週刊金曜日 編集後記

1252号

▼「大絶滅を前にしているというのに、あなたたちは、お金のことと経済成長がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。よくもそんなことを!」──スウェーデン出身の16歳少女、グレタ・トゥーンベリさんの国連でのスピーチだ。
 地球温暖化対策が急務なのに取組みがにぶい国際社会を、子どもが叱った格好だ。しかしこうしてスピーチを文字にすると、おカネにかまける大人のズルさを見透かされたようで、わたしも大人の一人としてちょっと恥ずかしい。
 日本ではトゥーンベリさんへの批判が噴出したが、海外も事情は同じようだ。豪州のテレビ局が、これを風刺コント動画に仕立てた。彼女へのクレームを電話相談で受けつける、というものだ。「子どもが大人のようにふるまうことで、大人が赤ちゃん返りするのは分かります」だって。あははは。
 今やゲリラ豪雨や巨大台風などの異常気象は頻発し、気候変動対策は待ったなしだ。個人の生活を見直すことも必要だが、トゥーンベリさんは「システムの変化がより大事」と訴える。政財界が率先して動くべきだ。(斉藤円華)

▼今週号で購読終了となって、まだ購読料を振り込んでいただいていない読者様にお知らせのハガキをお送りしました。宛名ラベルに「残0回」と表示されていれば契約終了です。継続ご希望の読者様は、なにとぞお振り込みをお願い申し上げます。払込票がお手元になければ再発行いたしますので、業務部までお申し付けください。
 払込票をお送りしている読者様とは別に生協で定期購読している読者様もいらっしゃり「学校生協(全国学校生活協同組合)」もその一つです。毎年、組合員向けにチラシを配布し、4月から1年間、雑誌の定期購読年間予約を受け付けます。このたび、学校生協に雑誌を取り次いでいたトーハンが配送コストの増加のため撤退することになり、生協に実績がある販売会社を紹介され、継続できることになりました。紹介されたシー・ピー・エスさんによると、もともと協同で学校生協にかかわっていたので、引き継ぐことになったそうです。弊社と取り引きには至らなかったが、かつて『買ってはいけない』の頃、商談したかもしれないとのこと。これも何かの縁だと感じています。(原口広矢)

▼香港政府がついに、「緊急情況規例條例」を発動した。これは統治者が「緊急事態」と認定すれば、あらゆることを犯罪と規定して刑罰などを定めることができる英植民地時代の悪法だ。刑罰に死刑は規定できないが、逆に言えば、政府が規定した「犯罪」に対して死刑以外の刑罰を科される危険がある。さっそく同条例をもとに、香港政府は、立法会(議会)の手続きを飛ばし、「覆面禁止法」を施行したが、どのように運用されるのか懸念が大きい。条例の危険性については、足立昌勝・関東学院大学名誉教授が全条文の翻訳を試み、来週号の国際ニュース欄「たとえば世界でいま」で解説記事を掲載する予定なので、読んでほしい。
 翻って日本では、沖縄県宮古島で、自衛隊配備に伴う弾薬庫の建設工事が強行されている。春には、宮古島駐屯地に「保管庫」と騙して弾薬庫が造成されていたことが問題となったが、今回弾薬庫が建設される同島の保良地区にも集落が隣接しており、地元住民らの反対が起きている。10月3日にあった説明会ではまったくその規模や危険性は説明されなかったという。権力の暴走が甚だしい。(渡部睦美)

▼関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から多額の金品を受領していた問題で、同社の報告書には、〈森山氏から「お前にも娘があるだろう。娘がかわいくないのか?」とすごまれた〉などの脅し文句が並ぶ。
 人権問題に詳しい関係者が憤る。「元助役は同和を騙り標榜することで影響力を行使していました。差別心の裏返しが恐怖心。関西電力の岩根茂樹社長らは、森山氏の特異なキャラクターを強調して自らを被害者にしようとしていますが、持ちつ持たれつでやってきた"共犯関係"です。問題の本質は幹部らが多額の金品を受けとっていた収賄問題。同和だからと落とし込むことは差別を助長します」
「取締役等の贈収賄罪」の適用を視野に地検特捜部は捜査に着手すべきだろう。また、原発マネーによる汚染と腐敗が関西電力に限られるとも考えにくい。早急な全国調査が政府には求められる。
 四国電力伊方原発の暴力とカネについては電子書籍『原発の来た町』(斉間満著、金曜日。URL・https://amzn.to/31TqxUpに詳しい。ぜひお読み下さい。(伊田浩之)