週刊金曜日 編集後記

1263号

▼12月8日(日)、「くにたち0円ショップ」に行ってみた。各自が持っている「不用品」を持ち寄り、路上に並べる。すると通りかかった人が品定めして、欲しいものをもらっていく、というものだ。
 一見してフリーマーケットみたいだが、0円だからお金のやりとりはナシ。公共の場である路上を、法に触れずに市民が自由に利用する好事例ともいえる。
 それで当日、私も通行を妨げないようにシートをしき、品物を並べた。早速、ポータブルラジオにもらい手がついた。アマチュア無線も聴ける高機能品だが、持てあましていたものだ。他には模型製作用の細筆などがもらわれた。
 持っていても使う当てのないものが、必要とする人の手にお金を介さずにわたっていく。それだけのことだが、体験してみて何か爽快なものを感じましたね。毎月第2日曜午後、JR国立駅南口徒歩2分の大学通り路上でやっている。詳しい情報はツイッター(@kunitachi0yen)で。(斉藤円華)

▼振り返れば、昨年は天皇即位のため休日が変更になり対応を迫られた。多額の税金を費やして改元し消費税増税に踏み切った。今年も五輪で多額の税金が使われるだろう。活動休止を表明した嵐は「天皇即位国民祭典」で奉祝曲を歌い、紅白歌合戦で大トリを務めた。NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーターだそうだ。華やかなイベントでごまかし、税金を搾り取り不都合なことを隠ぺいする。
 昨年放映された「同期のサクラ」というドラマでは、忖度しない主人公が同期の仲間たちに救われた。一方、安倍政権では「桜を見る会」の参加者名簿の全貌が、忖度によって隠されようとしている。「安倍晋三と仲間たち」は忖度で救われるのか。不祥事や疑惑にはうんざりだ。政権末期で腐臭を放ち、もはや賞味期限切れである。今年の桜を見るまでには、どうか散ってほしい。今年こそ真っ当な政権になりますように。(原口広矢)

▼松の内は明けておりますが、2020年もよろしくお願いいたします。
 年明け早々、米軍がイランの司令官を殺害したとのニュースが流れました。またしても、意味のない戦争が始まってしまうのでしょうか。
 それにしても、人を殺したら逮捕されて、それに見合った処罰を受けるのが先進国(この言葉、あまり好きじゃありませんが)や法治国家たるゆえんではないかと思っていたのですが、米国が介在するとそうでもないらしいことは、過去の多くの例が物語っています。かたや「人を殺したら犯罪」と言うのに、どうして米国の行為は許されるのか、その理屈がわかりません。これが国際政治の駆け引きってヤツ?
 この矛盾を、どなたかわかりやすく解説していただけないでしょうか。難しいことはわからないので、超簡単にお願いしたいです。(渡辺妙子)

▼昨年末の前社長・北村肇の訃報。複雑な思いが巡る中、社長時代のある対談での言葉を思い出した。
「(「原爆の図丸木美術館」を建てた)丸木位里さんと俊さんは最期まで、すさまじい怒りと恨みを持って死んだのではないかと思います。僕も権力に対する怒りは墓場まで持っていきます。その原動力がないと生きられませんからね」(本誌2016年12月23日号「原一男×北村肇 5時間対談」)
 北村さんは、「ヤジロベエ」の話もよくしていた。「片方に権力、もう片方に弱者がいる。その時、記者が『客観』なんて言って、真ん中に立ったらどうなる? 反権力の姿勢で弱者の側に立ち、客観じゃなく、取材したリアリティを記事で出すこと。そうしないとヤジロベエは権力側に傾いていく」。
 暗澹たるニュースが絶えない中、墓場まで持っていったであろう北村さんの怒り、反権力の姿勢を思い出し、この時代に金曜日としての役割を果たしたい。(渡部睦美)