週刊金曜日 編集後記

1265号

▼〈2014年9月11日は、『朝日新聞』の「敗戦記念日」だ。読者不在の社内の派閥抗争に足を引っ張られて「安倍政権との情報戦」に敗れたのである。内部崩壊したと言っても過言ではない〉
『週刊金曜日』14年10月10日号で、元『朝日』記者の井上久男さんはこう指摘している。同号の特集「吉田調書と原発」で弊誌は『朝日』記事は誤報ではない、と具体的な証拠を元に結論づけた。
 それから5年あまり経った。弊誌と提携しているワセダクロニクル(渡辺周編集長)が、朝日新聞社の社内でなにが起こっていたかを本号から連載する。
『朝日』の報道の本質は、深刻な事故が起きれば(1)指揮命令系統は混乱し所長にも把握不可能な事態が生じる、(2)大勢の作業員が命をかけなければならない状況は杞憂ではなく、命をかけたとしても事故収束の保証はない、ということである。労働者には「逃げる権利」もある。
 最終的に誰がどのように原発の安全性を担保するかは、いまも未解決の問題だ。朝日新聞社はこの点こそ検証すべきだが、本号連載にあるように報道機関とは思えない対応をしてきている。優秀な記者が少なくないだけに幹部の対応は極めて残念だ。(伊田浩之)

▼大相撲初場所が始まっている。炎鵬や遠藤の活躍は、小よく大・柔よく剛を制す相撲の醍醐味に溢れ面白いが、ここ数年注目し続けているのが、モンゴル出身の照ノ富士(現十両13枚目)だ。
 2017年3月場所は、横綱稀勢の里(当時)が負傷しながら逆転優勝した場所として有名だが、このとき、優勝決定戦で敗れたのが、当時大関だった照ノ富士。14日目に変化で勝った際、会場から「モンゴルへ帰れ」といったヘイトスピーチを浴びるなど、千秋楽は、"ケガでも頑張る日本力士対モンゴル力士"の構図で、稀勢の里への応援一色。今も続くモンゴル出身力士への差別意識が生んだ異様な雰囲気下で敗れた照ノ富士だが、実は彼自身もまた、そのとき度重なるケガに悩まされていたことはあまり報道されなかった。
 結局、照ノ富士はその後、ケガに加えて、内臓の病などにも苦しんで休場を繰り返し、19年3月場所には何と序二段にまで陥落する。大関経験者の幕下以下陥落は史上初めてだったが、そこから粘り強い努力で番付を戻し、ついに関取(十両)に復帰して迎えた今場所である。本稿を書いている時点(1月19日)で、照ノ富士は8戦全勝。幕内返り咲きも遠くない。
 頑張れ照ノ富士。(山村清二)

▼今年から本誌連載コラム「政治時評」の筆者が6人になります。17日号に掲載された初回の執筆者は『東京新聞』記者の望月衣塑子さん。みなさんもよくご存じの菅義偉官房長官の"天敵"です。望月さんを含め新たな筆者は全員が女性です。担当編集者としてジェンダーバランスにも配慮しました。もちろん、性別以前に実力ある筆者であることが重要なポイントです。多彩な執筆陣に、さまざまな切り口で政治について語っていただけることでしょう。楽しみにしていてください。
 もう一つ変わったことがあります。表紙です。1月10日号からマイナーチェンジしました。昨年最終号(12月20日・1月3日合併号)と比べてみていただけると、おわかりになるかと思います。ロゴはそのままですが、日付と号数、定価のところが変わっています。また、縁の赤色がアクセントになっています。一番の変化は表紙のてっぺんに、一押し記事のタイトルを入れたこと。これまでは編集委員の名前があったところです。編集委員の名前はロゴの下に移動しました。
 表紙は雑誌の「顔」。新しくなった「顔」もどうぞよろしくお願いします。(文聖姫)