週刊金曜日 編集後記

1345号

▼総裁選の報道が増え、自民党の支持率が上がっています。
 朝日新聞社が9月11、12日に実施した全国世論調査(電話)によると、〈政党支持率を見ると、自民は今回、37%(前回8月調査32%)。昨年12月調査の38%に次ぐ水準まで回復し、立憲民主の5%(同6%)との差を広げた〉〈総裁選の動きが自民を押し上げ、立憲を埋没させたとみられる〉(朝日新聞デジタル9月12日23時30分)。
 繰り返し接することで肯定的な印象が強まる「単純接触効果」に加え、ワイドショーがお祭り騒ぎを繰り広げているからでしょう。
 忘れてはならないのは、総裁選の候補者が安倍・菅両政権の大臣や党内実力者だということです。しかも従来の主張を変えるなど、支持を得るために安倍前首相にすり寄っているようにみえます。コロナ禍で多数の死者を出した安倍・菅両政権による失政の責任が与党にあることは論をまちません。
 政府・与党は、野党が要求する臨時国会を召集しようとしません。これは憲法53条に反しています。
 コロナ禍で困窮している人々のために働く政党はどこなのか。大事なのは「総裁選より総選挙!!」です。弊誌は選択肢を提示してゆきます。(伊田浩之)

▼人はなぜ富士山を目指すのか?今週号の写真企画で、コロナ禍のなか、富士山頂で御来光を待つ人々を撮影した野口健吾さんの写真を掲載した。昨年は新型コロナウイルス感染拡大を防止するため登山道、山小屋、救護施設、トイレ等すべての施設が閉鎖となり、今年2年ぶりに開山した富士山。コロナも怖いけど、やっぱり登りたい人がたくさんいるようです。状況は昨年よりもっと悪くなっているのだが、五輪は開催されたし、だからこそ各地での規制も緩和されたのだと思う。この写真もまたコロナ禍の「新しい日常」として記憶されていく。なお、今年の開山期間は9月10日までなので、現在は閉山中です。念のため。
 先日、緊急事態宣言が19都道府県で9月30日まで延長されることが決まった。一方、政府は「行動制限緩和の考え方」について将来の展望を示したが、結果として「間違ったメッセージ」にならなければいいなと心から思う。
 9月11日、米国同時多発テロから20年。今年8月末をもってアフガニスタンから米軍が撤収し、米史上最長の戦争に終止符が打たれた。人間は、世界を継続するための「知恵」を手に入れることができるだろうか。(本田政昭)

▼不妊や不育で悩む人を支援するNPO法人Fineを取材し、ことし1月の号に不妊治療の患者を悩ます「体」「心」「お金」「時間」の四重苦について掲載しました。そのFineが、5140人の不妊治療当事者によるアンケートをまとめた『不妊白書2021』を9月6日に発売しました。
 現在、日本で実際に不妊の検査や治療を受けたことがあるカップルは、5・5組に1組。10年前は7組に1組と言われていましたから、不妊で悩む人が確実に増えているわけです。
 白書では、病院選びのポイントなどが紹介されています。回答者の5割以上が「転院経験あり」だそうです。
 一般に病院を選ぶとき、セカンドオピニオンの大切さが挙げられますが、不妊の場合はそれが常識化しつつあるということでしょう。不妊治療のための転院には、「医療費が高額になる」「通院距離が長くなる」などのデメリットを伴いがちです。それでも自分に合った、納得のいく治療を求めて転院を選択するわけです。
 不妊を含めてさまざまな悩みや不安を抱えている、そんな当事者の声に少しでも耳を傾けていけたらと思います。(秋山晴康)

▼つい最近、久しぶりに履いたサンダルが1足寿命を迎えました。経験のある人も多いと思う靴底がボロボロに崩れるパターン。これは加水分解が原因で、毎日使い倒すより靴箱にしまっておく方が起こりやすく、ポリウレタン素材ではよく見られるようです。
 加水分解で、もうひとつよくあるのは、合皮素材の表面がパラパラとはがれてくるパターン。これも久しぶりに使う鞄の表面とか持ち手でよく遭遇します。久しぶりに使う、つまりよそ行きのアイテムで頻出するので、精神的ダメージが大きいものです。
 冒頭のサンダルは、旅行先で母が購入し、夏のお出かけに大切に履いていたもの。その母も亡くなってもうすぐ2年、よく考えればあきらめるにも充分な年月が経っていました。時の流れは恐ろしい。寿命を迎えるものがあるかと思えば、数十年前の修学旅行で使ったビニール素材のポーチなどがまだまだ現役だったりするので、一概に人工のものがもたないわけでもなく、逆に分解されるプラスチックが新しかったりもして、長持ちするだけが必ずしも善ではなかったり。丁度いいって難しいですね。(志水邦江)