週刊金曜日 編集後記

1313号

▼「再びの緊急事態宣言。しかも、今回は前回のときのように持続化給付金が出るわけでもない。みな顔色が変わってきている」「緊急事態宣言後、続々と閉店を知らせる店が出ている。特に、『自粛』期間中に賃貸契約の更新を迎える店はもう耐えきれない。手持ちのお金を崩してなんとか切り盛りしてきた店も、もう限界だ」「緊急事態が明けたとしてもお客さんが元に戻るとはもう思えない......」。こんな声が、ほうぼうから聞こえている。
 昨年の「あきらめ廃業」や休業、解散の件数は過去最多を更新する見込みという。そして新年早々再び、緊急事態宣言が発令され、状況はさらに悪化する懸念もある。こんな中で、自民党は1月18日の合同会議で、コロナ対策の特別措置法、感染症法、検疫法の改正案を了承した。営業時間の短縮や休業命令に違反した事業者に「50万円以下の過料」、入院先から逃げるなどした感染者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」などが新設されている。厳罰化の姿勢が鮮明である一方、事業者支援については「必要な措置を効果的に講ずる」とされているのみだ。まず先にあるべきは支援策の具体化ではないのか。(渡部睦美)

▼1月7日、首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言が再発令された。急遽、写真家・稲宮康人さんにこの状況下の様子を写真に記録してほしいと依頼した。今週号の写真企画「根拠なき楽観」は2021年1月11日、全国で色々な形で成人式が行なわれた日の横浜市・桜木町駅前の記録である。
 もはやこれは「新しい日常」なのかもしれない。3・11から10年。〈見えない化〉されたさまざまな問題は先送りのまま、2020年、世界は一変してしまった。この国のコロナ禍での対応は「長期的な視点」が欠落したままだ。
 先日、テレビで映画『天気の子』が放送された。舞台は、毎日雨が降り続く、異常気象に見舞われた東京。少年と少女が出会い、運命に抗いながらも世界の形を変えていく。モチーフの「異常気象の雨」を「新型コロナウイルス」に置き換えてみると、日常が激変してしまった現在のみんなの心の中にある「世界が決定的に変わってしまうかもしれない」という漠然とした不安が(コロナ禍以前に)映像化されていることに驚く。
 新しい日常。人類はこの試練から何を学ぶのだろう。(本田政昭)

▼自宅ではラジオをかけています。平日なら朝6時半からTBS「森本毅郎・スタンバイ!」、「伊集院光とらじおと」、「ジェーン・スー生活は踊る」。午後1時から文化放送に移り、「大竹まこと ゴールデンラジオ!」「斉藤一美 ニュースワイド SAKIDORI!」がよくあるパターン。そして1週間以内の番組がパソコンやスマホで聴ける「ラジコ」で、TBS「荻上チキ・Session」を夜に。
 どの番組でも歯に衣着せぬ言論が魅力的。ニュース解説の時間も多く、開催が困難な東京オリパラや、新型コロナでの政府の失策、特措法改正による罰則導入のおかしさなどについて、テレビとはまったく違う世界が広がっています。
 1人当たり金券20万円(公共料金や学費にも支払い可)を再給付すべしとの主張もありました。補償が不十分なのに飲食店を悪者扱いする政権にも批判が強いですね。
 飲食店の時短で、納入業者や生産者への悪影響が広がっています。せめてもの支援にとなじみの居酒屋でよく飲む地酒を蔵元から取り寄せました。送料が無料になる本数にしたので、つい飲みすぎないか心配です。(伊田浩之)

▼12月25日号「きんようパズル数独」に215通の応募をいただきました(締切り2日前現在)。答えは21。2と1を足して「3」とした答えが10通ほどありましたがこれも正解にします。結果全員が正解でした! 私も自分でやってみましたが、何度も行き詰まりました。編集長が選ぶ抽選結果は次号当欄で掲載します。
 賞品が1000円の図書カードでは単行本1冊も買えないので、今回は思い切って2000円に倍増。そのためか去年の応募数(151通)を上回りました。
 年代の内訳では、90代2、80代21、70代73、60代76、50代25、40代5、20代1、10代2、30代はゼロ、不明の方が10でした。この数字が全体の購読者層にそのまま比例するとは思いませんが、傾向としては今年で創刊28周年、「読者の高齢化」は確実です。
 ですが、その人たちの粘り強い支援と支持の継続があるからこそ、毎週発行できるということをいまいちど肝に銘じたいと思う今日この頃です。
 ちなみに19歳の女性の本誌購読理由は「祖父が読んでいるから」でした。(土井伸一郎)