週刊金曜日 編集後記

1367号

▼ロシア軍は2月24日、ウクライナへの軍事攻撃を開始した。これは独立国家の主権と領土を侵す明白な侵略行為であり、国際法を濫用した許しがたい暴挙である。
 プーチン大統領は一連の蛮行を「特殊作戦」と言い換え、その目的が「自衛」であることを強調し、自身の正当性を主張した。古今東西、いつの時代でも戦争をはじめる側の口実は同じようなものだ。
 さて、対岸の火事ではない日本で、今回の侵略行為に絡み、ツイッターでトレンドにあがった言葉がある。「憲法9条」である。右派や改憲派は今回の混乱に乗じ、「こんなときに9条は何の役にも立たない」「9条があってもロシアや中国の侵攻は防げないので軍事力を強化せよ」との論を張る。
 そもそも9条は他国からの侵略を防ぐためにあるのではなく、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように制定したものである。ただ、こんなときにこそ"役に立つ"ものでもある。ロシアも中国も「戦力不保持」には手も足も出ない。なぜなら日本は武力による行使を放棄しているのだから、相手に「自衛」という攻める口実を与えない。 (尹史承)


▼特集に登場する大学生たちの座談会では、性教育や男女別教育についても話題になった。「中学生の時、女子だけ放課後に残されて『コンドームでこのくらい避妊に失敗しています』と数値を見せられ、『ちゃんとつけてください』と言われる謎の講義があった。それ、男子に言うべきでしょ」と言う蛭田ヤマダ理紗さんの体験にみんな大笑い。でも本当は笑い事ではなく深刻な指摘。私の世代では性教育はないに等しく「性的同意」も教わらなかったが、いまの大学生世代でも大して変わっていないことが判明した。自民党保守派が性教育をバッシングする真意は不明だが、性の自己決定権を誰もが手に入れ、個人が尊重される社会形成のためにも性教育は必須だ。
 私の高校時代は家庭科は女子のみで、その時間、男子は別の教科ではなく体育だったから期末テストでは女子のほうが1教科多かったと言うと「それは不公平ですよね」とズバリ。「誰でも家事ができたほうがいい」「何が得意かは性差じゃなくて個人差」とさらっと言う学生たちが格好いい。頼もしい若い世代の活動に励まされた収録時間だった。(宮本有紀)


▼「このままの予算でいいんですか。介護の9000円賃上げ、さらに国費が4分の1になっているじゃないですか。2桁足りませんよ」「この国会の茶番に抗議します」「反対!」――2月22日の衆院本会議での採決時、投票のために壇上に上がった大石あきこ議員らが訴えた件だ。たしかに介護職の賃金を3%引き上げると岸田文雄首相に胸を張られても......。本誌1月21日号で報じているが、介護職の月収は平均よりも5万9000円も低い。しかも国は今出している補助金を10月からは介護保険料や利用者負担に付け替えて、国の負担は4分の1になるという。
 小会派に質問の時間が与えられないなら、壇上から訴えるしかない。内容も手段も当然に思える。
 自民党の高木毅国会対策委員長は記者団に懲罰動議の提出を検討する考えを示したとのこと。あの「×××高木」さん? 2月18日号で報じた『明日のハナコ』のなかに出てくる「原発はカネになる」発言の高木孝一氏のご子息と藤田正さんが教えてくれた。父子は別人格だが、「奴らを舞台から引きずり降ろして下さい」(藤田)だって。「賛成!」。(小林和子)


▼北京五輪が終わった。開催国の中国よりロシアが目立った大会だった。「平和の祭典」をあざ笑うかの如くウクライナ情勢は緊迫している。ロシアはかつてソチ五輪後にクリミア半島を併合しており、再び「五輪侵攻」が起きるのではと危惧されていた。その後、事態は急速に悪化、侵攻が始まった。
 それにしても、またもや五輪のドーピング問題である。フィギュアスケートの団体戦終了後、メダル授与式が行なわれなかったことで表面化した。理由は出場した選手にドーピングの関与が疑われたからだ。その選手は女子フィギュアの金メダル候補だった。不可解なのは禁止薬物が検出されたのは昨年のロシア選手権後だったこと。事実なら五輪に出場できない。裁定の結果、個人戦にも出場したが、精神的に動揺したのかミスを連発しメダル獲得とはならなかった。特筆すべきはロシアの女子選手は4回転ジャンプを跳べることだ。今後は、女子も男子のように数種類の4回転を競うことになりそうだ。ちなみに、ジャンプを跳べず回れない、ついでに「ダンスはうまく踊れない」私だが「夢想花」なら歌えます。(原口広矢)