週刊金曜日 編集後記

1247号

▼8月6日午後6時頃、ウラジオストク国際空港に降り立った。ウスリースクの国際セミナーで北朝鮮の農業政策について報告するため初めてロシアを訪れた。主催者からはタクシーが空港で待機しているから、それでホテルまで来てほしいと事前に連絡があったが、運転手らしき人は見当たらない。ただ、ハングルで「ソンヒョンミン」と書かれたプラカードを持った短パン姿のロシア人男性が立っていた。「もしかしてこの人かな。でも名前違うしな」。男性の前を通り過ぎて空港内を探し回ったが、私を待っていそうな運転手はいない。思い切って短パンの男性に話しかけた。スマホのホテル予約画面を見せ、「もしかしてここへ行く人を待っているの?」と英語で尋ねた。すると彼は「イエス」。私にパスポートを見せるよう促した。そして、どこかと電話で連絡を取り合っていたが数分後、「多少の行き違いがありました」と言ってタクシーに案内してくれた。「ロシアのルーブルは持ってませんよ」と私。「大丈夫」と彼。かくして無事目的のホテルにたどり着いたのだった。(文聖姫)

▼山本太郎氏に初めてインタビューしたのは4年前。当時、氏が国会で追及していた奨学金取り立て問題についてだった。議員になってまだ数年とは言え、「経済的徴兵制だ」「圧政をひっくり返そう」と熱く語る姿に、「この人の"本気"は周囲を強く動かすのでは?」という気がしたが、そんな日がこんなに早くくるとは思わなかった。
 れいわ新選組の躍進については小誌にも様々なコメントが寄せられたが、私が印象に残ったのは、安冨歩さんのブログ「内側から見た『れいわ新選組』」。編集長から勧められて読んだのだが、歴史学者の網野善彦が唱えた「無縁の原理」に通じるという。安冨さんが自身の「女性装」について「無縁」=「システムからはみ出すこと」と、以前語ったことと重ねて読むと、山本氏自身の軌跡とも合わせて、とても腑に落ちるものだった。
 網野の「無縁」論自体は多くの実証的批判にさらされ、ある種の「ロマン」にすぎないとの見方もあるが、重度の障がい者が国会に進出することの画期は、まぎれもなく、現行システムへの「リアル」な挑戦。期待したい。(山村清二)

▼なんかもう、最近、テレビの報道にうんざりなのです。
 文在寅大統領の側近の不正について、文政権の行く末を左右する可能性のある重大事件であることはわかりますが、これまで名も存在も知らなかった韓国の一閣僚について、ほぼ全チャンネルのワイドショーで連日取り上げ、出身大学やら家族構成やら、はては人となりまで詳しく解説するのを見ると、「そこまで必要?」と思ってしまう。単に「文大統領の側近が、これこれこういう不正をしていたことがわかりました」で済む話だと思うのですね。
 日本だって問題だらけじゃないですか。そういえば小泉進次郎の結婚のニュースのとき、首相官邸で記者会見することも「?」ですが、小泉純一郎がおじいちゃんになるということで、各局、小泉純一郎を登場させ、親子で日本の政治の第一線で活躍――みたいな取り上げ方をしたりするのには、イヤ~な感じを受けました。でも進次郎の好青年(?)ぶりと、純一郎の好々爺ぶりに、みんなだまされていくのでしょう。(渡辺妙子)

▼右欄でお知らせの通り、「バインダー」と「ボックスファイル」の価格を10月から変更いたします。これは消費増税の価格転嫁ではなく値上げです。大変申し訳ございません。
 実は当社在庫が僅少となったため、増税前を睨んでのメーカーへの発注でした。ところが数年ぶりのオーダーであったため、原板の金型はすでに処分されており、仕入価格が跳ね上がってしまいました。加えて大きいのは送料です。発送業者から4年間で2回にわたる値上げ要請を受け、それ以前と比べて2倍以上、重量や送付先によっては3~4倍の料金になっています。いずれの商品もサービス品のため、決して儲ける意図はないのですが、赤字になることは避けなければなりません。このタイミングで心苦しい値上げとなりますが、苦渋の決断でございます。ご理解ならびにご容赦ください。
 なお、消費増税による本誌への価格転嫁は「定価」、「定期購読料」ともに10月時点では実施を見送ります。ひき続きのご購読をよろしくお願いいたします。(町田明穂)