、一方で、「イラク自衛隊派兵反対」のビラや政党チラシをまいただけで逮捕する、裏金つくりの内部告発があっても知らぬ存ぜずを押し通し、逃げ切れなくなってからようやく一部を認める……。こうしたことを引き起こす警察の体質には、「正義」のかけらもみられない。

 むろん、心身を削って市民のために働いている警察官がいることは確かだ。取材の過程で、頭の下がる思いがする警察官にもたびたび出会った。犯罪の多様化、国際化など、警察にとって厳しい状況であることもわからないではない。しかし、根本的な体質改善に向け、警察当局が組織として努力しているかといえば、首を傾げざるをえない。

 たとえば、窃盗や強盗の捜査より公安事件に力を入れるなどは到底、納得できない。今週号の特集で明らかになったように、「公安警察は予算を確保するために、実態が伴わなくても、依然、左翼団体は危険と主張する」といわれる。さらには、内部告発した警察官を「何とか逮捕するために」尾行までするという。市民の立場として、そんな暇があったらひったくり犯や強盗を捕まえてほしい、と考えるのは当然だろう。

 かつて、特高警察は罪なき人々を逮捕し、拷問にかけ、死に追いやった。その反省から警察は「正義の味方」になることを誓ったはずだ。心ある警察官のみなさん、どうか月光仮面になってください。そして、保身に走るだけの幹部がおかしな言動をしたら、市民のためにこそ彼らと闘ってください。(北村肇)