週刊金曜日 編集後記

1340号

▼民進党、旧・立憲民主党、旧・国民民主党、新・立憲民主党、新・国民民主党......。離合集散を繰り返してきた旧民主党系の政党の変遷は、この間の経過を追うだけでもめまいがするほどだ。
 今回、本誌編集委員の中島岳志さんが、衆院選が迫る中で野党は共闘できるのか、連合の神津里季生会長に迫った(18頁から)。政権交代に必要なのは、「もう一隻の船」であると、中島さんは言い続けてきた。神津さんの言葉で言えば、それは「かたやの選択肢」だ。
 多くの有権者は、いまの偏った政治構造はよくないと思っている。しかし野党は、ばらばらのまま。有権者に目を、顔を向けてほしい。確固たる「かたやの選択肢」が提示できないから、野党の政党支持率は低いままなのではないか。「かたやの選択肢」になりうる政権構想を早く出すべきだ。
 神津さんの口からは、希望の党の「排除問題」から約4年がたっても、ひとつにまとまれない立憲、国民に対する、真摯な訴えが何度も出てきた。共産党との野党共闘がうまくいかないゆえんでもある。この危機感を、野党のまとまれない人たちに送る。(渡部睦美)

▼金学順さんの人生を書いてみませんか? ある人からそう言われたのは2018年の暮れだった。だが、生前の彼女にお会いしたことがなく、韓国語もできない。その資格があるだろうかと迷っているうちに、私自身が死の淵にいた。
 彼女のカミングアウトから30年という節目に向けて、思い切って編集会議に企画書を出し、承認された。1930年代の朝鮮半島での妓生学校については、植村隆氏の名誉毀損訴訟に取り組んだ弁護団が控訴審で裁判所に出した資料に注目した。
 妓生を「誇り高い仕事」と考えていたこと、母から別れの際に黄色いセーターをもらったこと、養父から日本軍へ売り渡されたと考えるには無理があること――。今号では、そうしたことを書いた。
 彼女の言葉を軸に、彼女の思いを伝える。彼女の身に起きたことを正確に再現する――。それが多くの人の力により、かろうじて「生」を取り戻した自分が果たすべき責任だと思ったのだ。(佐藤和雄)

▼都心の地下鉄駅で地下鉄を待っていると、目の前をワンコが歩いて横切っていきました。ハーネスには「警備犬」の文字が。東京オリンピック・パラリンピックの警備を担当しているのでしょう。ちょっと小柄なシェパードですが、貫禄充分。でもねー、ベロが口の横から出ていますよ。暑いよね。
 ハンドラーさんに「写真撮ってもいいですか?」と聞くと「いいですよ」とのことなので、何枚か撮らせていただきました。駅の雑踏にも、知らない人のカメラにも動じないプロフェッショナルです(当たり前)。お仕事中のワンコに声をかけたり、さわったりするのはご法度、モフモフコミュニケーションはとれませんが、その後もこのワンコとはちょいちょい遭遇(いつも知らん顔される)、心の中で応援しています。爆発物や不審物の探知犬らしいですが、何事もなく終わるといいね。
 災害や事故現場で人命救助する災害救助犬や、盲導犬(コロナ禍の影響か、最近は全然見かけなくなりました)など、働くワンコのことを知ってほしいなと思います。(渡辺妙子)

▼NHKの「サラメシ」が出版取次会社の新社屋引っ越しを放映。出版取次会社とはトーハンのことで、旧社屋には何度も足を運んだ。なつかしかった。『週刊金曜日』を書店に配本する部数を交渉するために訪問していたのだ。
 雑誌を書店に配本するのは出版取次会社だが、鉄道の売店には即売といわれる会社が新聞と雑誌を配本している。本誌を拡販するべく即売数社をあたってみたが反応は鈍く、唯一感触が良かったのが毎日新聞社系のT社だった。たまたま対応してくれた副部長が北村さんのことを知っていて、北村さんも面識があると言う。すると後日「東京メトロに採用された。ついては急いで準備してほしい」との連絡あり。北村さんに報告すると「(本誌の)つくりを変えないといけないね」とつぶやいた。ところが土壇場で中止に。東京メトロ売店参入は幻となった。もし実現していたら『サンデー毎日』で駅売りを経験していた北村さんは、どんな雑誌にしただろうかと思いを馳せる。2004年北村編集長就任当時の話である。(原口広矢)